“気づき”マーケティング(15) お昼何食べるか、いつ決める??―意思決定の<間際化>を考える(1)― | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2015/7/2

“気づき”マーケティング(15) お昼何食べるか、いつ決める??―意思決定の<間際化>を考える①―

“気づき”マーケティング(15) お昼何食べるか、いつ決める??―意思決定の<間際化>を考える①―

意思決定のスイッチが入るタイミングとは

 今日のお昼ごはんは何を食べましたか?そして、何を食べるかはいつ決めましたか?
 私たちのようにウィークデーは当り前のように会社に行って仕事をしている種族にとっては、それを決めるのはほとんど直前ではないだろうか。あるいは直前になっても時間がとれずに食べず仕舞いになってしまったり、あんパン1ケでごまかしてみたり…。
 義務と責任に「生活動線」を支配されている私たちには、お昼ごはんを食べることの意思決定は直前、つまり<間際(まぎわ)化>していることは否めない。意思決定、つまり特定の生活シーン、ここではお昼ごはんを食べるという行動のスイッチがいつ入るかということだが、多くの行動のスイッチが直前に入るという傾向が多くなっている。そして、お昼ごはんを食べるという行動のスイッチが入り、そして何を食べる?という消費の意思決定のスイッチが入る。もちろん、これが同時に起こったり、また順序が逆になったりすることもある。たとえば、「むしょうにヒレカツが食べたい」ということから、お昼ごはんスイッチが入るといったことだ。
 ここでも、とんかつ屋さんに行って食べる、テイクアウトする…などといろいろな選択肢の中で、意思決定のスイッチが入って、昼食シーンという生活シーンが出現することになる。お昼ごはんは最もスイッチの入るタイミングが直前になるだろうことは、誰でも経験的にわかり易いことだが、この生活シーンを出現させるスイッチの入るタイミングが、様々なカテゴリーで直前化している傾向があるのだ。 それを意思決定の<間際化>というように私たちは位置づけている。

 それを場当たり的、せつな的というようには考えない方がいい。<間際化>しているにせよ、その意思決定のスイッチがどんな種類のものがよいのかは事前に蓄積されているものだ。つまり、最終的にスイッチが入るために、様々な情報や経験がインテグレーション(統合)されるタイミングが<間際化>していることであり、場当たりでは決してない。
 お昼ごはんの例は、直前化という意味が最もわかり易いということになるが、実はコンサートやイベントでも同様のことが起こっている。直前まで“入り”が読めないということが多いらしい。旅行などもずい分と決定が<間際化>しているという。
 これは情報環境が変わり、待ち合わせの場所、時間すら直前までアバウトで、会う10秒前にラインで決めるといった行動は若者たちの専売特許のようにいわれている。これは1つの典型だが、それがどうもそうでもないのである。

シニア層特有の価値観

 60~70代のシニア層でもこのような傾向が顕著なのだ。もちろん待ち合わせのアバウト度合いは少し異なっているが、<間際化>ということはシニアの方がクリアな部分もあるのだ。シニアは生活動線が義務と責任から解放されているから、時間にゆとりがあり、もっと意思決定までのリードタイムが長くとれるはずだと思いがちである。もちろん、時間のゆとり感は多いのは事実だが、それは逆に意思決定の<間際化>を促しているところもある。
 何も前もってすべてを決めておく必要がないとはいえ、朝起きてお天気が悪ければ外にお散歩に行こうと思っていたのを、あっさりやめるだけのことである。また逆に、午後から急にお天気がよくなったので、遠くまで散歩の足を伸ばすということだって自由なのだし、それが自然の運行のリズムとシンクロして生きることのできるシニア特有の価値観でもあるのだ。
 シニアだから意思決定の<間際化>はしないというのは全くの誤解なのである。こんな生活の事実はやはり「生活日記」という手法を通してでしかわからないものなのだ。つまり、意思決定、行動のスイッチの入り方を<見える化>、<可視化>することでしかわからないことなのだ。

実際の生活日記から見る行動の<間際化>

68歳の女性の日記1

 ここに例示したのは68歳の女性の日記。お昼ごはんを築地場外市場で握り寿しを食べることになったのである。前日のテレビ番組を見てこの行動スイッチが入ったのであり、早速次の日に足が動いた。これは時間の自由度の高いシニアならではの<間際化>の1つといえる。そして、夜ごはんは築地で買ってきた明太子で「いか明太スパゲティ」を食べるという意思決定の連続スイッチが入ったことになる。
 

68歳の女性の日記2

 同じ女性の4日後の昼ごはん、「豆腐に納豆、小松菜のおひたしを乗せて」食べている。これは「あまり食欲がなかったのでごはんではなく豆腐にぶっかけてみた」ということである。恐らくこの食べ方の意思決定はほとんどリードタイムゼロといってもよさそうだ。豆腐も小松菜のおひたしもこのように食べることを予想していたものではないといえる。
 食はこのようなことがよく出現するカテゴリーといえるが、この<間際化>はシニアにとってあなどれない行動なのである。また逆に<間際化>しないものもある。ここの区別が重要なのだ。生活日記はこの重要さをきちんと教えてくれる。この続きは次回に。

東京辻中経営研究所 同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問 辻中 俊樹

日本能率協会などで雑誌編集者を経て、1982年ネクスト・ネットワークを設立。生活を24時間スケールで補足する「生活カレンダー」方式によるリサーチワークを確立。団塊ジュニアに関する基礎研究をまとめ、「15(イチゴ)世代」というキーワードを世に送り出すなど、その「生活シーン分析」は評価が高い。団塊世代のみならず、出産期世代からシニアについても造詣が深い。2010年には食のマーケティングに絞った活動を行うために、東京辻中経営研究所を設立。同社代表取締役マーケティングプロデューサー。

また、2012年よりユーティルの研究顧問として「気づき」プロジェクトを開始し、定性、定量にかかわらず、生活の中から「気づき」を発見するための調査、分析、コンサルティング活動を行う。その活動の中で「生活動線」などの視点を生みだしている。
近著に「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー出版)など編著書は多数。 

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