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大幅リニューアルでV字回復
第1回 新しい緑茶カルチャーを創りたい

笠井 隆秀
キリンビバレッジ株式会社
マーケティング本部 マーケティング部 商品担当 担当部長

笠井 隆秀

2016 / 07 / 15

#食品 料理,#ブランディング,#差別化,#消費者行動,#消費市場,#メディア

大幅リニューアルでV字回復<br>第1回 新しい緑茶カルチャーを創りたい

 私たちは、2016年の3月に「生茶」のリニューアルを敢行しました。味もパッケージも変更し、残したのは「生茶」というブランド名だけ、という大幅なリニューアルでしたが、3カ月で750万ケースを出荷し、好調につき年間販売予定を上方修正しました。今年で発売16周年を迎え、出荷量が落ち込んでいた「生茶」のリニューアルを、私たちがどのように進めてきたのか、このコラムでお話したいと思います。

価格競争に陥っていた緑茶市場

 私たちは、2016年の3月に「生茶」のリニューアルを敢行しました。味もパッケージも変更し、残したのは「生茶」というブランド名だけ、という大幅なリニューアルでしたが、3カ月で750万ケースを出荷し、好調につき年間販売予定を上方修正しました。今年で発売16周年を迎え、出荷量が落ち込んでいた「生茶」のリニューアルを、私たちがどのように進めてきたのか、このコラムでお話したいと思います。


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左がリニューアル前、右がリニューアル後。

 「生茶」は2000年に発売を開始しました。当時、ペットボトルを中心とした緑茶飲料市場は、他社のブランドが「昔ながらの製法でいれた伝統的なお茶」といったイメージで圧倒的なシェアを占めていました。「生茶」はそうした市場に、本格的な緑茶でありながら、現代人が飲むシーンを意識した商品として誕生しました。急須でいれて、湯のみで飲むということではなく、冷えたお茶をガラスの器でおいしく飲んでもらえるようなイメージを目指しました。パッケージも茶葉を一枚あしらった、モダンな雰囲気を出したものでした。

 その後、松嶋菜々子さんをCMキャラクターに起用したことなどで人気が加速し、2004年のピーク時には約3600万ケースを出荷。しかし、それ以降は他の飲料メーカーが2004年、2007年にそれぞれ老舗の製茶会社と協力した競合ブランドを発売し、いずれも老舗の名前と「急須でいれたお茶に近い本格的な味わい」や独特なペットボトル形状などで市場を席巻しました。「生茶」は後発のブランドが誕生する流れの中で「生」という文字からくる「スッキリ」「みずみずしい」というイメージが、かえって味わいが薄いようなイメージを持たれるようになったこともあり、2014年には売上げがピーク時の約半分にまで落ち込んでいました。

 このように緑茶飲料市場は、昔からあるブランドが一定の地位を確保しながらも、新規ブランドが誕生するたびに主役が交代してきた市場です。市場全体の規模はそれなりのボリュームがあり、現在も微増という形ですが成長を続けています。ただ、消費者がブランドを選ぶ理由に特別なものはなく「昔から飲んでいるからなんとなく」というような漠然としたものになりがちです。のどの渇きを癒すことができればプライベートブランドでも十分だというのが実状で、コモディティ化が進む市場は、価格競争に陥っていました。各社、自らのブランドの存在理由を模索し、「健康」を軸に一定の地位を回復させたブランドもあります。一方で「生茶」は主役の座から降りて久しく、市場における存在理由が問われるなかで、営業社員の努力と、価格を下げることで店頭に売り場を確保していたというのが2015年までの実態でした。

緑茶の価値向上を目指す

 コモディティ化した市場で価格競争に走ることに関してはやむを得ない面もあります。しかし、それによって商品となる緑茶の価値を向上させることはできません。緑茶は本来嗜好品で、それ自体で立派なカルチャーを成立させられるはずなのに、各社それを実現できないでいました。それならば、私たちがまず価格競争から決別し、売上げを伸ばすだけではなく「生茶」ブランドで新しい緑茶カルチャーを創り出していくべきだと考えました。この志を持ったところから、今回のリニューアルがスタートしました。


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ガラス瓶のように見えるペットボトルのパッケージ。


 お茶のルーツはどこにあるのか、現在の暮らしの中で緑茶はどのようにとらえられているのか。緑茶は、生活の中にもっと豊かな気持ちを提供できるものではないのか。今の暮らしにあった緑茶とは――。これまで生茶のマーケティングにはかかわってこなかったメンバーが集まり、新しい緑茶カルチャーをどうしたら生み出せるのか、議論することから始めました。

 次回は、リニューアルにおいてこだわった「ものづくり」のプロセスを紹介します。

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