「MOTIONGALLERY」が目指す「社会彫刻」の形 第3回 参加できると思わせる「余白」が共感を生む | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2018/12/28

「MOTIONGALLERY」が目指す「社会彫刻」の形 
第3回 参加できると思わせる「余白」が共感を生む

「MOTIONGALLERY」が目指す「社会彫刻」の形 <br />第3回 参加できると思わせる「余白」が共感を生む

クラウドファンディングのターゲットは「仲間」になれる人

 前回、私たちはプレゼンターに対してコンサルティングを行っているとお話ししました。プレゼンターにとってコレクターを集める、プロジェクトに賛同するファンを獲得することは非常に重要です。そのためには、誰に向けて、どのような情報を発信するのかを知ることはとても大事なことです。

 こうした動きは、一般的な企業で置き換えるとマーケティングに近いのかもしれません。商品やサービスを、誰に、どのような課題解決のために届けるのか、それを伝えるために適切な方法は何か、企業の方は日々、考えられているのではないでしょうか。その前提として、消費者やターゲットのインサイトの調査・分析も必要です。そこまでしても、目指す結果が出ないという悩みを抱えている方は多いのではないかと思います。

 私たちと企業の大きな違いは、ターゲットの設定にあると思います。従来のマーケティングにおいてターゲットセグメントを分けるときの考え方は、そのセグメントのスケールが選定判断に非常に密接に結びついています。これは、日用品などの大量生産、大量消費社会を前提とした文脈のなかでは有効でした。消費者に情報が届けばコンバージョンはほぼ一定であるという前提があったからです。

 しかし、現代は情報そのものが増え、消費よりもシェアリング、憧れのライフスタイルよりも自分らしいライフスタイルに親近感を覚えるように価値観が変わってきています。コンバージョンのあり方にも変化が起き、近年はリーチよりもエンゲージメントの方が重要になっています。何故ならば、現代のように消費に自分自身の物語が求められて来ている社会では、情報が届いてもコンバージョンが一定ではなくなって来ているからです。

 ではエンゲージメントを高めるにはどの様にしたらいいのか。それには情報の届け方が重要になってきます。情報をその人に意味あるものにするためには、それを伝える側の評価や熱意と、そして「仲間になって」というメッセージの役割が非常に大きい。「カメラを止めるな」があれほど受け入れられたのも、コレクター(クラウドファンディングでの支援者)や実際に映画を見た人が強い熱意を持ってその魅力を伝え、そしてこの映画をもっと周囲に伝える仲間になって欲しいという願いが籠もった拡散だったからです。友人や知人、信頼関係やそれに近い関係性を持っている人からの情報は「自分ごと」になりやすい。そこに「自分ごと」化させるようなストーリー性を持って届けられたときに、大きな拡散力が生まれるのです。

 私たちはその熱を「生産者」「消費者」という二項対立的な発想ではなく、プロジェクトを一緒に作り上げる「仲間」を集めることで生み出そうとしています。プロジェクトの主体となるのはプレゼンターですが、コレクターもお金を出し、イベントなどに参加することで一緒にプロジェクトを盛り上げる「仲間」という位置付けです。そのために、プロジェクトには参加してもらうための「余白」が必要です。どこかに自分が関われそう、関わることに意味を見つけられそうだと感じてもらうことが重要です。

 

集めるべきは消費者ではなく、仲間

 MOTIONGALLERYのターゲットは、仲間になれる人です。なので、必要なことは「買ってください」という”説得”ではありませんし、コミュニケーションもスペックの説明ではありません。プロジェクトに共感してもらうことが大事で、参加した人が社会的な意義を感じ、「自分ごと」として熱狂してもらったときに、その熱が拡散する。その情報は、より自分ごととなりやすい形で人々に届いていくので、伝わり方もより深くなります。

 企業としては、ターゲットに対して、しっかりとしたコンセプトを持つ完成品を届けることが大事ですが、その先の使い方などに消費者側が自由にできる「余白」を持たせることも一つの方法ではないでしょうか。これはクラウドファンディングにも通じる部分だと思いますが、ネットワーク効果がより強力になってきている現代において、これまではその商品が社会に生み出す風景も戦略で規定し広告で実装して来ましたが、風景の有り様は”参加者”に委ね、コントローラブルな範囲をむしろ創造力を引き出す様な余白を消費者に提示するコミュニケーションデザインに割り切り注力する事で、ネットワーク効果最大化を目指していく必要を感じています。

 

これまでのネットワークを活用し映像製作に進出

 これからもMOTIONGALLERYでは、今回のコラムでお話ししてきたことを継続し、プロジェクトを成功に導きたいと考えています。そして、多くのプレゼンターたちが、新しく、驚きのある挑戦をしていることを伝えていきたい。

 その為に、今年から本格的に始まった新しい取り組みが、映画から企業プロモーション映像などの製作を行う映像製作レーベル「MOTION GALLERY STUDIO」です。これまでの7年間で、数多くのエマージングな映画監督や俳優・女優とのネットワークを築いて来たMOTIONGALLERYがプロデュースを行う事で、これまでと違うロジックでグリーンライトが灯り、新しい表現を生み出し見るものに新しい楽しさを届けられる様になると共に、その届け方に「余白」と「参加」を持ち込む事で、映像を通じたクライアント・製作者・視聴者の関係に新たな地平を拓いて行きたいと思っています。

 

自身による映画の制作も始まっている

MOTION GALLERY 代表取締役 popcorn 共同代表 / さいたま国際芸術祭2020キュレーター 大高 健志

早稲田大学政治経済学部卒業後、外資系コンサルティングファームに入社。 戦略コンサルタントとして、主に通信・メディア業界において、事業戦略立案、新規事業立ち上げ支援等のプロジェクトに携わる。その後、東京藝術大学大学院に進学し、 クリエイティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、2011年にクラウドファンディングプラットフォーム『MotionGallery』を立ち上げ、2015年にグッドデザイン・ベスト100受賞 。以来25億円を超えるファンディングをサポート。また、2017年にはマイクロシアタープラットフォーム『popcorn』をスタート。

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