- マーケティングコラム
プロダクトライフサイクルとは?4つの段階と戦略
2024 / 10 / 15
製品のマーケティングを成功させるには、市場投入から撤退するまでの過程を示す「プロダクトライフサイクル」(PLC)を理解することが重要です。今回は、プロダクトライフサイクルの各段階の特徴と効果的なマーケティング戦略について解説します。
プロダクトライフサイクルは4段階に分けられる
プロダクトライフサイクルとは、売上をもとに製品の市場導入から撤退までを「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階に分けて捉えた理論です。プロダクトライフサイクル4段階のそれぞれの特徴は、次の通りです。1.導入期
導入期は、製品が誕生し、市場に投入されたばかりの段階です。まだ認知が低く、大きな需要は生まれていないため、売上は大きくありません。一方、開発費用がかかっている上、認知拡大に向けたプロモーション施策が必要な時期のため、利益はほとんど出ていないのが一般的です。2.成長期
成長期は製品の認知度が上がり、売上が急成長する段階です。売上が増えるのに加えて導入期に比べると生産コストが下がるため、利益も急拡大します。一方、競合他社が増えるため、差別化が必要になります。また、成長期になると顧客の幅が広がり、ニーズが多様化することが特徴です。競合に打ち勝つためには、随時製品改善に取り組む必要も出てくるでしょう。
3.成熟期
成熟期は成長が鈍化し、売上、利益ともに最大期を迎えたあと伸び悩み、頭打ちとなる段階です。4つのサイクルの中で、最も長く続きます。成熟期になると、すでに市場で受け入れられており、競合商品が市場に多数あります。そのため、価格競争はいっそう激しくなるでしょう。また、少数のブランドが大部分のシェアを占める傾向もみられます。ブランドや価格が重視される段階です。
なお、成熟期とその次の衰退期の間に、飽和期を設ける考え方もあります。需要が伸びなくなった時点で飽和期とします。
4.衰退期
衰退期は、売上も利益も減少する段階です。競合品の登場や消費者の需要減少により、価格競争がさらに激しくなります。利益の確保が難しくなるため、多くの企業で製品への投資はなくなります。そして市場からの撤退が続き、市場が縮小していきます。資金力のある企業では衰退期でも既存顧客に向けて製品の導入を続けることもあります。しかし、利益を得るためには、モデルチェンジなど新たな価値の創出が求められるでしょう。
プロダクトライフサイクルを把握するメリット
プロダクトライフサイクルは、市場環境の理解とマーケティングの成功に欠かせません。プロダクトライフサイクルを把握するメリットには、次の3つがあります。自社製品の位置付けを把握できる
4つのプロダクトライフサイクルを知ることで、自社製品がサイクルのどの段階にあるのかを把握できます。それぞれの段階で効果的な戦略は異なるため、段階を把握することで、取るべき適切な戦略がわかります。例えば、売上や利益が頭打ちになった場合でも、プロダクトライフサイクルにおいては当然の流れであることがわかります。この段階に適した、顧客の維持を目標とした施策にスムーズに取り組めるでしょう。
利益の増加につながる
各プロダクトライフサイクルに応じて適切な戦略を取ることで、利益を最大化させられます。導入期にはプロモーションに力を入れ、成長期には生産や製品改善に取り組むという資源の有効活用も可能です。利益を伸ばせる機会を逃しません。
コスト削減を図れる
市場で多くのシェアを獲得するには、プロモーションが不可欠です。しかし、かけられる費用には限りがあります。各プロダクトライフサイクルに応じた戦略を取ることは、コスト削減にも有効です。例えば、成熟期には大きなプロモーションよりもリピーター獲得に向けた施策でコストを抑えられます。また、衰退期に入った製品に、多くの集客コストをかけるなどの無駄を排除でき、適切なタイミングで事業を縮小、撤退するといった対応も可能です。
【プロダクトライフサイクル】各段階における戦略
