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未来を創る新たな事業の発射台 パナソニック アプライアンス社 Game Changer Catapult

【後編】未来を作り、自らキャリアを切り開く人材を打ち出すGame Changer Catapult

2020 / 02 / 21

#消費市場,#ブランド メーカー

【後編】未来を作り、自らキャリアを切り開く人材を打ち出すGame Changer Catapult

パナソニック アプライアンス社のGame Changer Catapult(以下GCカタパルト)は、社内事業アイディアコンテストを開催している。「デリソフター」や「OniRobot(オニロボ)」など、新規事業のタネはここから生まれている。事業化するためのひとつのキーワードは「共感」だ。共感を呼ぶアイディアには何が必要なのか、引き続き深田氏に話を聞いた。

「思い」のあるアイディアが「共感」を生む

堀:社内事業アイディアコンテストからはすでに「デリソフター」や「OniRobot(オニロボ)」といった事業が打ち出されています。コンテストから事業化されるものに特徴はあるのでしょうか。

深田:コンテストではエントリーする社員が、新規性のある、未来につながる戦略的な事業エリアで、自分自身が強い思いを持ち実現したいことを提案します。これまで通算で160以上の応募があり、年間で6〜7個のアイディアをSouth by Southwest(SXSW)などの展示会へ出展しています。そこから事業にしていくというスタンスで取り組んでいます。
 コンテストで選ばれたアイディアは、開発やマーケティングの活動費がつき、プロトタイプを作りながら、事業プランを磨いていきます。これを半年くらいかけて展示会へ出展します。

 展示会では各ブースを訪れた人たちに、気に入った、共感できるアイディアのところへ付箋を貼ってもらいます。通常社内で新規事業の提案をするとそれが特に新規性が高く、簡単に市場規模や受容性の想定ができないようなものであればなおさら否定的な目でみられがちです。一方、SXSWのような場に来る人たちは、新しいものやことを受け入れるオープンなマインドがあるので、大変ポジティブに応援してくれることが多いです。
 例えば、「OniRobot(オニロボ)」はおにぎりを海外にも広げていくことを目指したものでしたが、社内会議では「アメリカ人はおにぎりを食べない」と言われていました。ところがいざ出してみると非常に好評だった。そうした雰囲気に触れることも、出展する社員たちのモチベーションを刺激しています。

 展示会に出すことで学んだのは、社会課題解決型の事業アイディアこそが支持を集めるということ。事業パートナーや消費者・生活者とのエンゲージメントを高め、エンパシーを生み出す。エンパシー、つまり共感を呼ぶような事業アイディアであることが大事です。メーカー側が機能を改善・向上し、それを訴求することも重要ですが、新規事業開発では今社会でどんな課題があり、何が求められているのかに向き合って、それを解決したい、助けたいという思いが共感につながります。

 「デリソフター」は、加齢や病気で飲み込むことが難しくなった人、嚥下障害を持つ人のための、食べ物を柔らかくする機械です。これはアメリカでも大きな共感を呼びました。日本同様、アメリカでも高齢化社会は進んでいて、嚥下障害について悩む人は多かった。消費者の共感を生むような事業や商品の開発を、私たちメーカーがあまりできていなかったのではないかという反省もあり、GCカタパルトの活動を通じてユーザー起点で発想することの重要性にあらためて向き合うことができました。


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堀:私たちは調査を生業にしていますが、消費者の悩みや困りごとというのは顕在化していないとも感じています。物質的な豊かさはある現代において、共感を生むことができる課題、ニーズはどのように見つけているのでしょうか。

深田:従来型の調査では出てこないでしょうね。仮説となるアイディアを出して、それを世に問うてみて共感がされるかどうかを掴んでいく。調査の結果にもとづくのではなく、アイディアを出す個人が感じること。「私の家族は嚥下障害で悩んで、その後亡くなってしまった。それを少しでも軽減できればもっと安らかな余生が送れたのかもしれない」というような経験から生まれる、解決したいという思いを形にしていくことで、同じ思いを持つ人が顕在化し集まっていく。

