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“気づき”マーケティング(22) “50歳の危機” ~その本質を探ってみると~

辻中 俊樹
東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問

辻中 俊樹

2016 / 02 / 04

#家庭 家族,#生活 文化,#気づき

“気づき”マーケティング(22) “50歳の危機” ~その本質を探ってみると~

「三世代サンド」の話の続きを。三世代がサンドイッチ状態になっている現在の社会の中で、パンの側が問題なのか、具材の側が問題なのかということを前回述べた。ここでいう問題というのは、「生活の満足感」という視点である。そして、その問題を明らかにする焦点が、50歳前後にあるということである。

自分の子と親とに挟まれた世代

 「三世代サンド」の話の続きを。三世代がサンドイッチ状態になっている現在の社会の中で、パンの側が問題なのか、具材の側が問題なのかということを前回述べた。ここでいう問題というのは、「生活の満足感」という視点である。そして、その問題を明らかにする焦点が、50歳前後にあるということである。

 結論からいえば、パンか具材かということではなく、具材であった状態からパンの側に移行する時に問題が浮上するということである。それが象徴的にいえば“50歳”前後に到来するということになる。

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 具材の状態というのは、子供の世代と親の世代にはさまれたことをさしている。だから、パンから具材に移行する時期は、つまり結婚、出産というプロセスであり、アイデンティティの変質は起こるにせよ、まずはどちらかといえばハッピーな移行期といっていい。現在の女性はかなりの確率でワーキングマザーになる訳で、極めて多忙で大変ではあるが、乳幼児を育てているという「飼育員さん」の状態になり、「生活満足度」は確保されている。

 余談にはなるが、未婚状態や子供がいないという選択をとるパンの側も増えている。自らは具材にはならないということになるが、自分の兄弟姉妹が具材になる確率は高い訳だから、おばやおじという疑似的な具材になるシーンを持つことになる。いいかえれば、テンポラリーに具材としての体験をいいとこ取りできる訳だ。30代のおばやおじには、めいやおいとの無責任な楽しさを享受するシーンがあるということだ。

50歳前後が陥る“アイデンティティクライシス”

 さて、問題はこの「飼育員さん」の時期を終えることが目前に迫ってきた“50歳”あたりのところにある。つまり、「飼育員さん」であることを卒業していくことになる。そして次はパンの側に移行していくであろう過渡期であるのだが、自分の親、それも70代後半から80代の老親にまだはさまれている状態が現在そのものなのである。

 この時期がアイデンティティクライシス、“50歳の危機”を生みだすことになる。「飼育員さん」という義務と責任からは解放され、自由になっていくという将来を考えてみた時に、まずは喪失感と目的の空白化という精神的不安が到来することになる。男性であれば、職業人生の中での終わりのイメージも訪れてくることで、将来不安と、先の人生のあまりの長さに目がくらんでしまっているというところだろう。

 私が知る限り、調査結果も含めて“50歳”前後での転職、離職し独立して新しい事を始めた男性たちは、うまくいかないケースの方が多いようだ。漠然たる危機感は、焦りを生み、その時の選択はいい結果を生まないのかも知れない。これが、“50歳の危機”なのであり、「生活満足度」を、60代や70代に比して下げる要因なのである。  そして、老親という自分たちを今でもはさんでいるパンの存在との関係がおしよせてくるのだ。困った状態のケースでいえば介護であり、たとえ元気であったとしてもすぐ先にやってくるであろう将来の事である。「三世代サンド」が、実際には「3.5」、「4」世代のサンドになっていることになる。二重になってしまっている片側のパンということだ。

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 前回ご紹介した「生活満足度」に関する調査データに沿ってみれば、50代で満足度が下がるのに加えて、「延命治療」に関して60代以降、世代が上がるにつれて「しない」という人が圧倒的に増え、70代後半から80代では100%が「しない」としている。この点についてみても、50代ではまだまだ「どちらともいえない」としている人が半数弱ででている。

 これは自分のことをイメージしているのか、自分の親のことをイメージしているのか、なかなか判断しづらいところである。自分自身のことで考えれば答えははっきりしているが、自分の老親のことを考えれば、どうもそうわりきったことになる訳でもない。ここにも危機の一つが姿を現している。私にはこの時代を過ぎてしまえば、日本の社会像は大きく変わると思えるのだが。

バレンタインチョコは世代を超える

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 さて、あまり悲劇的なことばかりを言っていても仕方ないのだが、やはりこの「三世代サンド」には、世代を越えた伝承というプロセスが存在していることも事実である。20、50、80代、あるいは10、40、70代という世代と年齢を越えた生活価値伝承ということである。そういえば、間もなくバレンタインデー、世の中はバレンタインとチョコレートの話題であふれかえっている。何故か、このイベントと消費は「三世代サンド」を貫いている。

 今年は14日の当日が日曜日のために、恐らくバレンタインはファミリー型、もっといえば「三世代」型にシフトしていることだろう。チョコレートは完全にこの三世代にまたがって価値が伝承、継続されたものである。そういえば、ロッテのガーナチョコはもう50周年を過ぎまだ成長しているようだ。  50歳前後の世代は、上の世代、下の世代ともチョコレートの価値を分配することができているのだ。

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