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- グローバルコラム
インドネシアのマイノリティーの胃袋を満たせ~本格的な日本的ラーメン屋が増加?~
2014 / 12 / 09
インドネシアは多民族国家であり、いろいろな宗教の人たちが住んでいます。一方、世界一のイスラム教徒人口を抱えるために、インドネシアの事をイスラム国家と勘違いしている人も少なくありません。実際にはイスラム教を国教としている訳ではなく、国自体は世俗主義を掲げているためイスラム国家ではありません。
インドネシアで日本食がブーム
インドネシアにおけるイスラム教徒の数は全人口のおよそ9割。非イスラム教徒はたったの1割しかいません。海外からいろいろな食品メーカー、レストランがインドネシアに進出してきていますが、そんな訳でイスラム教徒が口にする事を禁じられている食品(豚・酒など)を使用しない食品を扱うことが当然とされてきました。 しかし、たった1割のマイノリティーの人々であっても、インドネシアは世界第4位の2億5千万の人々が住む国です。その1割と言えば相当な人数になるわけで、その人たちが火付け役になって、今インドネシアで日本食がブームになっているのです。本格的豚骨ラーメン店の進出
インドネシアでこの数年、日本の豚骨ラーメン店の進出が相次いでいます。そのターゲットは当地に住む日本人ではなく、豚を口にする非イスラム教の1割の人々です。その証拠に、ラーメン屋の進出している地域は日本人がほとんど住まない地域、特に中華系インドネシア人が多く住む地域です。 ラーメンブームの火付け役となったラーメン屋に足を運んでみました。日本のラーメン屋のイメージとはちがい、店内は広く明るくソファースペースなどもあり、女性客や子供連れも多く見受けられます。客層は中華系がほとんどですが、ちらほらインドネシア系の人もいます。全体的にトレンドに敏感な若い人たちの利用が多いようです。平日の昼間というのに席は満席。週末には1時間待ちになる事もあり、店の外に席待ち用の椅子がずらり並んでいます。店員は日本語の書かれたお揃いの制服を着ていたり、店の中に桜の木の造花が飾られていたりと、日本風である事を全面的に出している印象でした。こうした本格的な日本的ラーメン屋が増えた事で変わった事があります。つい最近まで、ラーメンというと中華風のラーメンか、日本人からするとラーメンといっていいのか疑問が残る“日本風”ラーメン(インスタントラーメンに山菜やら、フライやら、通常ラーメンのトッピングとして考えられないものがのったラーメン)が多かったのですが、最近は日本人の味覚にも、そして“ラーメンの常識”にも合うラーメンが人々の中で浸透しつつあります。
一部の中華系を主とする人たちの間でブームとなったラーメンは、マイノリティー以外の人々にもその市民権を広げています。マジョリティであるイスラム教徒の間にも広がり始めてきたのです。インドネシアの人たちは流行にとても敏感、とくに20代後半から30代の人たちは流行に敏感ですし、自分たちの食べた物の情報を友人とシェアするのがトレンドとなっています。 新しい店、新しい食べ物の情報や噂はそんな若者たちの間であっという間に広がっていきました。
広がるラーメンブーム
広がりは宗教に関係なく広がりましたが、豚骨はどうにも食べられない人たちがいるわけです。その事を受け、豚骨を売りにしていたラーメン店が、最近では豚をいっさい使用しない店舗を市内各地に展開し始めました。私が住む地域はイスラム教徒の割合が多い地域です。近所にこのほど人気のラーメン店が進出してきたのですが、そこは豚食材の扱いがない店舗です。出店先によって豚使用あり/なしを決めているようで、地域によってメニューを使い分けているのも成功要因の一つと言えるでしょう。またメニューを見てみるとラーメン以外にご飯もののメニューが多いのも日本のラーメン屋とは違うところでしょうか。保守的な人の中にはお米を食べないと食事をした気にならないという人が多い当地。そんな人にも考慮したメニュー作りがされているようです。
マイノリティーからブームが広がっていったラーメン。ラーメンはもはや一部地域だけでなく、街中いろいろなところで食す事の出来る食べ物となりました。
インドネシアはその人口の多さから、様々な業界で市場としての飛躍が期待されています。そんなとき、人口比を考えてマジョリティから取り込もうとすることが多いものですが、ラーメンのように思わぬところからブームが起こる事もあります。経済成長がすすむインドネシア。人々は常に新しいものが出てくるのを待ちわびています。