「時代を見る」「世代を読む」 ソーシャルヒストリーからパーソナルヒストリーへ | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2015/3/19

「時代を見る」「世代を読む」 ソーシャルヒストリーからパーソナルヒストリーへ

    「時代を見る」「世代を読む」 ソーシャルヒストリーからパーソナルヒストリーへ

    世相を映す定点観測データ

     株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント(以下、R&D)には、32年間継続実施しているCORE(ConceptResearch) という生活者総合ライフスタイル調査があります。私が入社した時から現在に至るまで、首都圏3000サンプルを対象に生活価値観・意識態度に関わる幅広い項目を訪問留置で調査し、データを積み重ねてきました。

     調査開始時の1982年は、調査対象者を18-59歳に設計していましたが、現在では18-79歳にまで広がっており、この設計の変化からも30年の間に生活者年齢が20歳広がったという社会の変化が読み取れます。1980年代、私も記憶にありますが、60歳以上は当たり前に生活者・消費者対象ではありませんでした。お金を使うシーンと言えばお孫さんにお小遣いを渡す程度で、自ら消費行動を起こさないと見られていた当時の60代…今では考えられないことですね。

     COREのデータから、「自分の暮らし向き」に対する意識について直近15年間のデータを並べると以下のような変化が見えます。対象者の回答は如実に社会情勢を映し出していて、社会の変化と共にリアルに生活者の心が動いているのがおわかりいただけるかと思います。

    世相を映す定点観測データ

    「時代を見る」ことでデータが生きる、今がわかる

     上記のグラフにも社会情勢が変わる大きな出来事を載せていますが、このようにデータの変動だけでなく、時代背景を組み合わせて見ていくとデータは「生き生きとした」ものになっていきます。ソーシャルヒストリーとして社会・文化・経済・技術の時代変化をおさえ、かつ調査テーマとなっている特定の生活領域や商品カテゴリーに特化したヒストリーを踏まえておくと、経年データの見方や分析は格段に深くなります。データが変化するにはそれなりの意味や理由があるということが、ヒストリーと重ね合わせて初めて見えてきたりします。

     R&Dでは、様々な分野・テーマにおいてソーシャルヒストリーと業界ヒストリー、特定商品・サービスのヒストリーを合わせた「ヒストリー分析」を行い、「生い立ち」研究をしています。いつの時代にどのような形で生まれたのか、どんな時代に育ち、今に至っているのか…その経緯が今の商品・サービスのポジションや姿を作っているのだとわかると、「今後はどうなるか」を読むベースにもなります。

     バブル景気→平成不況→いざなみ景気→世界金融危機→東日本大震災→アベノミクス…CORE調査開始から今までの32年間をみても、アップダウンも含め、時代はめまぐるしく変わっています。そして人の価値観もその影響を受け、時には翻弄されてもいます。そんな今だからこそ、データと共に「時代を見る」ヒストリー分析が必要なのではないかと思います。

    「時代を見る」ことでデータが生きる、今がわかる

    「世代を読む」ことでインサイトが見える

     ヒストリー分析は、商品・サービスだけでなく、勿論人のヒストリーにも関わってきます。まさに人の「生い立ち」研究として、世代とその人個人のヒストリーを重ね合わせ、どのような原体験の積み重ねが今のその人となりや価値観を作ったのかを読んでいくことで、定性データが気付きになり、インサイトにつながっていきます。

     定性調査にあたり、会場に来場して初めてその人となりを知るのではなく、事前にアンケートを行って予め情報を得ておくことはよく行う手法かと思います。その際に対象者のヒストリー表で「生い立ち」を見ておくと、定性調査の聴き方、分析もまた深くなっていきます。自分史として、ライフステージや住まい、健康状態の変化や思い出等、事前に年表形式で記入してもらうことで、記入者自身も自分を振り返るというステップを踏むことができます。

     これも年代だけでなく、ソーシャルヒストリーと合わせて「世代」として見ることにより、その人の置かれた背景・経緯を積み重ねて今があるのだとわかってきます。バブル景気を何歳で体験したか、雇用機会均等法の前後を知っているか、終身雇用の崩壊をどんな視点で見たか…そんなそれぞれの世代の特徴があり、その中で選んだそれぞれの生き方があり、今のその人の姿を作っているのだとつくづく感じます。

     人のヒストリーには、更にその親世代、子世代の影響もあり、奥深いものですが、「だからこのような生活を/消費行動を」と思えるヒントがそこにあり、それがヒストリー分析の面白さでもあります。

     

    R&Dでは、「世代」にフォーカスして様々な分析と、それに基づいたセミナーを行っています。消費欲が低いと言われるゆとり世代、バブルの名残を漂わせると言われるaround50世代、今までとは異なるシニア像の団塊世代…豊富なCOREデータと、定性的なデータを組み合わせて、以降は世代ごとにその横顔をご紹介していきたいと思います。

    株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント 取締役 マーケティング ソリューション部 部長 橋本 紀子

    1983年リサーチ・アンド・ディベロプメント入社。
    営業企画部門で、マーケティン グ・リサーチの立案、インタビュー、分析に携わる。2014年より現職。 定性的アプローチの経験が豊富で、年間50本以上の定性調査の企画・分析、及び年間約150グループのグループ・インタビューのインタビューアを担当。
    社内外で定性調査の活用やインタビューア育成のための研修を努める。
    JMA「グループ・インタビュー活用セミナー」講師。
    東京図書「ピッグデータの使い方・活かし方」にて「ビジネス・エスノグラフィーによるインサイト」パートを執筆。