 企業が事業を行う際に、調査結果にもとづいて市場の動きを予測し、できるだけ不確実性を低減し商品化の判断することは常識的ですが、変化のスピードも早く、ニーズも多様化している環境下では将来の予想が難しくなっています。共感を生むためには、その人が本当に思いを持って伝えることが大事です。それができる人にアイディアも集まり、人や技術や資金なども集まるという流れです。

 コーゼーションとエフェクチュエーション的な分け方をするとエフェクチュエーションに近い。やってみた結果をふまえて進む方向を柔軟に変えていく。現状、大企業は計画段階から結果まで、見通してからでないと動かないことが多い。コーゼーション的なこの考え方では、不確実な要素が多い現代での新規事業開発は難しくなっていると言われています。新しいことをするためには、計画性よりも行動、とにかくやってみる。スピード感が必要で、そこに思いが組み合わさると共感が集まり、しかるべき結果に導かれながら進んでいく方が合っている。

過去の経験の蓄積を「アンラーン」して、新たな価値を生み出そう

堀:高度経済成長期以降、日本のものづくりが強かった時代も、携わる人々の思いはあったと思います。今はそれが薄れてきているということでしょうか。

深田:社会課題というものは常に存在していて、それを解決したくないという人はほとんどいないはずです。既存の商品やサービスも何かしらの課題に貢献していると思いますが、その過程で手触り感のある仕事をしている人が少なくなってしまっているということでしょう。企業も規模が大きくなると役割が細分化されますし、ほかにもさまざまな理由で個人の思いは見えにくくなってしまいます。

 当社の創業者、松下幸之助は、貧困などの社会課題を電気技術で解決しようと松下電器を立ち上げました。そこに共感した技術者や資金が集まったことでさらに品質の高い製品づくりができた。その源流は今も受け継がれていますし、今の社員たちもそうしたDNAを持っていると思います。ただ、組織の論理としてあなたの役割はこれですと指定される、ある意味大企業の弊害のようなものはあります。

 職能を分化し、みんなで分担することで、高効率で失敗の少ないオペレーションを早く回していくことで成長できる時代には、その方法で良かった。しかし、未来に何が必要なのかわからない時代には、思いのある人がアイディアを出し、身軽に、素早く、その思いとともに事業を進めてくれる人が活躍していく必要がある。そのためにGCカタパルトを生み出しました。

 GCカタパルトは行動指針に「アンラーン(Unlearn)」と「ハック(Hack)」を掲げています。「アンラーン」というのは開発や営業などの過去の方法論、入社以降学んできたことや身体に染み付いたノウハウを一旦忘れて、今、必要だと思う行動を選択すること。「ハック」とは、手元のリソースが限られるなかで、人も物も活用できるものをうまく使いながら、アイディアを実現していくこと。できないからやらないのではなく、できる方法を見つけていく、ルールが障害になっているのであれば、新しいルールを作る、ゲームチェンジャーになるためにはこの二つが大事だと考えています。

堀:ゲームチェンジャーになろうとする人はすぐに現れましたか。若い年齢の人が多いのでしょうか。

深田:経営幹部には「そういう社員がいたのか」と言われましたが、けっこうたくさんいます。これまで毎年、同じくらいの人数が社内事業コンテストにエントリーしています。他社のケースでは回を重ねると減る傾向は出てくるので、講演会や勉強会を開いて、モチベーションを刺激する取り組みも行っています。
 年齢層は意外に40代も多くて、50代のエントリーもあります。アイディアのリーダーになる女性は増えてきました。GCカタパルトの一期生として事業アイディアの提案にチャレンジし、その後別のアイディアで法人化もした「ミツバチプロダクツ」のリーダーも女性です。

