マーケティングリサーチャーの目線 第1回 調査の善し悪しは設計で決まる | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2013/9/27

マーケティングリサーチャーの目線
第1回 調査の善し悪しは設計で決まる

マーケティングリサーチャーの目線<br />第1回 調査の善し悪しは設計で決まる

リサーチャーはマーケッターの主治医

マーケティングリサーチャーの役割とは、単に「調査票を起こして実査し、決められた期限までに提出する」、というものでは決してありません。中には、データを分析するのはマーケッターの仕事でしょ、とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、マーケッターといえども、出自のわからないデータをいくら集めて、こねくり回したところで、正しい意思決定ができるはずがありません。

私は、マーケティングリサーチャーの役割とは、たとえて言えば、マーケッターの主治医のようなものだと考えています。調査と言う「検査」によって戦略を「診断」し、マーケティング戦略における打ち手である「処方箋」を書くのです。しかし、もっとも大事なのは、リサーチを行う前の「診察」であることを忘れてはいけません。

病院で、「頭が痛いのでバファ○ンをください」と言って、はいそうですかと薬を出す医者はいないと思います。問診や触診などで頭痛の原因を多方面から探り、隠れた病気による可能性がないか、処方する薬に問題はなさそうかを判断し、処置を決めるはずです。

 

一方、マーケティングリサーチはどうでしょう。「明日のプレゼンで必要なんだけど、最近は朝食代わりにバナナを食べる人が80%、ってなデータとれないかね」と言う相談は言語道断として、リサーチャーのみなさんは依頼されたリサーチ案件について、その背景にある戦略上の課題や問題点、過去の経緯、調査で明らかにすべきポイントなど、きちんと「診察」ができていますか。リサーチユーザーであるならば、面倒がらずにきちんと問診に応えているでしょうか。

良い調査と悪い結果

良い調査とは何でしょう。調査の善し悪しは、調査結果をいくら眺めても判断できません。リサーチユーザーにとっては、自分の企画を後押ししてくれるデータが出ることが良い調査かもしれませんが、決してそうではありません。

調査の品質は、バイアスの混入ができる限り少なくなるよう実査をコントロールし、得られたデータから、言えること、言えないことを合理的に判断できる設計になっているか、ということでしか測ることができないと私は考えています。つまり、調査の善し悪しは設計の段階でほとんど決まっているのです。

戦略や企画を立てる人たちは当事者であり、利害関係者ですから、自分たちで調査を設計するとどうしても質問にバイアスがかかってしまう傾向があります。極端な例ですが、以下の質問の例では、どちらがより評価が高くなりそうか、考えてみてください。

かなり誇張した例ですが、誘導的な質問や、バイアスをさりげなく埋め込むことによって、回答傾向はかなり操作することが可能です。企画者の立場では、自分の思いをより詳しく伝えて正確に判断してもらおうという気持ちが働くのでしょうか、知らず知らずのうちにこうした質問をしてしまいがちです。また、データの解釈の上でも、都合のよい解釈が起こりがちです。リサーチャーは、戦略や企画の実行主体に対して、顧客の声の代弁者として第三者的な立場で、データに基づいた冷静な診断を行うことに集中すべきです。

きちんと調査して得られたものであれば、都合のよい結果より都合の悪い結果の方がよほど役に立つ場合が多いのです。

ぜひ身につけてほしい3つの知識

リサーチャーは統計分析ができればよい、と言うわけにはいきません。次回は、リサーチャーに是非身につけてほしい3つの知識についてお話しします。
TOTO マーケティング マーケティング企画グループ 企画主査 小代 禎彦

筑波大学大学院ビジネス科学研究科修士課程修了。1988年東陶機器株式会社(現TOTO株式会社)に入社。総合研究所にて生活研究、住宅設備機器に関連した人間工学や快適性等の環境心理研究に携わる。2001年よりマーケティング部にて全社のリサーチ業務を統括。日本感性工学会理事、首都大学東京非常勤講師。 

TOTOの商品は、「まいにち必ず使うもの」「みんなが必ず使うもの」。また、商品のライフサイクルも長いので、一生の買い物になることも少なくはなく、まさに一期一会。それだけに、生活する人々の意識や行動を注意深く観察し、豊かで快適な生活のためのモノづくり、コトづくりに寄与することがTOTOのマーケティングリサーチの役割と考えています。

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