RITA Analysis™ (リタ・アナリシス) | リサーチ・市場調査・マーケティング

RITA Analysis™

「RITA Analysis」のポイント

  • 「RITA Analysis™」とは、「ソーシャルベネフィット(社会的利益)志向型の企業活動」に対する「消費者の認識」を明らかにすることを通じて、打ち手への示唆を提供する「消費者行動分析のフレームワーク」です。
  • 「RITA Analysis™」のユニークな点は、「利他性」に関する心理学的な理論を消費者行動分析に応用したフレームワークである点です。
  • 「RITA Analysis™」は、「ソーシャルベネフィット志向型の企業活動」について、「開発時」と「実施(発売)後」の各フェイズでの評価に活用できます。
【RITA Analysis™の分析対象】

環境や社会の持続性に配慮された商品(ソーシャルプロダクト/エシカルプロダクト等)の提供、CSR(CorporateSocial Responsibility)やCSV(CreatingShared Value)への取り組み等、自社の利益追求だけではなく、「ソーシャルベネフィット(社会的利益)の増加を目的とする企業活動」の重要性が様々な場面で議論されています。また、消費者視点に目を転じてみると、人々の社会貢献意識が年々高まりつつあるというトレンドについての議論や、倫理的(エシカル)消費・社会的(ソーシャル)消費といった、環境や社会の持続性に配慮された消費者行動の様式についての議論がさかんに行われています。企業活動と消費者行動は相互影響的な関係にありますので、企業視点、消費者視点の両方から議論されることは非常に意義あることだと考えられます。

 

しかしながら、実務の現場においては、消費者視点よりも企業視点のほうが重視されているという点は否定できません。現在不足しているのは、ソーシャルベネフィット志向型の企業活動を「消費者視点」から分析し、そこから得られた示唆を打ち手に活かしていくという姿勢だと考えられます。

 

この課題に答えるためには、複雑な消費者の心理メカニズムを把握するための何らかの「フレームワーク(考え方の枠組み)」が役に立ちます。「RITA-Analysis™」とは、その課題に対応し、ソーシャルベネフィット志向型の企業活動を消費者が「どのように受け止めるか=認識するか」という側面に特化した、「消費者行動分析のフレームワーク」です。

 

「RITA Analysis™」のユニークな点は、人間が本来持つとされる「利他性」についての心理学的な研究知見を消費者行動分析に応用したフレームワークであることです。心理学の領域では、少なくはない人間が利他的に行動することが知られています。例えば、進化心理学では、「助け合う」という互恵的な利他性の性質が環境に適応してきたからこそ、人間は生物として生き残ってきたものと考えられています。また、社会心理学や行動経済学的な実証研究では、様々な場面において他者を助ける心理的メカニズムが人間には生じることが確認されています。
企業が行うソーシャルベネフィットの増加を目指す活動に対して賛同する消費者においても、おのずとそのような心理メカニズムが働いていると考えることができます。例えば、社会課題の解決につながるソーシャルプロダクトの向こう側には、「支援される他者」が存在するからです。したがって、消費者は、消費を通じて、「支援される他者」を助けるという「利他的行動」をとっていることになります。

 

以上のように、「利他性」の見方を手がかりとした分析を通じ、「ソーシャルベネフィット志向型企業活動」が消費者からどうみられているのかを明らかにし、これによって企業活動への示唆を提供することが「RITA-Analysis™」の目的であるといえます。

「RITAAnalysis™」のフレームワーク

「RITA Analysis™」は、「ソーシャルベネフィット志向型企業活動」というインプットに対応する消費者行動を、3つの次元(心理プロセス、行動プロセス、内的・外的影響要因)に分解して捉えた、以下のような包括的フレームワークとなっています。
【RITA Analysis™ 包括的フレームワーク】
【RITA Analysis™ 包括的フレームワーク】

包括的フレームワークを構成する次元の1つめは、「心理プロセス」です。心理プロセスとは、ソーシャルベネフィット志向型の企業活動に接触した消費者が、心の中でどのように情報処理を行うかについてのプロセスです。ここでは、「価値類似性」、「共感」、「モラル」、という3つの要因が「行動意図」を形成するという情報処理の流れを構造的に把握する「状況対応モデル」を提案しています。

【RITA Analysis™の状況対応モデル】
【RITA Analysis™の状況対応モデル】
※「状況対応モデル」は共分散構造分析によるモデルの適合度が確認されています。公式に発表された分析事例として、水師裕(2016)の研究レポート「倫理的消費の購買状況対応モデル―価値類似性、共感、モラルによる分析」(『日経消費インサイト』2016年1月号掲載)があります。

消費者は、企業活動そのものに対する認識(企業の取り組みと自分が重要視する価値との価値類似性の認識=賛同の認識)だけでなく、その活動が支援する他者に対する認識(共感)を持っていると考えられます。この2つの認識を通じて、「自分は支援可能な立場にあるので当然支援すべき」というモラルのような意識が活性化すると考えられます。このようにして活性化したモラルが行動意図を喚起するのです。「状況対応モデル」という呼び名の由来は、消費者が出会う企業活動が状況により異なることに「対応」する心理的なメカニズムを描いたモデルであるからです。

 

包括的フレームワークを構成する次元の2つめは、「行動プロセス」です。ここでは、「行動」という言葉を広く捉えています。例えば、購買行動、クチコミ行動、企業主催の社会貢献イベントへの参加といった、「ソーシャルベネフィット志向型企業活動」に反応する消費者の多様な行動を想定しています。そして、行動を「行動前」「行動時」「行動後」という3つのフェイズに区別して捉えます。

 

