ロングセラーブランドの活性化戦略 第1回 逆境をくぐり抜けた30年の歴史 | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2015/6/26

ロングセラーブランドの活性化戦略
第1回 逆境をくぐり抜けた30年の歴史

ロングセラーブランドの活性化戦略<br />第1回 逆境をくぐり抜けた30年の歴史

当時はマイナーな「粒ガム」で市場参入

「息スッキリ」でおなじみのガム「クロレッツ」が2015年、日本で発売30周年を迎えました。私は2014年の12月から、ブランドマネジャーとして日本市場における製品やマーケティング戦略を担当しています。

クロレッツはここ最近、堅調な販売実績を挙げていますが、この30年の間には様々な逆風や紆余曲折がありました。これから3回に渡って、クロレッツの歴史や今のマーケティング展開について、6月にスタートした30周年キャンペーンを中心に紹介していきます。

30周年を記念した金色のパッケージ(右)は、1985年の発売当時のパッケージ(左)をもとにデザインしたもの

30周年を記念した金色のパッケージ(右)は、1985年の発売当時のパッケージ(左)をもとにデザインしたもの

クロレッツは1951年に米国で誕生し、1985年に日本で発売されました。その頃のガム市場は、最大手が1社でシェア75%を占めるような状況で、製品形態としても板状のものが主流でした。当時、クロレッツのような粒状のものは個包装されておらず「キャンディガム」などと呼ばれ、子供向けのイメージがありました。そのような市場環境に、世界初のスティック型個包装粒ガムとして参入したのがクロレッツでした。

ミント系のガムは、口臭予防というヘビーデューティー系と、ミントの爽快感で口内をスッキリさせるというライトデューティー系のニーズに分けられます。クロレッツは、静岡県でのテストマーケティングの結果、口内をさわやかにする「息スッキリ」を訴求、主戦場である関東での販売を開始しました。

売上高が激減しブランド存続の危機に

口をスッキリさせると人と近づけるので、「キスの前にどうですか」と大人向けのエチケットガムというポジショニングを狙った時期もあります。89年に放映した、尾美としのりさんと岡本麗さんが電車内でガムを食べさせ合うというテレビCMは話題となり「息スッキリ=クロレッツ」という認知度も高めることに成功しました。この成功を足がかりに92年に関西、94年は四国、など全国展開を進めました。

発売当初のCMでは「大人向けのエチケットガム」を訴求した

発売当初のCMでは「大人向けのエチケットガム」を訴求した

こうして好調に認知を獲得することができたのですが、93年頃にタブレット状のミント菓子が台頭し始めました。ガムのように捨てる必要がなく、口をスッキリさせることができるため、クロレッツもシェアを奪われる状況に陥ったのです。そこで発売から10年経った95年にブランドとして初のリニューアルを敢行し、ミント感の強化などを行いましたが、期待したほどの効果が得られませんでした。

ガム市場においても、97年に甘味料として「キシリトール」を使用した製品が登場し、独特の冷涼感や歯に良い成分が含まれているということも相まって、爆発的な成功をおさめました。こうした競争環境の変化の結果、2000年にはクロレッツの売上が激減し、存続の危機に陥りました。

ブランドの危機とも言える状況を乗り越えるために、当時のマーケティング担当者は消費者をもう一度深く理解することを考え、ターゲットとしている30代~40代の男性ビジネスパーソンの行動を徹底的に調査しました。そうして見えてきたのは、通勤時間のビジネスパーソンたちは一度噛みはじめたガムをずっと噛み続けているということでした。

「30分味長持ち」で息を吹き返す

当時のガムはせいぜい2~3分しか味が持たないにもかかわらず、通勤中の電車内で30分間でも1時間でも噛み続けているのを見て、味が長続きさせることを思いつきました。都心周辺の路線の通勤時における平均乗車時間が12分であったことから、12分味が続くガムを開発すればビジネスパーソンにスッキリした通勤時間を提供できるのではないかと考えました。

そうして2002年に味が長続きするガム「クロレッツXP(エクストラパフォーマンス)」をリニューアル発売しました。10年には、消費者調査の結果、消費者の求める味が続く時間が28分であることがわかったため、30分が最も味長続きに求められる時間の期待に応えると考え、「30分味長持ち」を宣言しさらなるリニューアルを行いました。その結果、11年には過去最高の売上を達成できました。

ガムは味がなくなるものというこれまでの常識ともいえる認識を覆し、科学的、技術的なサポートも受けながら、「30分味長持ち」というクロレッツの優位性を提示することができました。以降、味が長続きする製品が次々と発売されていますが、ブランドイメージ調査をしても味が長続きするという点においてはクロレッツが圧倒的に強く、私たちがいち早く味の継続性に目を付け、30分という消費者が最も求めている長さを実現したことが評価されていると感じています。85年の発売以降、紆余曲折はありましたが「息さわやか」、「30分味長持ち」という市場に新たな価値を提供しながら、クロレッツは30年の歴史を重ねてきました。

次回は、クロレッツが30周年を記念して進めている過去最大規模のキャンペーンについて紹介します。

モンデリーズ・ジャパン株式会社 マーケティング本部 シニアブランドマネジャー 森 繁弘

消費財、化粧品関連企業でマーケティングを担当した後、2014年、モンデリーズ・ジャパン株式会社入社。クロレッツブランドの日本におけるブランド戦略、製品開発、販売促進、IMC計画立案などを担当。

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