新たなニーズを発掘する商品ブランド戦略 第1回 働く女性のインサイトに迫る | リサーチ・市場調査・マーケティング

インサイトスコープ
2016/4/22

新たなニーズを発掘する商品ブランド戦略
第1回 働く女性のインサイトに迫る

新たなニーズを発掘する商品ブランド戦略<br />第1回 働く女性のインサイトに迫る

疲れて帰った後のメーク落としは面倒

お湯でメークを落とすことができる化粧下地「フルメーク ウォッシャブル ベース(FWB)」は、2013年2月の店頭発売から間を置かずに出荷個数が200万を超え、ヒット商品になりました。私は発売当時のブランド担当として、商品企画からプロモーションまで手がけました。今回のコラムでは、私たちが「FWB」をどのように開発し、プロモーションを進めたかについてご紹介します。

 

お湯でメークを落とすという世界で初めての商品を開発するきっかけとなったのは、当時一緒に商品開発を担当していた女性の「疲れて家に帰ってからメークを落とすのは面倒」という言葉でした。

帰ってきて、「今日も疲れた!! すぐメーク落としてリラックスしたいけど、メークを落とすのが面倒」とか。「ちょっとそこまで出かけるのに、すっぴんで行くのはどうも……でもメークとクレンジングがめんどくさいな」とか。

一般的に、メーク落としには専用のクレンジングオイルを使います。女性の多くがメーク落としを面倒くさい、肌に負担がかかると感じながらも、せざるを得ない。メークを落とさずに寝てしまうと、翌日の肌のコンディションが最悪なることをみんな知っているからです。

そこで、女性が日々どんな風にメークをし、それを落としているのかについて調査を行いました。対象者の自宅を訪問してメークやメーク落としの様子を見せてもらったりもしました。こうした定性調査のほか、メークに対する意識などを聞く定量調査を組み合わせて、消費者の悩みやインサイトを探っていきました。その結果、6割の女性がスキンケアのなかでメーク落としが面倒だと感じていることや、メーク落としやクレンジングによる肌への負担を気にしていることが分かったのです。

商品

フルメーク ウォッシャブル ベース(FWB)

私たちは店頭などで、メーククレンジング剤で丁寧にマッサージをしてメークを落とすよう勧めていますが、上記の調査でわかったのですが、実際の生活のなかでそこまでしている人は多くありません。働く女性や子育て中の女性は特に、なるべく手間をかけずにメークを落としたいと考えています。女性のメーク落としの実態を知るなかで、丁寧にマッサージしなくても、肌に負担をかけずに簡単にメークを落としたいというニーズが大きいという結論に至りました。

「メーク落としの新習慣」を前面に訴求

簡単にメークを落とせる商品としてどんなものが良いか、議論を進めていくなかで「帰宅して、シャワーを浴びながらメークも落とせるといいのでは」と気づきました。その方法として、化粧下地をお湯で落とすことができれば、その上に重ねるメークも一緒に落とせるのではという発想にたどり着いたのです。この発想が、今回の「お湯で落とせる化粧下地」という商品の大きな特徴にもなっています。

商品を市場に出していく段階で、「お湯で落とせる」という機能をどう伝えれば良いのか、ちょっとした面倒を解消できる商品であることをどう理解してもらうかについて考えました。その結果、お湯で落とすという方法を、「メーク落としの新しい習慣」として訴求することにしました。

重ねたメークをお湯で落とせる化粧下地FWB

FWBのブランドサイト

店頭発売を前に、2012年12月にオンラインショップで先行発売しました。この時期には、ソーシャルメディアなどで拡散されることを狙い、Webを使ったプロモーションに力を入れました。メークした卵にお湯をかけて、メークが落ちる様子の動画をプロモーションの核に展開しました。また、美容系のブロガーの方を研究所に招いて商品のレクチャーを開いたり、私がモデルとなって実演したりしました。私の顔半分に通常のメークを、もう半分に「フルメークウォッシャブル ベース」を塗ってメークし、お湯で落とす実演の様子もソーシャルメディアで拡散しました。店頭発売を前にしたこれらの施策の効果は高く、その結果2013年の3月の当初予定を前倒しして、2月に発売することになりました。

次回は、好調なスタートを切ることができた発売時のプロモーション、その成功の裏側で見えてきた新習慣を定着させるための難しさを紹介します。

株式会社資生堂 トレードマーケティング部 トレードマーケティング室 コラボレートマーケティンググループ 長野 種雅

2000年、金沢大学大学院自然科学研究科修了。同年(株)資生堂に入社。ヘアケア商品の処方開発および基礎研究業務に従事。2010年からはマーケティング部門に異動し、女性用ヘアケア商品・男性用化粧品などの商品開発を担当し、現在に至る。

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