マネジメントやマーケティングにおいては、プロダクトライフサイクルの段階に応じた戦略を用いることが重要です。4つのプロダクトライフサイクルの段階別に、適する戦略を紹介します。また、プロダクトライフサイクルの戦略をとる際は、イノベーター理論についても理解しておく必要があります。
イノベーター理論とは、新しい商品やサービスが普及するまでの流れにともない、消費者を下記の5つのタイプに分類したものです。
・イノベーター(革新者):商品・サービスをいち早く利用する層。市場全体の2.5%
・アーリーアダプター(初期採用者):トレンドに敏感な層。市場全体の13.5%
・アーリーマジョリティ(前期追随者):新しいものに対して慎重な層。市場全体の34%
・レイトマジョリティ(後期追随者):新しいものに対して懐疑的な層。市場全体の34%
・ラガード(遅滞者):新しいものに対し興味・関心がない層。市場全体の16%
上記のタイプを知っておくことで、段階に応じてどのターゲットを狙うべきか把握しやすくなります。
イノベーター理論の詳細は、以下の記事をご覧ください。
「キャズムとは?イノベーター理論とあわせて概要を解説」
導入期:認知向上を図る
導入期はまだ消費者に知られていない段階のため、製品の認知度を高めていく施策が有効です。多くの消費者にアピール可能なCMやWeb広告、試供品提供などを行うと良いでしょう。これまでにない製品なら、消費者に使用方法を伝える市場教育も必要です。導入期の段階では、マーケティング施策が直接売上に結びつきにくいため、マーケティングに多くのコストがかかることは認識しておかなければなりません。しかし、この段階でしっかり初期投資を行うことで、将来的な市場シェア獲得につなげられるでしょう。
また、導入期で主なターゲットとなるのは、新しい製品へいち早く高い関心を持つイノベーターです。
具体的な施策を考える際には、先進性をアピールしましょう。イノベーターを多く獲得することで、今後の需要拡大を速く迎えられます。
成長期:製品の競争力を高める
成長期で重要な戦略は、他者との差別化です。自社の売上や市場が拡大していくにつれ、市場に競合製品が出回り始めます。プロモーション時には、自社の独自性をアピールすることに重きをおきましょう。また、成長期はシェアを伸ばすために、積極的にプロモーションを進めることも大切です。主なターゲットとなるのは、トレンドを先取りするアーリーアダプターです。
現在では、SNSを活用したインフルエンサーマーケティングに高い影響力が期待できるので、積極的に実施しましょう。同時に、顧客との接点を増やすため、販路拡大に取り組むのがおすすめです。
成熟期:リピーター獲得を図る
成熟期になると、アーリーマジョリティやレイトマジョリティがターゲットとなり、市場の需要は安定化してきます。市場に浸透して新しさはなくなっているため、新規顧客獲得の機会は限られます。リピーターに向け、ポイント制度の導入やメールマガジンの発行などを行うと効果的です。また、顧客へのアンケート調査を通じて得た需要を、製品に反映させるといった施策も適しています。信頼感や安心感を顧客に提供するのに効果的です。
ただし、価格競争は一段と激しくなります。場合によっては、価格を下げる検討も必要となります。利益を確保していくには、生産の効率化やコスト削減にも取り組まなければならないでしょう。
なお、成熟期はリブランディングを行ってターゲットや市場を変更するのにも良いタイミングです。製品の改良による新たな価値の創出や、ニッチな市場をターゲットにした戦略を行うのにも適しています。
衰退期:製品のコンセプトを変更する
衰退期になると売上や利益の確保が難しくなるため、撤退する企業も出始めます。この段階で費用をかけて新規顧客を獲得するのは非効率的です。撤退のタイミングを検討するか、市場に残るかを決めましょう。市場に残る場合は、既存顧客を維持するための戦略が適しています。アフターサポートの充実などに取り組みましょう。また、需要を再活性化させるために、大胆な製品改良を行うのもひとつの方法です。ただし、コストも大きくかかるため、新規の製品開発とどちらが効果的なのか、よく検討する必要があります。