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PKを外すのはアクション・バイアスのせい?

Ravi Miglani
Kadence International Pte. Ltd. (シンガポール)
Regional Insight Director

Ravi Miglani

2019 / 03 / 05

#コミュニケーション,#生活 文化,#気づき

PKを外すのはアクション・バイアスのせい?

日本のプロサッカーリーグ(Jリーグ)での監督経験を持つ吉田達磨氏がシンガポール代表の次期監督候補に浮上しているというニュースを耳にしました。シンガポールで、日本企業を親会社に持つ会社に勤めている私としては、動向が気になって仕方ありません。そこで、今回はサッカーについてのコラムを書いてみます。


サッカーの試合を見ていた時に、ある考えが浮かびました。サッカーにまつわる疑問は、人生に関する疑問にも通じるのではないか。熱狂的なサッカーファンは、「サッカーは生死よりもはるかに重要だ」と言うくらいですから。

サッカーの試合でPKになると、ゴールキーパーは大抵、ボールが蹴られる前にゴールの左か右に飛びます。ゴールキーパーが飛んだ方向にボールが蹴られた場合でも、7割以上の確率でゴールを決められるというデータがあっても、ゴールキーパーがゴールの中央に留まることは、ほとんどありません。これは、「アクション・バイアス」のせいではないでしょうか。

私たちが、何もしない場合、職務放棄や怠慢ととらえられる傾向があり、何かしらアクションを起こすこと自体が重要になっているのです。もし、ゴールキーパーがゴールの中央に留まっていて、ゴールを決められてしまったら、チームのファンから大変な批判を浴びることになるでしょう。「彼は何もしなかった。」「彼はベストを尽くそうとしなかった。」と受け取られてしまいます。それを避けるために、アクションを起こしていることを見せたくて、ゴールキーパーは、左右どちらかに飛ぶのではないでしょうか。

では、ゴールキーパーが左右どちらかに飛ぶことが、ほぼ確実であるなら、なぜボールを蹴る選手は、ゴールの中央にボールを蹴らないのでしょうか。PKでゴールの中央にボールを蹴る選手は、滅多にいません。これもまた、「アクション・バイアス」によるものではないでしょうか。ボールを蹴る選手は、頭を使い、ベストを尽くしているということを示すために、ゴールの左右どちらかに蹴るのではないでしょうか。中央に蹴ることで、怠慢だと見られる可能性があるからです。つまり、アクションを起こしているように見せたいがために、ゴールキーパーも、ボールを蹴る選手も、自ら成功確率を下げてしまっているのです。

現代の社会では、日々の生活やビジネスなどのあらゆる場面で、アクション・バイアスが働いています。行動することが評価され、何もしないということが否定される傾向があるため、上司や同僚を感心させたり、ライバルに対して優位に立ったりするためには、アクションを起こすことが必要になります。「考える」より前に「行動」を起こすことが求められるのです。そのため、私たちの日常から、じっと成り行きを見守ったり、自制したりする場面が減っているような気がします。ハリウッドのアクション映画のように、忙しなく場面が切り替わっていくような日常を余儀なくされているのです。そのため、ゆったりとした時間を過ごしたり、物思いに耽ったりすることが、時には必要だということが忘れ去られてしまっています。そのような時間から、素晴らしいものが生み出されることもあるのに。

「思想家ではなく、行動家が世界を制する。」例えば、企業は、株主に対する責任から、毎四半期にアクションを起こしていることを示さなければなりません。しかし、それが、思慮のない、企業に長期的な価値をもたらすことのないアクションであることもあり得ます。同様のことが、教室でも起こります。生徒は教師を感心させるために、必死にノートをとっている姿を見せますが、実際にはノートにデタラメが書かれているかもしれません。企業でも、上司を感心させるために、パソコンのキーボードを必死に叩いているところを見せようとしますが、座って熟慮していたり、花の香りを嗅いでいたりするような社員が、戦略的な考えを巡らし、企業に真の価値をもたらすことがあるかもしれません。

無暗に行動することでヒーローになろうとする人ではなく、熟慮する人が、この世界をよりよい場所にしてくれることもあるのではないでしょうか。ゴールの左右に飛んでみたり蹴ってみたりする人ではなく、状況を冷静に考え、ゴールの中央に蹴ったり、ゴールの中央でボールを止めようとする人たちです。

「行動か死か」という今日の潮流において、熟慮することや、自制すること、じっと見守ることなどをよしとする考えに賛同を得られることはあまりないかもしれません。ただ、他人の目を意識するばかりに、何も考えずにゴールの左や右に飛ぶ日々を続けるのかどうか、一度、考えてみませんか。

考える?おっと、考える時間はあったかな?

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