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“気づき”マーケティング(5) エスノグラフィーの成果って?

辻中 俊樹
東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問

辻中 俊樹

2014 / 09 / 09

#消費者行動,#気づき

“気づき”マーケティング(5) エスノグラフィーの成果って?

皆さんは<コストコ>には買い物に行かれたことはありますか。「よく行く」、「1回も行ったことがない」・・・、こんな定量的なことはさておいて、仮に自分自身には全く利用する動機がないとしても、<コストコ>を利用されているお客様の真意は知っておいた方がいいはずだ。

エスノグラフィーの極意

 まずは覗きに行ってみる価値はある。もちろん会員カードがないとダメとかハードルはあるにせよ、この覗きに行ってみるということから始まるのが、いわゆる観察調査、エスノグラフィーということになる。ところが、この覗きに行ってみるという程度で、ちゃんとエスノグラフィーが成立するのかが問題である。今回はあまり難しく考えすぎない、それでいてある程度の成果をあげるための、ちょっとした極意をお伝えしてみる。

 私自身にはあまり<コストコ>を利用する動機はない。夫婦二人暮らしにとって必要としている場所ではないからだ。あんなに大きなピザを買っても食べきれないし、恐らく50ヶくらいは入っているだろうコーンパンの袋詰めは単に圧倒されるだけだからだ。

 というように、「何をしにこの店に来ているのだろう」という視点が大切ということになる。

 自分と比較をしてみてどうなのか、どんな利用シーンが想像できるだろうかなどである。店の中ではバケモノのようなカートに買ったものを満載にした2~3人連れがたくさん。レジではこの満タンカートを2台くらいおして並んでいるお客様がウジャウジャいるではないか。1万円台の買い物なんてのは当たり前で、2~3万円の支払いもよくでてくる。「できるだけおさえたんだけど、やっぱりいっちゃったよねえ」なんて会話をしているお客様もよくみかけるのだ。


20140909_02


一つ一つみつけていく事が必要

 さて、ここで「やっぱりまとめ買いのお客様が多いのだ」というような整理をしてしまうと、エスノグラフィーとしては完全に失敗ということになる。まず「まとめ買い」なんていう、手あかまみれの、エセマーケターが使うようなキーワードや仮説ワードを一切捨てておくことが重要である。

 「どんな人たちの、どんな目的の、どんなモノのおまとめなのか?」ということを一つ一つみつけていく事が必要なのだ。今は道具立てが便利になったので、こんなレジ風景や、カートを押して通路を歩いている人達をスマホなどでパチパチ。後でアルバム状態にして並べてみる。たとえば4コマ漫画風に並べたシーンのスナップに、思いつくままに「吹き出し」を入れていくとよい。「今日はお姉ちゃんちの頼まれていた分も全部ゲット!!」 「カーターズのキッズ用品はここで手に入るから、みんなの分も買っておいたぞ」 こんな吹き出しを思いつくままつけていくとよいのだ。

 もちろん、売り場に並んでいる商品などもそうやっていく。言葉では伝えづらいので、どんどんスナップショットだ。色とりどりのカラーボールが100ヶ近く入った1袋1,500円くらいのおもちゃが山積みされていた。「うーん、商品としては分かるけど、意味不明、何するの?安いのはわかるけど・・・」

エスノグラフィーは成果

 このポイントがエスノグラフィーの妙味であり、極意ということになる。このカラーボールの袋詰めを買っていく人達がいるのだ。何か業務用に使うのか、イベント会社の人なの?いっぱい吹き出しをつけていく。実はこの大量のカラーボール、自分んちで使っているのだ。正確に言えば実家で使っている。ジィジ、バァバのいる実家に持っていって、ビニールプールの中に入れて子供を遊ばせているのだ。ここまで至りつければエスノグラフィーとしては、それなりの成果につながっている。

 そんな視点でみれば、いろんなところに増えているキッズルームやプレイルームには確かにカラーボールいっぱいのビニールプールや遊び場がある。でもママたちはちょっと不安、なんとなく不潔だよね、毎日ちゃんとカラーボール洗っているのかしら・・・。 <コストコ>でカラーボールという商品をみたことで、こんな暮らしのディテールに至りつければ十分なのである。

 単なるまとめ買いという向こうに、みんなでシェアをするという実態が見えてくる。そしてシェアをするという消費の向こう側に、世帯人員が少なくなっていっている生活者がいろいろな連鎖で暮らしをしているという社会構造の変化がみえてくればオーケーだ。ここに実家や三世代のつながりが予感できればこのエスノグラフィーは成果があったのである。まずはスナップショットに吹き出しをつけることからスタートだ。

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