大人向け音楽教室のユーザーインサイト 第3回 多方面から楽器の需要を掘り起こす | リサーチ・市場調査・マーケティング

インサイトスコープ
2015/5/1

大人向け音楽教室のユーザーインサイト
第3回 多方面から楽器の需要を掘り起こす

大人向け音楽教室のユーザーインサイト<br />第3回 多方面から楽器の需要を掘り起こす

音楽で企業交流する

これまでの2回では、大人向け音楽教室に通う方のインサイトや、ヤマハ「ヤマハ大人の音楽レッスン」の会員を増やす狙いで行う楽器体験イベントなどの取り組みを紹介してきました。今回は現在進めている新たな取り組みについて紹介します。

様々なシーンで楽器に触れる機会を提供するために、2014年1月、広く社内から20代~30代を中心とした若手社員を集めて4~5人のチームを複数立ち上げました。各チームで大人が楽器を始めるまでのカスタマージャーニーマップを作成して、企画のプレゼンテーションを行い、そこで出たアイデアの中から若者向けのプランを具体化に向けて検討を進めています。

大人の音楽教室を受講している人の平均年齢は、20年前は25歳でしたが、現在は46歳と若者の割合が下がっています。そのため、若い世代をいかに取り込むかが課題となります。若者が1人では参加しづらい企画でも、仲間と一緒なら参加しやすいのではと考えました。

学生時代は学校を中心にコミュニティが形成されていますが、社会人では企業がコミュニティの軸になると考え、企業の中でバンドを組んでもらい、いくつかの企業と合同で交流型のライブを行うイベントを「青春☆ハイスクール」と名付けて開催することにしました。2014年12月にヤマハを含む4社で実際にイベントを行ったテストケースでは、イベントプログラムやライブ会場の設定を私たちがサポートし、各社のバンドがライブ演奏をするだけではなく、楽器体験コーナーを作ったり、各社の会社案内ビデオを上映したり、講師を交えて誰でも参加できるセッション演奏を行ったりしました。またケータリングを入れて飲食しながら社内外の交流ができるようにして非常に好評でした。

 

バンドという音楽活動を起点に、ライブを見に来る上司や同僚が楽器体験コーナーで楽器に触れるきっかけをつくれるだけでなく、取引先や異業種と一緒にライブを行うことで、企業間交流の場としても活用してもらえるのではと考えています。こうした活動を企業内の福利厚生やチームビルディング活動として、企業にパッケージ販売できないかと考えています。

音楽で地域活性化を図る自治体などとコラボレーション

もうひとつの新しい取り組みは、音楽が持っている人と人をつなげる力を使って地域の活性化などをプロデュースする「音楽の街づくりプロジェクト」です。仙台市の日本を代表する市民音楽祭「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」では誰でも自由に演奏に参加できる「JSFスウィングカーニバル」を実施しています。参加者は楽器を持参して、当日渡される楽譜で演奏するというものです。同じような形で、渋谷の宮下公園でも実施し、渋谷の街全体を音楽で活性化しようというイベント「渋谷ズンチャカ」をサポートしました。

仙台市で開かれる市民音楽祭「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」

仙台市で開かれる市民音楽祭「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」

渋谷の街全体を音楽で活性化する「渋谷ズンチャカ」

渋谷の街全体を音楽で活性化する「渋谷ズンチャカ」

管楽器愛好者を対象に実施している吹奏楽の大演奏会「ブラス・ジャンボリー」は、現役の吹奏楽部員はもちろん、学生時代に吹奏楽部などで演奏経験がありながら卒業後楽器演奏から離れている方、楽器演奏を始めたけれど合奏の機会に恵まれない方などにもう一度演奏してもらうことを目指したイベントです。2015年3月には横浜の大さん橋ホールに700人もの人たちが集まり大合奏を楽しみました。

横浜の大さん橋ホールに700人を集めた「ブラス・ジャンボリー」

横浜の大さん橋ホールに700人を集めた「ブラス・ジャンボリー」

こうした参加型の演奏イベントでは、各自のレベルに合わせて演奏に参加してもらい、大勢で曲を演奏する気持ちよさを感じてもらうことが継続性や復帰のきっかけとして意味があると考えています。「ブラス・ジャンボリー」で久しぶりに楽器を演奏した人が、次に参加するために練習したり、楽器をメンテナンスしたり、「スウィングカーニバル」にピアニカで参加した人が、次回はサックスで参加したいと思い、新たに楽器を始めてもらえるようになれば良いと考えています。

マンションデベロッパーとの協業で音楽のある暮らし訴求

また、新たにマンションデベロッパーとのコラボレーションも始めています。千葉県船橋市の新築マンション「森のシティ」では街づくりの取り組みの一環として、入居者向けにビッグバンドをつくりました。その運営をヤマハがサポートし、この活動が評価されグッドデザイン賞も受賞しました。

参加される方は、シニアが多いのではと予想していましたが、若い方も多く、これがきっかけになって楽器の購入も増えています。2014年3月には船橋市内のホールでお披露目コンサートもありました。この事例がうまく展開できていることもあり、同様の引き合いが増えてきています。

大人が音楽・楽器に触れる機会を増やすことが、私たちの新たな顧客創造につながると考えています。大人は広告だけではなく、何かしらの「感動」がなければ行動を起こしてくれません。これからも音楽や楽器を演奏する楽しさを多くの人に伝えていけるような施策を継続してきたいと思います。

写真提供:ヤマハミュージックジャパン

株式会社ヤマハミュージックジャパン 事業企画部 部長 鞍掛 靖

1981年日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株式会社)入社。電子楽器のソフトウェア開発、音楽アプリケーションソフトウェアの商品企画などを経て、2000年からWebを中心としたメディア総合戦略、全社Web戦略を担当。2013年4月より、現職。株式会社ヤマハミュージックジャパンで、広報、Webマーケティング、CRM戦略を担当。 

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