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  • マーケティングコラム

「時代を見る」「世代を読む」 バブル体験世代around50女性の真実

橋本 紀子
株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント 取締役
マーケティング ソリューション部 部長

橋本 紀子

2015 / 04 / 16

#シニア 高齢者,#消費者行動,#消費市場

「時代を見る」「世代を読む」 バブル体験世代around50女性の真実

『バブル期を謳歌したaround50が消費の最前線に帰ってくる』…「バブル女」「GOLD世代」と呼ばれるaround50女性は、今何かと話題になっています。女子大生ブームからバブル期に社会人となり、男女雇用機会均等法により男性と肩を並べて仕事し始めたこの世代は、寿退社を当たり前とせず、仕事も結婚も両立させ、出産・子育ても体験し、復職の道を開拓した世代でもあります。また一方で結婚よりキャリアを選んだり、DINKSで子供のいない生活を楽しんだり、留学や転職も経験したりと、ライフコースが多様になってきたのもこの世代です。そして子育てとキャリアアップが一段落した今、時間的にもお金にも余裕がある世代と言われています。

突出した景気上昇期に社会に出たaround50世代

 2013年10月に創刊された雑誌「GOLD」はまさにこの世代の45-52才女性がターゲットであり、読者像は世帯年収1200万円、自由に使えるお金は月に12万円という設定だそうです。若い頃のバブル体験が今もそのまま身に宿り、消費と自分磨きへの意欲が旺盛でおしゃれ・グルメ情報にも敏感なこの世代が、夫の高い年収水準やキャリアを積んだ自分の高年収をベースに、今だからこそ自分に使える時間とお金を自在に使う…これがこの世代の典型像としてイメージされているようです。

 確かにイメージ通りの人も存在するでしょう。20代でバブルを体験した世代というと、今もなおそのバブル臭を漂わせているイメージはあるかと思います。しかしバブル体験はバブル崩壊体験につながり、その後の平成不況や世界金融危機体験にもつながっています。around50女性は本当にバブル臭を漂わせている、いや漂わせることができているのでしょうか。リアルなaround50女性は本当に「バブル女」「GOLD世代」なのか、データを元にご紹介したいと思います。


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around50女性を取り巻く環境の厳しさ

 R&Dが32年間継続実施している生活者総合ライフスタイル調査CORE(ConceptResearch) データより、around50女性を取り巻く環境を他年代との違いや、過去のaround50女性との違いで見てみましょう。

 世帯年収については年代別に比較すると夫の年収も上がり、自らも働いている人も多いため最も高い年代となっています。しかし過去のaround50女性と比べると確実に世帯年収は下がっています。女性本人の年収は少しずつ上がっているのですが、世帯としては現在の70代、60代女性がaround50だった時に比べ低水準となっています。年功序列で年を重ねるほど年収も上がり、50代での世帯年収で余裕が持てるはずが、ベースアップはおろか終身雇用も約束されない世の中となり伸び悩む夫の年収…90年代のaround50女性の年収に比べなんと260万円ものマイナスです。バブル経験があるだけに、この落差は厳しい現実としてとらえていると思います。

 さらに晩婚、高齢出産のはしりだったこの世代は、現段階でまだ小さい子供がいる人も多く、子育て卒業とは言いがたい状況です。過去のaround50女性は50才になれば子供も社会人となり手離れできていますが、現在のaround50女性の子供は小学生から社会人まで様々であり、また大学を卒業しても就職先が見つからなかったり、非正規職のために親元から独立しなかったりする場合も多く見られます。いつまで子供の面倒を見なければいけないのか…自分の親世代のaround50時代と比べ、「こんなはずじゃなかった」と思う現around50女性も多いのではないでしょうか。

 around50女性は年金や親の介護問題にも不安を抱えており、今の余裕のなさに加えて将来への不安も大きくなっています。当然考えるのは「今の生活を楽しむより将来に備える」志向であり、積極的な消費には走りにくい傾向になっています。これも「今を楽しむ」としている昔のaround50女性と比べると切なくなるデータです。


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不安を抱えつつ「自分が主役」の夢は見たい

 なかなか生活にお金をかけられない中、around50女性は映像・活字・音楽&食で「ちょっとした非日常」の楽しみを確保しています。この世代はテレビドラマ好き、旅・グルメの情報番組好き、また映画好き。大ヒットした「男女7人夏(秋)物語」やブームとなった「抱きしめたい!」「東京ラブストーリー」、映画「私をスキーに連れてって」でストーリー展開に酔い、自分を主役として重ね合わせるという体験がルーツとなって「物語好き」「イベント好き」の下地を作っています。

 このドラマや映画のテーマソングとなっていたのが80年代Jポップです。車内でユーミンやサザンを聞きながら海にスキーにデートに行くという体験は身体と感性にしみ込んでおり、今もその曲を聴くと「自分が主役」感覚に戻れるようです。リッチな消費はできなくても、ちょっとした「物語」や「イベント」で生活に「夢」を持ちたい、around50女性はそんな意識を持った世代でもあります。


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経験豊富なaround50女性から見える社会

 この世代は「仕事はやめない」「結婚しない」「子供を産まない」「親と同居しない」「離婚を選ぶ」等、それまでの寿退社が当たり前だった世代に比べ、様々な道を選択した「選べる自由」を持った世代です。また、「女性は女性らしくあるべき」だけでなく、時に男性と肩を並べ、ディープな居酒屋やゴルフ場、サウナに出没し、オヤジにも変貌するという「女性らしく」からも解放され始めた世代でもあります。

 社会変化の波ともしっかり向き合っており、バブルからバブル崩壊、終身雇用から出向・非正規雇用等、様々な社会変化にも対応してきた世代です。PCや携帯がありえないスピードで浸透していく時代を経て、PC、携帯、スマフォを駆使する一方で、それまでの活字体の折り込みチラシや新聞、テレビCMも平行して活用する等、新旧多彩なメディアを活用している世代でもあります。

 時代の浮きも沈みも両方リアルで体験し、それに合わせて生活レベルを調整するという経験豊かな世代…around50女性はある意味、現実対応力のあるしなやかでたくましい世代と言えるのではないでしょうか。だからこそ一方でバブル期に体験したあの「物語」、あの「イベント」には想いがあり、「私は主人公」の夢も見たいとの気持ちも強く持ち合わせているのでは…「バブル臭を漂わせている」のは「バブルのお金の匂い」ではなく、「バブル期に体験した主役シーン」という夢の匂いなのではないかと思います。

 人はその時代に体験したものの何を引きずり、何を捨てていくのでしょうか。「バブル期に体験した主役シーン」を引きずる「夢多き」around50女性に対しては、「あなたが主役」のモノがたりを提供していくことを考えていくべきではないかと私たちは考えています。



R&Dでは、「世代」にフォーカスして様々な分析と、それに基づいたセミナーを行っています。消費欲が低いと言われるゆとり世代、今までとは異なるシニア像の団塊世代…豊富なCOREデータと、定性的なデータを組み合わせて、次回以降も世代ごとにその横顔をご紹介していきたいと思います。

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