“気づき”マーケティング(16) 「ヤオコー」ユーザーの生活を“可視化”してみた!―意思決定の<間際化>を考える②― | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2015/8/6

“気づき”マーケティング(16) 「ヤオコー」ユーザーの生活を“可視化”してみた!―意思決定の<間際化>を考える②―

“気づき”マーケティング(16) 「ヤオコー」ユーザーの生活を“可視化”してみた!―意思決定の<間際化>を考える②―

「ヤオコー」ユーザーの日常的な食生活の可視化

 イオン、イトーヨーカドーに代表されるスーパーマーケットチェーンが軒並み苦戦し、出口の見えない状況が続いている中で、比較的元気がいいのがリージョナル、ローカルチェーンの一部。そんな中でも群を抜いて強いのが埼玉を中心に展開する「ヤオコー」だ。
 今やメーカーも流通業もこぞって「ヤオコー」詣でをして、何かにあやかろうと必死なようである。今回は、その「ヤオコー」を利用しているユーザー側からの視点で生活の実態を明らかにしてみよう。
 当然その手法は「生活日記」だ。その生活日記を通して「ヤオコー」ユーザーの日常的な食生活を可視化してみようと思う。
 ごく当たり前のことだが、「ヤオコー」ユーザーは、ヤオコーだけを利用しているヤオコーフリークではないということである。一家の食生活の大半をヤオコーというお店に頼っている訳ではない。ここは生活の可視化による大切な“気づき”の第一番目である。
 むしろ、他のチャネルを重層的に使い、時と場合に応じて使い分けをしているユーザーといえる。

計画性と<間際化>

 「お米がなかったのと、雨で外に出られなかったが、明日の朝に食べるパンを焼く材料が必要だったため」という理由で、イトーヨーカドーのネットスーパーを利用しているというシーンが出現したりする。
 このネットスーパーの利用は「雨が朝から降っていて外出できず」という、まさに意思決定の<間際化>を象徴する出来事ともいえる。案の定、お昼は「お米を切らしていたのでパスタにした」ということで2歳の息子と「小松菜とベーコンのクリームパスタ」を食べている。そのつどの場面によって工夫することができるから<間際化>も成立しているのだろう。
 家族で出かけた外出先の休憩がてら車の中でセブンイレブンのアイスコーヒーを飲むというシーンや、日曜日の朝「子どもたちが早く起きて散歩ついでにパンを買いに行った。みんなが好きなパン屋なので楽しい朝食になった。」というシーンもある。
 子どもと出かけて「息子が寝てたので、つかれもあり、作るより買って食べようと思ったから」ということでセブンイレブンのおにぎり2コとゆずレモンサイダーにした後、「明日予定があって買い物に行けない」ということでヤオコーに寄って2~3日分のまとめ買いをしたりもしている。この日買った「豚ロースしゃぶしゃぶ」肉が翌日の夜に「豚しゃぶサラダ」になって登場する。これはある種の計画性であり、意思決定は<間際化>ではないようだ。

複数チャネルを併せ持つユーザーたち

 この計画性という点でいえば、パルシステムに代表される生協を使っているヤオコーユーザーがいたりもする。「一週間前に注文するので重ならないようにと思うが…」ということで、「赤魚一夜干、あずきバー、キャベツ、人参」がこの日到着、翌日の夕食に焼き魚として登場する。焼き魚だけでは足りないので「デミグラスハンバーグ」も登場し、計画品が重なった妙な食卓となっている。
 あずきバーは、その後数日食後のデザートシーンを飾っている。
 様々なチャネルを、計画性と<間際化>と、その中間の要素を混合しながら、ミックスして利用しているのが実態である。
 たとえば生協は家の土台や一階部分であり、一階の一部や二階をヤオコーが担当し、ベランダはコンビニというように、一軒の家の機能を複数の売り場がそれぞれ受け持っているというようにみえる。それが時折入れ代わったりもしているというのが実態のようだ。

複数チャネルを併せ持つユーザーたち(イメージ)

生活日記だからこそ見えるもの

 8歳と5歳の娘さんと実母が同居している40代のヤオコーユーザーの平日。夕方になってヤオコーに買い物に行く。「食パンがなくなったのと夕食のおかずになる物を買いに行く」という、比較的<間際化>した動機である。
 「しじみと餃子(冷凍)は母が使ってほしいというので、しじみのみそ汁と餃子を焼く」という夕食の献立のベースが夕方に決まりつつあったのである。これだけではおかずが足りないということで買い物に行ったという訳だ。
 「ヤオコーの試食でマーボー豆腐だったので豆腐と素のソースを買って簡単に調理する。レタスを下に敷いてマーボー豆腐を乗せたら見た目も良く一緒に食べてもおいしかった」ということで、「夕食が中華でまとめられて良かった。母からの餃子が自分で買うのよりおいしくて満足した」という夕食が成り立ったのである。
 このマーボー豆腐の店頭提案は<間際化>の意思決定をものの見事に刺激している。
 だが、この時のレシートデータをいくら解析してもこの食生活はみえてこない。POSデータというビッグデータは、決して生活の可視化にはとどくことはないのだ。

生活日記だからこそ見えるもの(イメージ)
東京辻中経営研究所 同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問 辻中 俊樹

日本能率協会などで雑誌編集者を経て、1982年ネクスト・ネットワークを設立。生活を24時間スケールで補足する「生活カレンダー」方式によるリサーチワークを確立。団塊ジュニアに関する基礎研究をまとめ、「15(イチゴ)世代」というキーワードを世に送り出すなど、その「生活シーン分析」は評価が高い。団塊世代のみならず、出産期世代からシニアについても造詣が深い。2010年には食のマーケティングに絞った活動を行うために、東京辻中経営研究所を設立。同社代表取締役マーケティングプロデューサー。

また、2012年よりユーティルの研究顧問として「気づき」プロジェクトを開始し、定性、定量にかかわらず、生活の中から「気づき」を発見するための調査、分析、コンサルティング活動を行う。その活動の中で「生活動線」などの視点を生みだしている。
近著に「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー出版)など編著書は多数。 

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