【新しい時代のリサーチ】今知っておきたい!「RDIT ― 米大統領選を正確に予測した新しい調査」とは

新しい時代のリサーチ
2016/12/19

【新しい時代のリサーチ 第1回】
今知っておきたい!「RDIT ― 米大統領選を正確に予測した新しい調査」とは!?

【新しい時代のリサーチ 第1回】 <br />今知っておきたい!「RDIT ― 米大統領選を正確に予測した新しい調査」とは!?

新しい時代のリサーチ

世の中の変化につれて、リサーチの世界でも大きな変化がはじまっています。人々のインターネット利用はパソコンからスマートフォンへとシフトし、インターネット調査においても今後はよりスマートフォンでの回答者を想定した調査の画面や質問票の作り方に留意する必要が増しています。一方で、スマートフォンによって写真や動画、SNS、位置情報や行動履歴の活用、ゲーム性・インタラクティブ性を生かした調査など、スマートフォンならではの機能を生かしたリサーチのサービス領域が拡大しつつあります。また東南アジアやアフリカなどの途上国では、PCの普及を飛び越えて、モバイルの時代へと移行しています。これからの時代にはグローバル視点も重要度を増していきます。 新しい時代のAI(Artificial Intelligence:人工知能)やVR(Virtual Reality:仮想現実)、生体反応の計測をはじめとするテクノロジーに後押しされ、リサーチもあらゆる方面で新しい発展の可能性に満ちています。 クロスラボでは、このような新しいリサーチ領域から先進的なサービスをご提供できるよう研究しています。このコラムでは、これからの時代のさまざまなリサーチを取り上げたいと思います。

 

アメリカ大統領選でのトランプ氏の勝利を予測した新しいリサーチ・テクノロジー

昨今、代表性のある調査というのは、どの調査手法でも非常に困難になっています。先月11月に行われたアメリカ大統領選では、多くの世論調査の予測が外れてしまったことはみなさんの記憶に新しいことでしょう。暴言や失言の多いトランプ氏を表立って支持していると言いにくい隠れた現状不満層(隠れトランプ支持)の問題や、 1票でも上回った候補がその州の選挙人を総取りする米国の選挙方式(winner takes all)が誤差を大きくした原因と言われています。 このようにこれまでの調査手法がうまくいかなかった一方で、調査の可能性をひろげてくれる新しい手法が立ち上がっています。 大きな話題となった今回のアメリカ大統領選挙において、正確に予測したリサーチ・テクノロジーがRDIT(アールディット:Random Domain Intercept Technology)です。 弊社の提携先であるカナダのRIWI社が開発し特許を保有するRDITは、インターネットの一般利用者(非調査パネル)にランダムに調査を呈示し回収するリサーチ手法です。

 

アメリカ大統領選の予測

今回の大統領選挙で、RIWI社は、2016年9月12日から11月8日にかけて、インターネット上から無作為にアメリカ在住の一般の匿名のインターネット利用者(147,000人以上)にデイリー・トラッキング調査を行いました。その中で二人の候補の差が最も開いた10月19日から選挙直前の11月4日までのデータを用いて分析が行われました。 調査の質問では、対象者本人の投票意向だけではなく、自分の州の選挙人投票の動向を予測させる質問をとっています。インターネット上から偏りなく抽出できることがこの調査手法の要です。その結果、クリントン候補が総得票数では僅差で勝利しながらも(51%対49%)、選挙人投票ではトランプ候補が勝利することを的確に予測しました。 この手法は、2016年6月のイギリスのEU離脱を問う国民投票での離脱派の勝利、12月イタリアの国民投票の敗北、2015年のトルコ大統領選挙など、世界のさまざまな地域で正確な予測をしています。

RDITとはどのような調査なのか?

RDITは、インターネットを利用する一般の人を対象とする、匿名、謝礼なし、非常に簡単な数問の質問によるマイクロ・サーベイです。特定の調査サイトをもたず、インターネット上のさまざまなところ(ドメイン)からランダムに回収します。 インターネット上の一般の人(非調査パネル)を対象にする方法としては、リバーサンプリングという方法がありますが、これは特定のサイトや広告枠から調査協力者を誘導する方法なので、そのサイトを見に来る人というバイアスがあり、ランダムとはいえません。 一方、RDITは、電話調査におけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)という電話番号に無作為にかける方法と同様に、インターネット上のさまざまなところ(ドメイン)に無作為に調査のトップ画面を表示します。パソコン、スマートフォンを問わず、インターネットにアクセスするデバイスすべてが対象となります。

正確さ
インターネット視聴の判断材料とされる世界的なオンラインテクノロジー企業が提供しているインターネット視聴率データとこの手法で回収されたデータには非常に高い相関があることが確認されています。特定の調査期間中にインターネット上にいる人の構成比は、滞在時間を反映して若年層が多くなるため、RDITでは通常どの調査手法でも調査協力を得にくい若年層の回収に強みがあります。 また、LGBTIや精神疾患に対する意識調査のように社会的望ましさが影響しやすいテーマにおいては、匿名性があることによって正確な回答が得られると言われています。 このユニークな手法によるグローバル調査は、2015年末、科学誌Natureでも取り上げられています。

どの調査手法においても母集団の代表性や市場の反映性が困難になっている中で、正確な判断材料となるデータは非常に必要とされています。そのような時にまったく新しい発想のリサーチが生まれてくるというのは非常におもしろいと思います。

通常のインターネット調査との違い
RDITは、通常のインターネット調査では可能なサンプル構成比の回収割付や特定の条件の人にターゲティングして行う調査には向きません。また一般インターネットユーザーの協力が得られるように、非常にシンプルで短いマイクロ・サーベイでの質問となります。 本当にキーとなる大切な質問についてのみの回答しやすい調査を設計することにより、アクセスパネルによる調査よりも幅広い一般のインターネットユーザー全体からランダム性のあるフレッシュ・サンプルによるデータを得ることができます。このように情報を偏りなく収集することが世論調査において的確な情報を掴むことを可能にしています。

グローバル性
RDITは、世界中、位置情報から国・地域を指定して、同じ条件で調査を行うことができます。例えば、複数の国のうち、どの国のポテンシャルが高いのかという判断や商品・サービスの浸透度(知名度・利用程度・競合とのシェア)を国レベルで把握するのに適しています。
また、政情不安定で通常調査が実施できないと思われるエリアでも調査が可能です。世界60ヶ国、6万人(各国1000人)のオムニバス調査(年4回実施)という今までにない規模の調査企画もあり、国際機関、グローバルのNGO、海外の著名メディア、学術研究などでもとりあげられています。

今までのインターネット調査の延長ではなく、この手法ならではの活用を考える必要がありますが、サイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)による予測からトレンドを掴む世界に展開可能な手法として、今後も幅広いジャンルへの展開が期待されています。

クロス・マーケティングでは、この手法を日本で展開するため、テスト調査を実施してきました。実施のご相談やご質問などをお受けしています。

 

参考 RDITによる調査事例

執筆者 (株)クロス・マーケティンググループ クロスラボ 研究員 岸田 典子 (きしだ のりこ)

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