シリーズ ヨーロッパを知る (3)イギリス企業におけるイギリス人の働き方 | リサーチ・市場調査・マーケティング

グローバルコラム
2017/2/7

シリーズ ヨーロッパを知る (3)イギリス企業におけるイギリス人の働き方

シリーズ ヨーロッパを知る (3)イギリス企業におけるイギリス人の働き方

イギリスの働き方について

 シリーズ “ヨーロッパを知る” 第3回目の今回は「イギリスでの働き方」に焦点を当てたいと思います。各メディアで使用されているデータの多くに、欧州連合(EU)各国と日本の働き方を比較するものが取り上げられていることから、欧州の働き方が大きな改革モデルになっていることが分かります。
 一概に欧州といっても、国ごとに働くことへの意識や、政府・会社での取り組みは異なります。今回は、私が働いているイギリス企業のイギリス人の働き方についてご紹介します。

イギリス人の仕事と生活の意識について

 イギリスに来て最も違いを感じたのは仕事と生活に対しての考え方です。日本でも朝活や夜間スクールなど、仕事以外の時間を充実させる取り組みがありますが、繁忙期になるとそうはいかず、朝から夜遅くまで会社にいて、帰宅後もメールを見ながら寝ている…という生活が続く方も多いのではないでしょうか。

 このような日本の働き方をイギリスで話すと彼らは驚きます。1日10時間以上働くということが考えられず、家族と過ごす時間は?リラックスして本を読む時間は?習い事やSocial Activityなどの趣味の時間は?といった質問が返ってきます。彼らは多くても1日1時間程度の残業で抑えようとします。マネジメント層でも帰宅後メールチェックなどは行っていますが、夜遅くまで残業することはありません。私が日本にいた頃にイギリス企業とやり取りを行うと、夏やクリスマスは長期休暇、残業はほとんどしないということで、ヨーロッパの人はしっかりと働かないのか?と疑問を持つこともありました。
 しかし、実際にイギリスに駐在していると、彼らの日中の仕事処理量には驚かされます。イギリスでは朝活動する人が多く、ジムに行くなどの運動はもちろんのこと、繁忙期は夜残業するより、朝早く出社して仕事を行うことを好んでいるように感じます。社内にキッチンがある会社が多いため、朝食もそこで準備してデスクで食べながら、就業開始の1時間以上前に仕事をしている人もいます。家族と過ごす時間や自身の趣味の時間を重んじるため、就業時間内で仕事をなんとか終わらせようとする気持ちが日本よりも強い印象です。ランチの時間もデスクでサンドイッチを食べながら仕事をするという人も少なくありません。日本では、ランチミーティングは親睦のためにたまに行う程度でしたが、イギリスでは商談やプロジェクトの進捗共有を親しいお客様とランチタイムに行うこともあり、夜の接待はあまり行いません。ランチタイムは仕事の時間であると考えている人が多いようです。
 また、日本よりも個人の裁量権が大きく、相談しないと進まないという仕事は少ないように見えます。上司のデスクに来て相談をしている人もいますが、ほんの数分でまたデスクに戻り作業をする、という感じで、圧倒的に日本よりも会議に費やしている時間は少なく感じます。

イギリスと日本の働き方比較

 実際にInternational Labor Organizationが発表している長時間労働者比率を見ても、欧州諸国の労働時間は少なく、圧倒的に日本人の過労働者が多いことが分かります。

資料:ILO “Working time and worker's preferences in industrialized countries. Finding the balance” 数値は2015年

 このデータを見ると、日本は欧州人よりも多くの時間働いているため、より良い仕事ができていると思いたいところ。しかし、OECDが発表している時間当たりの労働生産性を見てみると、加盟35カ国の中では、日本は20位。主要先進7カ国の中では1970年以来、最低位が続いている状況で、米国を除くと上位17位まで欧州各国が名を連ねています。

資料:OECD National Accounts Database

 これらのデータをみると、欧州では、労働時間を短くして生産性を上げることを重視していることが分かります。欧州では経営者側も「仕事と生活のバランスが崩れると生産性が落ち、企業経営も悪化する」という考えを持っています。

イギリス企業が多国籍従業員をまとめる術

 とはいえ、イギリスに拠点を置く日系企業の大きな悩みとして、人材確保や労働コストの高さなどの問題があります。高い労働コストをかけて育てた優秀な社員を確保したいと考える企業が多い一方で、イギリスは転職をしてキャリアアップを図る人も多く、人材の固定化は難しい現状もあります。長く働いてもらうために、経営者は従業員満足度の確認やキャリアプランに幅をもたせるといった取り組みをしています。
 また、以前のコラムでも紹介しましたが、イギリスの人口は約6,460万人(2014年、出所:英国国民統計局)。そのうち「国民の6人に1人が移民」で全体の13%を占めます。弊社も例外ではなく、イギリスの企業ではあるものの、ポーランド人、スウェーデン人、フランス人、台湾人、ナイジェリア人など人種や国籍は多岐に渡ります。このような多国籍従業員を束ね、かつ働きやすい環境づくりが経営者には求められます。

 このような環境づくりの中でもっとも効率的な方法のひとつに「コミュニケーション」が挙げられます。先ほど、イギリス人は個人の裁量が広く、個々で仕事をする時間が長いと述べましたが、チームでの連携がないわけではありません。むしろ声を掛け合ったり、違う国の文化の違いに関心を持ったりと、コミュニケーションを取る機会も多くあります。そうすることで、相手の適性を判断して仕事を配分し、いざ質問や依頼をする際にお膳立てなどは不要になり、無駄を省いた働き方ができるのではないでしょうか。
 ところで、私が駐在しているイギリスの会社Kadence Internationalは2015年に従業員満足度調査を行い、従業員満足に対する取り組み結果を人事アワードで表彰されました。

 彼らが、自社の環境づくりで実施している取り組みの一つがHR(人事部)を主体としたActivityです。月曜日の朝は5-10分程、毎週違う担当者がテーマを決めてゲームや文化の紹介・運動などを行います。これは気分が沈みがちな週明けに気合いを入れる目的で行われています。水曜日の夕方にはHRが社内にお菓子やフルーツを用意し、成績の良かった社員の表彰や最近の取り組み内容などを共有する時間を設けます。また2カ月に1回程度、仕事後にチーム制のスポーツを行い、社員のコミュニケーションを深めます。このようなゲームでも、彼らは助け合いながら真剣に行います。こうした取り組みの結果、お互いの理解が深まり、仕事の進め方に関係することもあります。彼らの働き方を尊重するため、私もイギリスに来てから18時以降に会議を依頼することはなくなりました。
 日系企業のグローバル進出に伴うM&Aの問題や働き方改革などさまざまな課題を抱える企業が多いと思いますが、まずは、拠点国の生活習慣やワークスタイルを把握し、定期的に従業員満足度を確認する取り組みを検討されてはいかがでしょうか。

 

出典:
・ILO “Working time and worker's preferences in industrialized countries. Finding the balance”
 数値は2015年
・OECD National Accounts Database
 

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Cross Marketing Group Inc. Global HQ Global Sale Manager 益並 香奈

大阪生まれ大阪育ち。2008年に外資系IT会社にて製造業、流通業、製薬会社のコンサルティング営業を担当。その後外資系自動車部品会社を経て、2013年にクロス・マーケティングに入社し、西日本営業部にてB2B、B2C向けの市場調査営業を担当。2016年8月よりイギリス・ロンドンに駐在。

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