- マーケティングコラム
日本の食料自給率の現状は?課題や改善策、食料自給率のもたらす影響について解説
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武田 竜輔
2023 / 07 / 14
「食料自給率」という言葉を耳にする機会は多いでしょう。昨今は食料自給率が低下し続けており、問題視されています。一方で、そもそも食料自給率とは具体的に何なのか、また食料自給率が低いと何が問題なのか、よく分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、食料自給率とは何か、また自給率が低いとどんな影響があるのかについて解説します。
食料自給率とは?
食料自給率とは、食料をどのくらい自給できているかを示す割合です。例えば「日本の国内自給率」だったら、国内で消費されている食料のうち、どのくらいが国内で生産(自給)されているかを指します。食料自給率には「カロリーベース」と「生産額ベース」があり、それぞれ数値が異なるものです。日本においては、食料自給率が減少し続けており、近年問題視されています。カロリーベース
カロリーベースの食料自給率とは、人々に供給している食材のカロリーと、消費されるカロリーに着目した計算方法です。カロリーベースの食料自給率は、以下の計算で求められます。【カロリーベースの食料自給率の計算方法】
1人1日あたりの国産供給カロリー ÷ 1人1日あたりの供給カロリー
『供給カロリー』とは、その人に供給されたカロリーのことで、摂取カロリーや消費カロリーとは異なるものです。上記のような計算で、その人に供給された食品の総カロリーのうち、どのくらいが国産のものだったかが分かります。
生産額ベース
生産額ベースの食料自給率とは、食料の生産額に着目した自給率です。生産額ベースの場合は、以下のような方法で計算します。【生産額ベースの食料自給率の計算方法】
食料の国内生産額 ÷ 食料の国内消費仕向額
生産額ベースでは、畜産業に関する経済的な面が数字でわかります。畜産業は、生産・流通・貿易などさまざまな面でお金が発生する、経済活動において非常に重要なものです。畜産業における経済活動の実態を知るために、生産額ベースの食料自給率を用います。
食料自給率の推移
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html
日本の食料自給率は、徐々に下降しています。上記は平成元年からの食料自給率の推移です。カロリーベース・生産額ベースともに食料自給率が減少していっているのがわかります。昭和40年まで遡ると「カロリーベース:73%/生産額ベース:86%」となっており、カロリーベースの自給率は約60年で半分程度まで落ち込んでいる状況です。
日本と海外の食料自給率の比較
日本と海外の食料自給率を比較してみましょう。まず、日本の食料自給率は令和3年度時点で「カロリーベース:38%」「生産額ベース:63%」となっています。一方、諸外国の令和元年度時点での食料自給率は、カナダは「カロリーベース:233%」「生産額ベース:118%」、オーストラリアは「カロリーベース:169%」「生産額ベース:126%」、アメリカは「カロリーベース:121%」「生産額ベース:90%」となっています。
イタリアやドイツ、イギリスなども80~50%ほどで推移しており、いかに日本の食料自給率が低いかが分かるでしょう。
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html
日本の食糧自給率が上がらない理由
日本の食料自給率が上がらない理由としては、生産者の高齢化と、跡継ぎ問題があります。まず、日本には素晴らしい水産資源が豊富にあり、さまざまな気候の土地が存在するため、いろいろな食料を育てやすい環境にあります。しかし、生産に適した土地は首都圏から離れている場合が多く、地方住民の高齢化に伴って、生産者がいなくなっているのです。さらに、海外から安価な食材が多く輸入されるようになったため、生計が立てられず廃業してしまう農家も少なくありません。生産者の高齢化と廃業が、日本の自給率が上がらない理由とされています。
品目別の食料自給率
(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-01.html)を加工して作成
上記は、令和元年度の品目別の食料自給率です。グラフを見ると、米や野菜、鶏肉などは自給率が高いことが分かります。一方、小麦や小麦は自給率が非常に低く、海外産への依存度が高いと言えるでしょう。品目別に自給率が異なる背景としては、安価な海外産が手に入りやすい品目が多いか、そして人々がどのくらい日本産にこだわって消費しているかなどが影響していると考えられます。
食料自給率を改善する方法
食料の安定供給を維持するためには、食料自給率の改善が必須です。食料自給率が低いと、食料を安定的に供給するのが難しくなります。また、環境保全や地域コミュニティの存続といった面でも、食料自給率の改善は重要です。食料自給率を上げる方法について、以下で解説します。スマート農業の導入
スマート農業を導入すると、高齢・少人数の農家でも農業を継続しやすくなります。スマート農業とは、ロボットやITシステムの導入によって、負担を軽減した形で行える農業のことです。農薬散布ロボットや収穫ロボット、さらに温度・湿度管理システムなどを活用して、農業の省力化・高品質化を目指す取り組みとなっています。最新技術を活用すれば、身体への負担が軽くなるのはもちろん、農業技術を伝承しやすくなったり、より高い品質を安定して維持しやすくなったりするでしょう。日本の農畜産物を国内外へPR
日本の農畜産物を国内外へPRするのも大切です。世界的に、日本の農畜産物は「高品質」「安全」といった面で評価されています。特に、日本の果物や牛肉(和牛)は海外でも人気を獲得しています。しかし、昨今は安価かつある程度の品質の海外産が増えているため、日本のブランドが選ばれにくくなる可能性も十分にあるでしょう。世界中の人に日本の農畜産物を購入してもらうためには、おいしさや品質を広くPRするのが重要です。国内外の人に日本の食材を購入してもらえば、農業が活性化して食料自給率が高まる要因になるでしょう。国内消費の推進
国内消費を推進していくのが大切です。海外消費も大切ですが、海外消費に頼った農業をすると、円高時に海外の人が食材を買ってくれなくなるリスクがあります。貿易面でトラブルがあった際に輸出がストップし、売上が立たなくなるリスクも考えられるでしょう。国内消費を推進していけば、畜産農家は安定した収入を確保しやすく、事業が継続しやすくなります。また、消費者は新鮮でおいしい食材を食べられるようになるでしょう。地産地消を推進すれば、地方活性化や地域文化の伝承などにも繋がります。食料自給率や海外の災害・戦争が生活にもたらす影響
食料自給率が低下すると、日本国民にとってさまざまな影響があります。例えば、2021年ごろからの円安によって、海外産の食品が軒並み値上がりし、人々の生活に大きな影響を及ぼしました。また、飲食店の事業継続が難しくなるケースも少なくありませんでした。また、海外で災害や戦争が発生した場合、今まで輸入していた食料が輸入できなくなる可能性があります。生産量が減るのはもちろん、減少した食料を世界中で取り合う形になるためです。海外での災害・戦争によって、食料そのものが手に入らなくなったり、大幅に値上げしてしまったりするケースも多くあります。食料の安定供給を実現するために食料自給率の向上は必須なのです。
まとめ
日本の食料自給率は下降の一途をたどっています。生産者の高齢化や、海外産の安価な食材の増加、さらに地方の若者離れなどが相まって、生産者が減少しているためです。しかし、日本のさまざまな企業が技術と知恵を結集し、スマート農業を推し進めることで、食料自給率を改善しようとしています。