 私たちが「GCカタパルト」と名乗って、ロゴやステッカーを作っているのは、組織ブランディングに挑戦する意味もあります。部署の「機能」を端的に表現する「新規事業開発室」や「イノベーション推進室」という名称をあえて使わず、「ゲームチェンジャー」と名乗って、思いを持った活動としてブランディングしています。参加した社員がステッカーをパソコンに貼り、SXSWのストラップを使っていると、本人はその記憶を常に持ち続けることになります。また、同じステッカーを貼っている社員を見かけると、暗黙のうちに仲間意識が生まれますし、コンテストに参加しなくても、応援する気持ちを表現する手段にもなる。そうした環境づくりは、通常の部署名ではできないことだと考えています。

堀:新規事業は海外の展示会にも出展し、反応を確認されていますが、国内外で事業に対する反応・評価に違いがあるのでしょうか。


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深田:国内外でということではなく、企業のビジョンについてトップからの発信が日本企業では弱いと感じています。その企業がなぜ、何のために事業を行っているのか、現場からの発信はあると思いますが、できればトップが発信してほしい。

 これまで話をしてきたように、事業の前提が大きく変わっているなかで、誰を、どのようにして幸せにしようとしているのか、そこが社会に対しはっきりと発信できていないことが課題だと感じています。1月にアメリカで開催されたCES2020でトヨタ自動車の豊田章男社長が発表した「コネクテッド・シティ」プロジェクトのような発信が大事。具体的な動きはこれからで、おそらくトヨタ自動車1社で実現できることでもないと思います。ですが、発信したことで社内外に動きを生み出せるはずです。GCカタパルトは、これをボトムアップで発信しているので、そうした観点でも活動を見てもらいたいと考えています。

堀:これからの企業は、未来を読み、そこで求められるものを考えるのではなく、未来を作っていかないといけない。

深田:そうですね。現代は豊かで恵まれているとは思いますが、困っていないということはありません。日本は少子高齢化ですが、世界的には人口は増加して食料不足が課題になると言われています。環境破壊、気候変動、水資源の問題や国際紛争など、問題は山積みです。そこで悲劇的な未来が想像されるのであれば、解決できる未来を作っていかなければならない。そのためには自ら動いて世界を変える必要があります。

 会社員も上司から与えられるミッションをそつなくこなしているだけの人は求められていない。社内だけではなく社外、社会にどんなインパクトを与えられるか、その能力が求められるようになっている。残念ながらもはや会社は長い生涯ずっと継続的に守ってくれない時代で、「年功序列で定年後は悠々自適」というライフスタイルも現実的ではないとなれば、自分のキャリアを作るためにも、一旦そういった過去の会社員としてのライフスタイルの考え方をアンラーンして、未来を切り開いてやりたいことをやるしかない。だからこそ会社の枠組みから出ても活躍できる人材が大事ですし、そうした人がこれからのパナソニックのような大企業を背負う存在になる。そのためにもSXSWなどでプレゼンテーションをする経験と、そこにいる同じような志や野心を持った人との交流は重要だと考えています。

取材後記「インサイトスコープ」

Game Changer Catapultは従来の「家電」でななく、「カデン」をカタチにしています。つまりハードウェアそのものより価値を創造しています。
生活者は機能による進化によって喜びは生まれるがいずれそれが普通になってしまいます。しかし体験には共感がうまれ生活は豊かさにつながる。Game Changer Catapultは、生活体験そのものに新しい価値を生み出している組織というより集団と思っています。同じ思いに共感する人たちが課題解決するからこそ、そこに社会も共感するのではないでしょうか。大企業という殻を破るエキサイティングな集団でした。

堀 好伸(株式会社クロス・マーケティンググループ)

深田 昌則
パナソニック株式会社 アプライアンス社
事業開発センター Game Changer Catapult 代表

深田 昌則

堀 好伸
株式会社クロス・マーケティンググループ
マーケティング本部 プランニングディレクター

堀 好伸

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