マーケティングの根本、「顧客中心」を問い直す 第1回 「顧客中心」で、なぜ上手くいかないのか? | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2014/5/30

マーケティングの根本、「顧客中心」を問い直す
第1回 「顧客中心」で、なぜ上手くいかないのか?

マーケティングの根本、「顧客中心」を問い直す<br />第1回 「顧客中心」で、なぜ上手くいかないのか?

「ユーザーファースト」「顧客中心」「顧客志向」、改めて最近よく耳にする言葉です。ソーシャルの時代となり、個と個がつながり、その影響力がどんどん高まっていく中で、必要不可欠なキーワード。しかし、どこまで本当に「顧客中心」で、企業が、ビジネスパーソンが、日々行動することができているのか?

3回のコラムをいただいた機会で、自戒も含め、問い直してみたいと思います。

 ※B2C事業を中心とした話になります。B2B事業に関わられている方は、当てはまる部分も少しはあると思いますが、ご了承ください。

顧客中心で判断したはずなのに、顧客が不要なモノができてしまう!?

ネットリサーチが普及し、圧倒的に早く安く、マーケティングリサーチができるようになりました。リサーチをくり返し、ターゲットニーズの高い価値を実現できる機能を見極め、次々と搭載していく。これをくり返した結果、出来あがっていったものを、改めて振り返ってみると、機能が過剰になり、顧客にとってわかりづらく、使われないものになってしまっている。

最近は、「シンプル化」というキーワ-ドも注目され、見直しはされているのですが、こういうことって、まだまだよくありますよね? 顧客のことを考え、顧客の声を元に判断したのに、使われない、売れない。これって、そもそも、なぜなのでしょうか?

 

顧客中心を見直すキーワード、「アドボカシーマーケティング」

私自身も、そういう経験をしていく中で、改めて教訓としているのが、「アドボカシーマーケティング」です。アドボカシーは、支援、擁護、代弁といった意味ですが、以下のように定義されています。

「顧客との長期的な信頼関係を築くため、顧客を支援する。自社の利益追求や、短期的なメリットの提供は二の次にして、『顧客にとっての最善』を徹底的に追及する。顧客の利益や満足度を最大化するためなら、一時的に自社の利益に反することでも行う。自社製品より優れた他社製品があるなら、素直に他社製品の購入を勧める。」 

※出典:「アドボカシーマーケティング」 グレン・アーバン著 山岡隆志 訳者

そう、「お客様のために」では弱いのです。「お客様は神様です」もちょっと……。そのスタンスだと、企業側として顧客と向かい合っているので、顔色を伺いながら(ニーズをリサーチしながら)企業都合を押しつけてしまう可能性があります。「お客様を支援・擁護する」、つまり顧客側に立つスタンスを徹底できるかどうかです。

アドボカシーマーケティングの考え方は、ソーシャルの時代にますます重要になることは、誰もが容易に想像がつくと思います。ただ、自社の商品・サービスを提供している場合、これを実践することは、現実的には非常に難しいですよね。「自社製品より優れた他社製品があるなら、素直に他社製品の購入を勧める」など、そこに限りのあるマーケティングや、プロモーションコストを投資できるか…。

訳者の山岡さんにお話を伺ったこともあるのですが、「トップが率先して号令をかけない限りは、『顧客を大切にする』(ホスピタリティー)に留まり、真の『アドボカシー・マーケティング』には到達できず中途半端な結果に終わってしまう」とのこと。確かにその通りなのですが、一人ひとりが少しずつでも、継続的に実践していくことで、実現できないだろうか……。

顧客中心ではなく、「顧客利益の最大化」を目指し、日々の業務に取り組む

私自身は、顧客と向き合うスタンスを、顧客中心から、「顧客利益を最大化」することに変えてみました。その実現のために、日々の判断で、以下を重視しています。

(1)   営業・販売促進費を極力削減し、商品・サービスへ積極投資
(2)   品質を顧客視点で比較するため、業界・競合他社の研究を再徹底
(3)   顧客に提供する情報の透明性を高め、信頼感を持っていただくことを重視

当社では、創業社長の時代から、「自分の家族や友人に薦められる商品を提供しているか」という言葉があり、改めて重く受け止めています。

このコラムが、読者のみなさんが、顧客へのスタンスを再点検するきっかけになれば幸いです。

株式会社ベネッセコーポレーション 家庭学習カンパニー 英語事業推進 担当部長 橋本 英知

1998年ベネッセコーポレーション入社。ダイレクトメールを中心とした、各種メディアによるセールスプロモーションツールの企画・制作に携わる。新商品開発、新規事業開発、経営企画などを経験後、CMO補佐として、マーケティング戦略・ブランドコミュニケーション・情報基盤・組織人事・コンプライアンス・業績管理などに広く従事。現在は、英語教育事業の推進・開発を担当。データベースマーケティング、ブランドマーケティング、CRM領域での活動を中心に、講演・寄稿など多数。

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