新たなニーズを発掘する商品ブランド戦略 第2回 消費者の「違和感」を見逃すな | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2016/5/6

新たなニーズを発掘する商品ブランド戦略
第2回 消費者の「違和感」を見逃すな

新たなニーズを発掘する商品ブランド戦略<br />第2回 消費者の「違和感」を見逃すな

過去最速でシェア30%へ

「フルメーク ウォッシャブルベース(FWB)」は、自社オンラインショップ(watashi +)での先行発売と卵を使った動画を核としたプロモーションの効果もあり、2013年3月発売の予定を前倒しして店頭発売することになりました。店頭での発売時には、会社一丸となった大規模な店頭プロモーションを実施しています。先行発売時の動画と同じように卵を使い、お湯で簡単にメークが落ちることを端的に理解してもらえるプロモーションを行いました。

店頭発売を前にした流通との商談には私も同行し、実演してみせました。流通の担当者も先行発売の実績や、私の実演動画が拡散していることを知っていたこともあり、私たちの大規模プロモーションの話にも前向きに乗ってもらえました。3月のテレビCM放映と同時に店頭を占拠するプロモーションを行い、ブランドの垂直立ち上げに成功しました。

メーク時

顔写真

矢印

お湯でメークを落とした時

顔写真


大手小売りとの商談時に、長野氏が自らメークをして臨み、その場でお湯で落として見せた。
その結果、その場で大口の商談が実現したという。

このときに私たちが伝えようとしていたのは、お湯でメークを落とすという新習慣でした。テレビCMでも忙しく働く女性や、子どもと一緒にお風呂に入る母親がお湯だけで簡単にメークが落とせることを伝えました。Web、店頭、テレビCMといったプロモーションでメッセージを伝えられたことが、化粧下地のシェアを過去最速で約30%にまで伸ばし、出荷個数も発売から間を置かずに200万個超えの達成につながったと感じています。

「メークが落ちていない」という誤解

一方で、課題も見えていました。まずは、立ち上げの段階でメークをお湯だけで落とすという新しい化粧習慣を伝えるメッセージに偏りすぎたため、お客さまに「本当にお湯だけでメークが落ちるのか?」という疑問を抱かせてしまったことです。そこでお客さまの疑問を払拭すべく、メークがお湯だけで簡単に落とせる事を端的に訴求するテレビCMを制作しました。さらによりインパクトの強い形に進化させたのが、歌舞伎俳優の片岡愛之助さんを起用したテレビCMや店頭ツールによる歌舞伎メークをお湯で落とすという訴求です。

もうひとつ問題となったのは、お客さまの使用感触に関することでした。発売後にお客さまから届いた声で一番多かったのは「メークが落ちていない」というものです。実は、開発段階から認識していたのですが、FWBを使ってお湯でメークを落としたときの肌の手触りと、クレンジングオイルを使ったときのそれは違うということです。

クレンジングオイルを使ってメークを落とす際に肌が「キュキュッ」とする感じが、お客さまが「メークが落ちた」と感じるサインなのです。FWBにはお湯と反応することでメークを落とす効果につながる「ヴェールアクションポリマー」という独自の成分が含まれていますが、このポリマーがお湯と反応するときに、触感として少しぬるつきを感じるため、「メークが落ちていないのではないか」という不安・不信感につながってしまいました。ホントは落ちてるんですけどね。技術的に実際起きていることと、消費者の体験から感じる印象がイコールではないときに、どんなアプローチが必要なのかという視点は、この問題を通じた気づきになりました。

イメージ図

ブランドサイト上で、お湯でメークが落ちる仕組みを説明

FWBはこれまでにない新しい発想から生まれた商品なので、お客さまが使用して下さった印象も従来と違って当然だという考えが私たちにはありました。ところが、それでは済みませんでした。私たちが提供する新しい習慣、そこから生まれる新しい価値を、違和感を覚えることなくお客さまに使ってもらうことが最も重要だったのです。そこにわずかでも疑問が生まれると、消費者は本当にメークが落ちたのか?と不安になってしまうのです。ただ習慣を変えるだけではなく、そのためにお客さまがすでに抱えている不満や不安を解消し、安心してお使いいただく必要があることがわかりました。この点については、今回の商品で一番想定外の出来事で、今後の商品開発やプロモーションにおいての学びになったと感じています。

次回は、男性が女性向けの化粧品を開発するにあたっての難しさ、それをクリアするために取り組んだことなどを紹介します。

株式会社資生堂 トレードマーケティング部 トレードマーケティング室 コラボレートマーケティンググループ 長野 種雅

2000年、金沢大学大学院自然科学研究科修了。同年(株)資生堂に入社。ヘアケア商品の処方開発および基礎研究業務に従事。2010年からはマーケティング部門に異動し、女性用ヘアケア商品・男性用化粧品などの商品開発を担当し、現在に至る。

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