業界団体設立で成長加速 シェアリングエコノミーの世界 第2回 シェアサービス事業化の鍵は利用者から提供者への転換 | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2018/4/27

業界団体設立で成長加速 シェアリングエコノミーの世界 
第2回 シェアサービス事業化の鍵は利用者から提供者への転換

業界団体設立で成長加速 シェアリングエコノミーの世界 <br />第2回 シェアサービス事業化の鍵は利用者から提供者への転換

空間、移動、スキル、モノ、お金 シェアリングの5つの領域

 シェアリングエコノミーは、シェアする対象によって大きく5つの領域に分類されます。「空間」「移動」「スキル」「モノ」「お金」がそれです。例えば、自宅の空き部屋や所有する空き物件を旅行者へ貸し出す民泊のようなサービスが「空間」のシェア。世界的に展開し、知られている「Airbnb」が代表的な存在です。日本ではこれまで法的にあいまいな状態に置かれていましたが、2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、企業の参入も活発になっていくと予想されます。空間のシェアに関しては、宿泊だけではなくワーキングスペースや駐車場などのシェアリングも含まれます。

 「移動」は「Uber」や「Lyft」に代表される、目的地までの移動を提供するものです。自動車のオーナーがサービスを提供する形もあれば、自動車そのものをシェアするような形もあります。最近、日本でも始まった飲食店の商品を個人が購入代行・配達を行う「UberEATS」のようなサービスもここに分類されます。

 家事や執筆など、自分が持つ技術や知識を個人的に提供するのが「スキル」のシェアです。内容によっては遠隔地でも提供できるため、地方でも利用者が拡大している領域になります。
 「モノ」のシェアは、日本でも利用している人が多い領域だと思われます。個人間売買を仲介する「メルカリ」や、高級バッグをレンタルする「ラクサス」など、参入が多くなっている分野になります。

 「お金」のシェアはクラウドファンディングのような、銀行や金融企業からの支援が期待できないときに、個人からの資金調達を目指すものです。寄付、投資、購入という3つの形があり、目的に合わせて使い分けられています。事業によっては1億円以上の資金調達に成功しているものもありますし、ミュージシャンが作品を作るための資金集めに使うなど、幅広い利用の可能性がある領域です。

 

シェアリングの5つの領域

シェアリングはかっこいい 都心部の若年層の価値観が牽引

 民泊やライドシェアなど、法規制との兼ね合いがあるサービスもありますが、日本でも多くの領域でシェアリングの認知と利用は広がっており、参入する企業も増加しています。一方で、ユーザーの意識は都心部と地方で温度差があるのが実態です。特に20代など若年層においては、ソーシャルメディアでの発信とも合わさって、都心部ではシェアリングの体験を「かっこいい」ものという印象で考えられています。

 世代間でも意識の差は存在していて、高級バッグのレンタルでは、30代〜40代と年齢が上がると恥ずかしさがあるようですが、20代になると逆にソーシャルメディアで自慢するようなこともあります。シェアに対する地域や年齢、性別による意識の差はまだ存在しているようです。

 シェアリングエコノミーは個人間での共有を基本としているので、CtoCで、かつ低価格で利用・購入できることが拡大のひとつのポイントです。これをうまく提供できているサービスは成長軌道に乗っています。そのため、シェアリングのサービスを提供する企業のマーケティング担当者は、自社のサービスを利用する人の増加だけではなく、シェアの対象を提供する人の増加も重視しています。利用者が利用するだけではなく、サービスにメリットを見いだし、自分も提供してみようと感じる。利用者から提供者になる、その「転換率」が非常に重要になっています。事業の種類や企業の考え方によって多少違いはありますが、その転換率が10%位になるというのがビジネスとして成立するひとつの指標だと考えています。

 もともとCtoCのビジネスモデルは収益が上がりにくい特性があります。とりわけ、シェアリングの場合は最初に利用者と提供社の両方を獲得しなければなりません。ひとまず売るべき商品やサービスを用意できるBtoCのビジネスとは異なり、立ち上げ時の難易度は高くなっています。こうした部分もシェアリングエコノミーのひとつの特徴です。

 シェアリングで消費の形が変わると、既存企業のビジネスも変わっていきます。自動車であれば、購入よりも利用に価値が移ると、購入後の乗らない時間に自動運転でライドシェアによって収入を生み出すという発想や開発の方向性が生まれます。そうなると所有のコストが下がりますし、メーカーも売るだけではなく、個人をシェアの提供側と認識し、売って終わり、買って終わりではなく、その先のシェアリングもビジネスモデルに組み込んでいくことが求められますし、実際に増えています。

 企業としても、自社の製品やサービスを独占するのではなく、専門部分は保持しながら、購入者や利用者、個人事業主などと連携する視点が求められます。旅館やホテルを例に考えると、これまでは宿泊も食事も買い物も全て自分たちの施設で完結させようとしてきました。しかし、需要が減り、価値観が変化していくなかで、地域の個人の飲食店や、温泉などの施設と協力し、来訪者をシェアし、地域全体で盛り上げていくことが求められます。こうした考え方にマッチしていたのが民泊だったわけです。

 宿泊に限らず、企業が生き残っていくためにも、シェアリングの考え方がないと難しくなっていくのではないでしょうか。その対象として、住宅や自動車といった金額の大きいものだけではなく、日用品や消費財でもシェアリングを意識することでビジネスチャンスが広がる可能性はあると考えています。

 次回は、2020年に向けた、シェアリングエコノミーの展望と、今後の協会の活動についてお話します。

 

シェアリングエコノミー協会 事務局長 佐別当 隆志

ガイアックス入社。広報・事業開発を経て、2016年1月 一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し、事務局長に就任。2017年3月 内閣官房 シェアリングエコノミー伝道師に任命される。同年5月 mazelを設立、代表取締役社長に就任。トライセクターの政治起業家として、日本におけるシェアリングエコノミーの普及・推進と共助社会の実現を目指し、法規制の緩和やユーザー理解の取り組みに従事。

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