“気づき”マーケティング(8) 「叔母と姪」 | リサーチ・市場調査・マーケティング

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マーケティングコラム
2014/12/5

“気づき”マーケティング(8) 「叔母と姪」

“気づき”マーケティング(8) 「叔母と姪」

実家の実力

 このコラムで既に何回か述べたことがあるが、実家に置かれたビニールプールとカラーボールの話は覚えておられるだろうか。これは近接別居する三世代の孫たちが実家にやってきた時に使う遊び道具の象徴のことだ。ここからはいくつかの“気づき”があることも整理してきた。一つは、近接別居により三世代が極めて日常的接点を持っているということになる。二つ目は、子育てママの家では到底置くことのできない様な道具だが、ジィジとバァバ二人暮らしの実家ならば問題なく置いておくことができるし、広げて遊ぶスペースもある。これは“実家の実力”ということになる。 こんな視点でエスノグラフィーの結果を見ていると、その延長線上にいろいろな“気づき”がつながっている。シニア夫婦二人暮らしの家には、本来必要ではないおむつや子供用の食器、おふろグッズなどたっぷりと存在しているのだ。別の見方でいえば、子育てママの家と、実家の両方に、同じ機能の商品が重複されて保有されているということなのだ。

 また、実家の冷蔵庫の中の写真をみると、シニア夫婦二人の消費量から考えれば異常ともいえるヨーグルトが入っていたりするのだ。頻度高くやってくる孫たちやママが消費するものだということは、こんなエスノグラフィーの視点からみれば容易にわかることだ。おまけについでに持って帰ったりもする。牛乳や豆乳なども同様な性格を持っている。

 ところが販売データなどの、いわゆるビッグデータの側だけからみると、シニアはヨーグルト好き、豆乳好きなどという、妙な「嘘」につながっていってしまうのだ。これにシニアの健康志向などという尾ひれがくっついてしまうと、始末におえない「マーケティングの嘘」ができあがってしまうことになるのだ。

おばと姪という<女系>のつながり

 さて、実家におかれているビニールプールなどと同じような玩具としてプラレールなどもよく見かけるものだ。プラスチック製のレールを組み立てその上を列車を走らせて遊ぶというとてつもなく古典的な玩具だ。すでに廃れてしまったものだと思っていたらとんでもない間違いなのである。これは場所をとるので実家に置かれていて、孫が来たときに遊ぶものという理解ができる。ジィジが「鉄男」になって一緒に遊んでいるものなのだろうか。これは実家というよりも、子育てママの家でもよく見かける玩具にシルバニアファミリーのセットがある。これはママたちの世代がチビの頃に遊んでいたものであり、恐ろしくロングセラーの位置にいるようだ。これは子育てママの財布の感覚からいえば少々お高くつくものである。つまり自分ではまず買わない。もちろん実家のジィジ、バァバが買ってくれたということもあるのだが、ここで登場するのが「おばちゃん」である。ママの姉か妹からのプレゼントだったりすることが多くあるようだ。子育てママとほぼ同世代の「おばちゃん」にとって姪っ子という存在は異様に可愛いもののようである。おばと姪という<女系>のつながりが、実家を核にした三世代の関係の広がりを与えているのだ。

ミクロな“気づき”の中のマクロなデータ

 生活2次データは未婚化、晩婚化という社会の流れを明示している。近い将来、生涯未婚率が30%に近づいていくという社会を考えれば、子育てママのまわりには、ほぼ同数の未婚か離別した兄弟、姉妹がいてもおかしくないのである。独身の妹からみれば姉のところに生まれた姪っ子はある意味、自分の子供の代理を果たしているといえる。さらに独身の姉妹からみれば、子育て中のママにとっては財布の中身に釣り合わないような、シルバニアファミリーのセットであっても、たまのギフトには全く問題ないのである。

 こんなミクロな“気づき”の中に、実は生活2次データという超マクロなデータの実際の姿が表出されていたりするのである。逆にいえば、2次データが指し示している未婚の増大という社会像の具体イメージは、こんなミクロな“気づき”の中からしか発見することができないともいえる。

 そういえば、先程のプラレール、実は未婚の兄が時折買ってきてくれて、一台一台列車のコレクションが増えていっているそうだ。おじと甥という関係もあるということだ。ロングセラーのナゾが少し解けたような気がした。

東京辻中経営研究所 同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問 辻中 俊樹

日本能率協会などで雑誌編集者を経て、1982年ネクスト・ネットワークを設立。生活を24時間スケールで補足する「生活カレンダー」方式によるリサーチワークを確立。団塊ジュニアに関する基礎研究をまとめ、「15(イチゴ)世代」というキーワードを世に送り出すなど、その「生活シーン分析」は評価が高い。団塊世代のみならず、出産期世代からシニアについても造詣が深い。2010年には食のマーケティングに絞った活動を行うために、東京辻中経営研究所を設立。同社代表取締役マーケティングプロデューサー。

また、2012年よりユーティルの研究顧問として「気づき」プロジェクトを開始し、定性、定量にかかわらず、生活の中から「気づき」を発見するための調査、分析、コンサルティング活動を行う。その活動の中で「生活動線」などの視点を生みだしている。
近著に「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー出版)など編著書は多数。 

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