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大幅リニューアルでV字回復
第2回 新しい味、ボトルは、どのように生まれたのか?

笠井 隆秀
キリンビバレッジ株式会社
マーケティング本部 マーケティング部 商品担当 担当部長

笠井 隆秀

2016 / 07 / 29

#食品 料理,#ブランディング

大幅リニューアルでV字回復<br> 第2回 新しい味、ボトルは、どのように生まれたのか?

 リニューアルした生茶は、茶葉を低温で抽出した後に、最新のテクノロジーで茶葉を微粉砕した“かぶせ茶”の粉末を加えています。深いコクと軽やかな余韻が続く、というのが味覚的な特徴です。近年緑茶の主流だった「濃さ・本格的な苦味の追求」とは異なり、旨みと苦みのバランスの追求により「風味豊かなのに飲み飽きない」という、次なる味覚の潮流を見据えています。

ブランドの存在意義、目指す味覚の議論に時間をかけた

 リニューアルした生茶は、茶葉を低温で抽出した後に、最新のテクノロジーで茶葉を微粉砕した“かぶせ茶”の粉末を加えています。深いコクと軽やかな余韻が続く、というのが味覚的な特徴です。近年緑茶の主流だった「濃さ・本格的な苦味の追求」とは異なり、旨みと苦みのバランスの追求により「風味豊かなのに飲み飽きない」という、次なる味覚の潮流を見据えています。

 伝統的な抽出方法とテクノロジーの掛け算という技術的な工夫もあるのですが、今回のリニューアルで時間をかけたのは、新しい緑茶カルチャーを創り出し、暮らしを良くしていくためには、ブランドがどんな存在、世界観であるべきかを考えることでした。

 「お茶」の歴史を勉強し直し、気づかされたのは、緑茶が明治時代から現在までの間にそれほど進化していないこと。緑茶にはまだまだ進化の余地が残されていると信じ、新しいカルチャー、新しい美味しさを生み出すことに集中しました。

 リニューアルのクリエイティブ・ディレクションをお願いしたドラフトの宮田識さんとも、目指す味覚を決めるまでの議論に時間をかけました。広告のイメージやボトルのデザインも、結局はブランドが何を目指し、どんな存在になろうとしているかが決まらなければアイデアは出てきません。宮田さんと話をしていくなかで、「緑茶はもっと世界に開かれた飲み物になるべき」という考えや、そうなったときに「これまでと同じルールでものづくりをしていてはいけない」という考え方が出てきました。

 でき上がった新しい「生茶」がどんなシーンで飲まれ、飲むことで暮らしにどんな変化を与えられるのか、を想像していく中から、リニューアルを担当したチームの中に、ワインボトルのような形状やグリーンのボトルといった新しい「生茶」の形が生まれていきました。

 こうして生まれた新しいボトルのイメージを経営会議にかけたところ、反応が良く、リニューアルはより具体的に進んでいきました。その過程では「生茶」という名前についても議論しました。ブランドが誕生したときには、「生」という言葉に「フレッシュ」「鮮度」という意味を込めていました。リニューアルでは、茶葉の美味しさや栄養をもらう、茶葉の「生命力」によって元気がもたらされるという解釈に変えています。

 味もパッケージも変えるので、社内では「名前も変えた方が良いのでは」という提案もありましたが、生茶と言う名前から離れるという発想は最初からありませんでした。ただ、ブランドが積み重ねて来たものを継承することにはこだわらず、私たちが込めた思いを感じてもらえるようなものづくりを追求していきました。


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生茶のブランドサイトで「日本のお茶を変えたい。」のメッセージを発信。

あえてアンラーニングの道を選んだ

 リニューアルに携わったチームは、私も含めて「生茶」ブランドにかかわってから日が浅いメンバーが大半でした。リニューアルに際して「お茶」の歴史は勉強しましたが、過去の「生茶」ブランドに関する知見はあえて学ぶことはしませんでした。開発については、ラーニングとアンラーニングのバランスをどうとるかは非常に悩むポイントですが、今回は過去を大事にするというよりも未来へ向けた要素と、ラーニングによって「真似」になってしまうことを避けるためにあえてアンラーニングで進めるという選択をしました。

 今回は新しい緑茶カルチャーをつくって暮らしを良くする、ということを常に念頭に置いていました。キリンビバレッジの飲料では、近年“文化”と呼べるようなものを新しく生み出せていないという思いもあります。唯一「午後の紅茶」はペットボトル化により利便性の方向で世の中を変えましたが、ペットボトル飲料はすでに一般化しています。「生茶」を飲んで豊かな気持ちになってもらいたい、そういう存在にしたいという志やビジョンを徹底的に話し合いました。飲食店などでは、緑茶が無料で出てくることがありますが、コーヒーのように味を選択しながら、お金を払ってでも飲みたくなるようなものにしたい。そういう世の中になり、今は安値で買いたたかれている茶葉の価値が上がり、生産者の方が潤うようになればということも話をしました。広告を通じて「日本茶を変えたい」というメッセージを発信したのも、私たちのものづくりに対する思いを伝えたかったからです。

 次回は、リニューアル後の反応や今後についてお話しします。


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夏らしいクリエイティブの広告も展開。

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