「子育てシェア」が作る高齢化時代の地域コミュニティ 第1回 安全に気兼ねなく子育てを頼り合える「子育てシェア」 | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2018/10/19

「子育てシェア」が作る高齢化時代の地域コミュニティ 
第1回 安全に気兼ねなく子育てを頼り合える「子育てシェア」

「子育てシェア」が作る高齢化時代の地域コミュニティ <br />第1回 安全に気兼ねなく子育てを頼り合える「子育てシェア」

自身の体験から子育て支援の必要性を強く感じる

 私たちAsMama(アズママ)は、地域で交流の場を作りながら、人と人、人と企業がつながることで、お互いに助け合う、誰もが住みやすい社会にすることを目指して2009年に創業しました。そのための事業の一つが、私自身も経験した子育ての大変さをサポートするためのアプリ「子育てシェア」です。今回のコラムでは、この「子育てシェア」についてお話ししたいと思います。

 「子育てシェア」のローンチは2013年ですが、創業した2009年からすでにリアルとウェブを組み合わせた子育て支援のサービスを展開することを決めていました。ただ、当時はサービスを提供することよりも、私たちが認定する、AsMamaの活動を支援する「ママサポーター(ママサポ)」による地域での交流会を実施し、リアルの場で子育て世帯の悩みを聞き、情報を共有しながら、子育て世帯をつなぐための環境づくりを優先していました。システムを開発できるところもなかったですし、安心・安全にサービスを利用してもらうための保険を請け負ってもらえる企業も見つかっていないという事情もありました。それらがクリアできたことで、2013年のローンチにつながりました。

 「子育てシェア」のような仕組みが必要だと感じたのは、私自身の経験が元にあります。私も働きながら子育てをしていて、保育園やベビーシッターなど、さまざまな手段を利用していました。ちょうどソーシャルメディアも普及しはじめたころで、子供を預ける人を探すマッチングサイトを利用したときに、サイト上では「女性」と記載されていたのに、待ち合わせ場所に男性が来たということがありました。

 その人は、保育士資格を持っていたのですが、サイトに記載された性別と違う人が来たという事実に恐怖を覚えるとともに、そんなサイトで子供を預ける場所を探そうとした自分に責任を感じました。当時を含めて、それまでもインターネット業界で仕事をしていた経験のある私でも、そうした体験をしてしまうのであれば、多くの親が同じような不安を抱えながら、こうしたサービスを利用しているのではないかと考えました。

 何かを頼むとき、隣近所や顔見知りなどの方が安心度は高いのですが、保育園で出会うパパ友、ママ友にお願いした場合、「相手の立場を想定すると、面と向かって頼まれたら断りにくいだろうし…」と考えると、やはり気軽に頼むわけにはいかない。そこで、AsMamaで開催している地域の交流会の参加者向けに、簡単な掲示板を作りました。掲示板に書き込むようにすれば、顔を合わさずに依頼し、それを請け負うことができると考えたからです。

 

地域で開催された交流会。オレンジ色のシャツを着ているのが「ママサポ」だ

 しかし、掲示板は、交流会が回を重ねていくうちに、掲示板内に顔見知りではない人が生まれ、それぞれが一方的に依頼と私を頼ってくださいという情報を書き込むだけの集まりになってしまいました。謝礼についても、「保育士資格を持っています、1時間300円」という人もいれば「保育士資格はありませんが子供好きです。1時間3000円」という人もおり、これでは結局、安心・安全には利用できないと判断しました。
 

顔見知りで一定の信頼関係がないとつながらない仕組みに

 掲示板の経験も生かし、顔見知りだけが参加でき、顔見知りでないと情報にアクセスできない仕組みが必要だと考えました。謝礼についてもローンチ当初は自由に設定していましたが、保育士資格の有無や親しさなどで変動すると使いにくさにつながることがわかったため、一律500円と設定しました。切手やプリペイドカードなどの金券で支払う、という案もありましたが、日本国内のどこでも、誰でも利用しやすいのは現金だということに落ち着きました。

 通常、シェアリングやマッチング、ソーシャルメディアのサービスは、登録すればオープンに誰とでもつながることができます。しかし、「子育てシェア」は、登録してもそれだけでは誰ともつながらないだけではなく、運営からアプリ上でつながる相手の提示もありません。

 もちろん、普段から知り合いの方であればお互いに認証の上でつながることもできますが、引っ越してきて近くに顔見知りが居ない方は、「ママサポ」が開催する交流会へ参加することで知人の輪を拡げることができます。「ママサポ」は唯一、「子育てシェア」のなかで保育士資格や居住エリアなど、自身の情報を公開しているほか、面談の誘いや交流会の開催情報を発信できる存在でもあります。

 

顔見知り同士のコミュニティなので、安心感をもって預けることができる

 現状、「ママサポ」主催の交流会は年間2000回ほど実施されています。近隣地域の子育て世帯を集めた交流会で、同じマンションだったり、家が近所だったりという、身近にいる助け合いの関係ができそうな参加者同士を繋いでいます。「ママサポ」が仲人的な役割を果たすことで、リアルに知り合った人と、アプリ上でもつながることができるようになります。

 アプリ上でつながるためには、相手の携帯電話の番号を入力しなければ完了しない仕組みになっています。「携帯電話の番号を教えあうことができる」というハードルを設けることで、信頼感を高めています。アプリで友達になっても、全ての依頼が全ての友達に公開されるわけではありません。発信する際に相手を選ぶことができるので、内容に応じて変更が可能です。また、依頼を受ける側も依頼を受けている人が他に何人いるかが表示されるようになっているので「私しかいないのでは」という心配をせず、できるときにできる範囲で手を差し伸べられるように設計されています。

 次回は、「子育てシェア」が実際どのようなユーザーのニーズに応えているのかをお話しします。

 

株式会社AsMama 代表取締役CEO 甲田 恵子

米国留学を経て関西外大卒。環境事業団での役員秘書兼国際協力企画、ニフティ(株)海外渉外及び上場兼IR主担当、投資会社ngigroup(株)広報・IR室長を経て、2009年(株)AsMamaを創業し代表取締役社長に就任(現任)。2016年より(社)シェアリングエコノミー協会理事着任(現任)。
※総務省主催「地域活性化大賞2017」大賞・総務大臣賞受賞、総務省主催「平成30年度地域情報化アドバイザー」就任、サービス産業生産性協議会主催「第2回 日本サービス大賞」優秀賞受賞、他受賞歴・メディア掲載歴多数。

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