行動プロセスを分析する方法の一例として、「エシカルジャーニーフレーム(Ethical Journey Frame)があります。消費者のソーシャルベネフィット志向的な行動を、ある種の「倫理的(エシカル)な消費の旅(経験の過程)」と捉え、その実態を洞察します。分析対象として、例えば、「製品カテゴリーにおけるエシカル意識」や「社会的配慮を意識した買物行動」といった抽象的なテーマから、具体的なソーシャルプロダクトやCSR活動までが想定できます。

【エシカルジャーニーフレーム(Ethical Journey Frame)】
【エシカルジャーニーフレーム(Ethical Journey Frame)】
包括的フレームワークを構成する次元の3つめは、「内的・外的影響要因」です。消費者個人の間では、価値観やライフスタイル、どのような集団に属しているのか、製品や購買への関与といった側面で差異が存在します。これらを、消費者の内面からくるものなのか(内的)、外部からくるものなのか(外的)に整理し、影響要因として考慮します。RITA Analysis™では、ソーシャルベネフィットに対する消費者の価値観や意識として重要と考えられる要因を測定尺度化しており、この測定尺度を使用した分析を特にIDA(Individual Difference Analysis)と呼んでいます。
【IDA(Individual Difference Analysis)の分析視点】
【IDA(Individual Difference Analysis)の分析視点】

分析事例

「RITA Analysis™」を使用した分析の一例として、以下のような分析方針が挙げられます。
【「RITAAnalysis™」の分析方針(例)】
【「RITAAnalysis™」の分析方針(例)】

ビジネス課題に応じて、「内的・外的影響要因」の測定尺度を使ってクラスター分析等でセグメント化したり、また、個別の尺度を使用して分析軸として使用したりすることで、消費者間における比較視点を設定します。次に、どのような行動フェイズの情報が取得したいのかに応じて、分析対象となる行動フェイズを選定します。最後に、具体的な分析対象(例えば、ソーシャルプロダクトやCSR活動)を呈示した際の消費者の心理的なプロセスを構造的に把握します。これにより、どのようなタイプの消費者が、どのような行動場面で、どのような情報処理を行うのかが明らかになります。

 

以下は、ある飲料ブランドの購入促進を目的とするコミュニケーション戦略を検討するための分析事例です(具体的な数値は偽装されています)。この飲料ブランドは、購入すると一定の金額が、ある社会問題をかかえる発展途上国の問題解決のために寄付されるという仕組みをもつ、「寄付つき商品」と呼ばれるソーシャルプロダクトです。

 

この分析事例では、「内的・外的影響要因」のうち、「社会問題への関心」が分析軸としてとりあげられました。「社会問題への関心」とは、一般的な社会問題のことではなく、この飲料製品が取り組んでいる具体的な社会問題に対する関心の度合いのことです。「行動プロセス」の次元では、「行動時」つまり購入時点のフェイズを選定しました。

 

調査では、ブランドの製品情報、飲料製品の社会貢献的な取り組み内容の情報(寄付のしくみ等)、それにより支援される発展途上国の人々についての情報が回答者に呈示されました。これに対して、「社会問題への関心」と状況対応モデルの変数(「価値類似性」「共感」「モラル」「購入意図」)が測定されました。

 

分析おいてはまず、「社会問題への関心」が高いグループ(高関心群)と低いグループ(低関心群)に分けて、共分散構造分析を行いました。

【社会問題への関心別での分析結果(状況対応モデル)】
【社会問題への関心別での分析結果(状況対応モデル)】

この結果をみると、高関心群では、価値類似性からモラルへの影響が強く(共感からモラルへの影響が弱く)、低関心群では、共感からモラルへの影響が強い(価値類似性からモラルへの影響が弱い)ということが分かります。また、高関心群の方がモラルを経由した行動意図(購入意図)へ強い影響を与えていることが分かります。

 

次に、状況対応モデルの各変数をクロス集計表でみてみると、高関心群では、この飲料ブランドによる社会貢献的な取り組みの価値と自分の価値観とが一致している、という価値類似性の認識をする人が多く、また、この製品を購入したいと多くの人が感じていることが分かります。しかし、この飲料ブランドを通じて支援される他者に対して共感する人は少ないことが分かります。
一方、低関心群では、共感する人が多いという反面、価値類似性を認識する人が少なく、この製品を購入したいという人は少ない結果となっています。
モラルをみると、両群ともほぼ同じ割合です。この社会問題では、関心の度合いに関わらず、7割程度の人において、「支援される人々を助けなければならない」という個人的な規範意識が活性化していることが分かります。

【社会問題への関心別での分析結果(クロス集計)】
【社会問題への関心別での分析結果(クロス集計)】

分析結果からは、この飲料ブランドが取り組む社会問題に対する高関心層において購入してもらえる可能性が高いといえます。しかしこの層では、支援される他者への共感が購入意図へと結びつきづらいことが分かっているので、支援される他者についての情報提供よりも、取り組む社会問題についての意義や詳細についての情報を提供し、できるだけ情報内容について考えてもらうようなコミュニケーションを行う必要がありそうです。感じさせる(共感させる)よりも、価値類似性について考えさせるという作戦です。

 

この飲料ブランドが取り組む社会問題に低い関心しかない層では、比較的購入してもらえる可能性は低そうです。しかし、このような層がボリュームゾーンにある等、マーケティングのターゲットとせざるをえない場合もあるでしょう。この場合、価値類似性のような「思考」をともなった反応を得ることが困難ですので、できるだけ支援される他者についての情緒的な情報を分かりやすく提供し、考えさせるよりも感じさせる(共感させる)コミュニケーションを行うべきだといえます。つまり、その社会問題に関心が低い場合でも、支援される対象(他者)に対する共感を喚起できれば、その社会問題の内実をよく理解していなくとも、購入を促せる可能性がある、という点が重要だと考えられるからです。

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