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「MOTIONGALLERY」が目指す「社会彫刻」の形
第2回 適正なプロジェクトがプラットフォームの信頼性を担保

大高 健志
MOTION GALLERY 代表取締役
popcorn 共同代表 / さいたま国際芸術祭2020キュレーター

大高 健志

2018 / 12 / 14

#生活 文化,#ソーシャルグッド

「MOTIONGALLERY」が目指す「社会彫刻」の形 <br />第2回 適正なプロジェクトがプラットフォームの信頼性を担保

 私たちはこれまで、約3000のプレゼンターのプロジェクトを立ち上げてきました。そのうち8割近いコレクターが目標とする支援金額を獲得しています。一方で、半数近くは立ち上げを断っています。

約8割のプロジェクトが支援を獲得

 私たちはこれまで、約3000のプレゼンターのプロジェクトを立ち上げてきました。そのうち8割近いコレクターが目標とする支援金額を獲得しています。一方で、半数近くは立ち上げを断っています。

 プロジェクトの審査をしているわけですが、その基準は明確で「芸術や文化に関わるもの」「社会的な意義のあるもの」が基本となっています。特定の宗教や政治思想に関わるものや、そのプロパガンダになりそうなもの、健康や美容への直接的な効果を謳うプロジェクトは、私たちのプラットフォームで立ち上げることはできません。

 私たちは審査をするだけではなく、プロジェクトを立ち上げたプレゼンターへのコンサルティングも行っています。メッセージの内容や目標とする金額、コレクターを集めるための方法などへのサポートです。そこでは単に「こうすればたくさんお金があつまる」というクラウドファンディングに閉じた目先のアドバイスをするわけではありません。

 そのプロジェクトに必要な金額はいくらかを話し合いながら、それが本当に必要なものなのかを精査したり、メッセージの発信方法や募集中の施策を一緒に考えたりしています。支援してもらいたい気持ちがプレゼンターの独りよがりにならないように、誰に思いを届けたいのかなどは、プロジェクトごとに明確にあるはずです。誰に応援してもらいたいのか、その対象によってコミュニケーションが変わってくるので、そうした点をサポートしています。

 募集期間中の施策としては、プレゼンターによるトークイベントや、プレゼンターとコレクターが直接会うようなイベントも開催しています。プロジェクトの内容によって、イベントを行うか行わないかは変わってきます。イベントに参加できる人、プレゼンターと会った人だけがコレクターになっているわけではなく、コレクターの大半はプレゼンターと面識のない人です。知人、友人がコレクターになるのでは、クラウドファンディングの意味はないので、知らない人の支援をいかに受けるかというアドバイスもしています。クラウドファンディングを通じてファンを作ることは重要です。

 その為には、やはり見知らぬコレクターとプレゼンターの相互の信頼がとても重要になります。クラウドファンディングの信頼性を確保するときに「なぜその目標金額か」は大事です。例えば「世界に通用する映画を作りたいので10万円集めたい」という話では、目標と金額に整合性が感じられません。適正な金額を考えることもプロジェクトへの真摯な姿勢の理解をうながし、これも安心・安全な利用を担保していると考えています。その為、MOTIONGALLERYでは「大きな金額を集めるプロジェクトが正義」という考え方では運営は行なってきませんでした。


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プレゼンターとコレクター、相互からの信頼を担保している



MOTIONGALLERYで支持を集めたプレゼンターたち

 「カメラを止めるな!」はMOTIONGALLERYで資金集めに成功したプロジェクトですが、ほかにもたくさん事例が生まれています。東京都豊島区東池袋に「都電テーブル」という飲食店のオープンを支援するプロジェクトは、プレゼンターがまちづくりの一つとして立ち上げたものです。

 都電荒川線の向原駅周辺に家族で過ごせる場所がない、未就学児童のいる親が働く場所がないと感じていたプレゼンターが、その課題を解決する一つの手段として飲食店をオープンすることを考えました。飲食店で親が働き、そのお店は家族が快適に過ごすことができれば、地域が住みやすくなります。

 コレクターにはリターンとして、「都電テーブル」のドリンクチケットや、お店のテーブルやWebサイトへの名前の記載といったものが用意されました。このプロジェクトは約200人のコレクターから250万円を超える支援を集め、実現しました。

 「都電テーブル」は現在、同様のコンセプトで都内に4店舗を持つまでに拡大しています。拡大していることは結果にすぎません。利益を出すことは継続していくためには必要ですが、そのためだけではなく、社会的に意義があると感じてもらえたことが実現につながっています。

 また、日本で活躍する翻訳家の方が「翻訳家」という仕事に光を当てたいと考え、その仕事を表彰する機会として「日本翻訳大賞」を創設するプロジェクトもありました。これは、開始後1週間で目標を大きく上回る300万円以上の資金を集めることに成功しました。当初は1回分の運営資金を集めるために立ち上げられましたが、初回で3年は継続できる規模の結果になりました。2018年には第4回の開催も決まりました。

 このプロジェクトも、翻訳家が自分たちの原稿料を上げたいということではなく、多くの人が外国の書籍に触れる機会を作っているという翻訳家の仕事の素晴らしさを伝えたいと考えています。そして、その中でも、素晴らしい仕事をした人を同業者も含めた読者で讃え、未来に向けて日本の翻訳文化を充実させようとするものです。


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映画、アートからコミュニティまで約3000ものプロジェクトを支援してきた



 次回は、今後の展望とクラウドファンディングと企業の視点の違いについてお話しします。

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