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シリーズ 消費者エスノセントリズム(2)「消費者エスノセントリズム」とは何か

朴 正洙
駒澤大学 グローバル・メディア・スタディーズ学部
准教授

朴 正洙

2017 / 11 / 16

#生活 文化,#消費者行動,#気づき

シリーズ 消費者エスノセントリズム(2)「消費者エスノセントリズム」とは何か

第1回目では「アメリカファースト」と「消費者エスノセントリズム(consumer ethnocentrism)」の関係について考察しました。「Buy American, Hire American(アメリカの製品を買い、アメリカ人を雇用せよ)」というトランプ大統領の「アメリカファースト」政策は、近年アメリカだけではなく世界的に「自国第一主義」として蔓延しつつあります。
マーケティング関連研究では、「消費者エスノセントリズム」という理論が「自国第一主義」を理解するのに有効です。第2回目では、「消費者エスノセントリズム」に関する説明に先立って、「消費者エスノセントリズム」に関する理論的なベースとなった「エスノセントリズム」に対する理論的考察をしてみたいと思います。

※前回のコラムはこちら⇒第1回目

社会学の分野で著名なSumner(1906)はエスノセントリズムを「われわれ集団があらゆるものの中心であり、他のすべてのことは、それとの関係で計られ、評価されるといったものの見方である」と定義しました。一般に人間は自分が所属している集団(内集団)への帰属意識が強くなるほど、自己と集団とを同一視し、愛着や忠誠心が高まります。また、内集団の構成員を贔屓したり、内集団の規範によって全ての物事を判断したりするといった行動が見られます。一方で、自分が所属していない集団(外集団)に対して偏見、ステレオタイプ的認知、差別的行動などが多くみられるようになります。

「消費者エスセントリズム」に関連する研究は、この「エスノセントリズム」をベースとして、1980年代まで遡ります。1980年代のアメリカ経済は、日本を中心とした多くの輸入品で溢れかえっていました。その結果、自動車・家電などのアメリカ国内産業に大きな打撃を与え、製造業の業績不振が続きました。そのうえ、製造業の倒産や生産拠点の国外移転が続き、従業員の削減も本格化した時期でもありました。このような厳しい状況の中で、生まれた概念が「消費者エスノセントリズム」です。それゆえ、アメリカの自動車産業の中心地だったミシガン州は現在も、他の地域に比べて「消費者エスノセントリズム」の傾向が高く、日本に対する経済を要因とした消費者敵対心(consumer animosity)も確認されています。

消費者エスノセントリズムを、「自国経済のために消費者が抱いている外国製品およびブランドに対するネガティブな反応」と定義づけます(朴 2012)。「消費者エスノセントリズム」研究の歴史を振り返ってみると、人々はなぜ品質が良いのにも関わらず、外国産製品よりも国産製品を購買するのかという自国産業保護と雇用確保という消費者の規範的購買行動に焦点が当てられていました。

「消費者エスノセントリズム」に関する主要な先行研究を考察してみると以下の通りです(朴2012)。

①消費者エスノセントリズム」研究の原型ともいえる研究はShimp(1984)から始まり、Shimp and Sharma(1987)の「消費者エスノセントリズム」に関する測定尺度であるCETSCALEは、アメリカだけではなく、日本・ドイツ・ ロシア・中国・韓国・台湾・香港など世界25カ国の消費者を対象に、その信頼性と妥当性が検証され、消費者エスノセントリズムの代表的な測定尺度として位置づけられて現在に至っています。

②「消費者エスノセントリズム」は性別・年齢・家族構成規模などの人口統計的要因・経済的要因・政治的要因・マクロ経済的要因・社会心理的要因・文化的要因などに影響されます。

③消費者エスノセントリズム的傾向は、国内商品の購買、外国商品の購買、グローバル・ブランド態度、知覚リスク、広告態度、などに影響を与えていることが示されています。

たとえば、アメリカの一部消費者は外国産自動車のほうがアメリカ自動車よりも良いと思いながらも、「Buy American」という広告キャンペーンによって国産車を購入しなくてはならないという社会的規範が想起され、アメリカ車を購入してしまうことは「消費者エスノセントリズム」の結果になります。上記のように、トランプ大統領の「アメリカファースト」の基本的目標は、国内雇用の増加を目指していることからすると、「消費者エスノセントリズム」の典型ともいえます。

第3回目のコラムでは、近年日本の主要な輸出市場である東南アジアにおける「消費者エスノセントリズム」の現状を紹介する予定です。

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