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インタビュー調査におけるモデレーターの意味と役割とは?インタビュー実施のコツも伝授

2022 / 03 / 18

#コミュニケーション,#気づき,#アンケート調査,#リサーチ初心者

インタビュー調査におけるモデレーターの意味と役割とは?インタビュー実施のコツも伝授

グループインタビューにおけるモデレーターは高度な専門性が必要とされます。マーケティング・リサーチの本質を知り、多くの案件を経験しているだけでなく、インタビュアー/モデレーターとして特別なトレーニングを得た者にしかできない特殊技術です。今回は、なぜマーケティング・リサーチのインタビューやモデレーションは高度な専門性が必要なのか?それは具体的にはどんな技術なのか?というお話をしていきたいと思います。調査発注者として知っておいた方が良いことだけでなく、ふだんのコミュニケーションにも役立つスキルやノウハウも含まれていますので、ぜひ最後までご一読ください。

そもそも定性調査、定性情報とは何?

定性調査とは定性情報を得るためのリサーチのことですが、では「定性情報」とは何でしょうか?

定性情報とは「現場」そのものです。言葉だけでなく、息遣いからしゃべる間、しぐさや表情、声の大きさやトーンまで。人は数値化できない多くの情報を全身から発信しています。だからこそ「生の現場」が重要なのです。

そもそも人間の行動や決断の95%は無意識といわれています。

例えば「その商品はなぜ買ったのか?」と直接的に聞いても、ほとんどの方は「なんとなく」と答えるでしょう。しかし実際は、何らかの経験や情報が無意識下に作用し商品選択のキッカケとなっていて、「なんとなく買った」という状況はありえません。

しかし、人は理由を明確に語れるほど器用に言葉を操れるものでもありません。コミュニケーションにおいて言葉が果たす役割は数%程度に過ぎないことも有名な話ですが、言葉以外の目や耳から入ってくる情報の方がその人の本音をうかがいしれたりします。

なので、「なんで?」「なんで?」と質問を重ねたところで、頭で考えた優等生的な回答をするにとどまることでしょう。ここで重要なのは、対象者本人はウソを言っているつもりはないということです。本音というのはそれほど意識の奥底にあるもので、その存在を自覚し、他人に伝わるようにわかりやすくアウトプットするのはとても難儀なものだからです。

だからこそ「対象者が言った発言だからそれが真実」とばかりにその模範解答を鵜呑みにすると、人間の本質をわかっていないということになり、それに基づいて実行されたマーケティング・ディシジョンは残念な結果となることでしょう。

まさしく、そういった人間の無意識化での選択や決断を明らかにするために専門のインタビュアーやモデレーターがいるわけで、彼らは調査発注者であるみなさまのマーケティング課題を解決するために、そのスキルやノウハウをインタビューの場で駆使しています。


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グループインタビューにおけるモデレーターの役割と存在

それでは、モデレーターはグループインタビューにおいてどのような役割があるのでしょうか。

モデレーターの基本的役割は、話しやすい環境づくり・雰囲気づくりのリーダーになることです。場のルールを作り、場のリズムのペースメーカーでもあります。

「モデレーション」という言葉を検索すると以下のように出てきます。

モデレーション(moderation)
1)節度。適度。穏健。中庸。
2)ブログやSNS、インターネット上の記事に投稿された読者によるコメントに対し、管理者が内容をチェックしたり、別の読者が評価付けをしたりすること。また、その仕組み。不適切な投稿を除外するはたらきがある。モデレーション機能。
参考:https://kotobank.jp/word/モデレーション-676216

最近は動画ライブなどでもモデレーターやモデレーションという単語が使われるようになったため、一般的なワードとなってきたのかもしれませんが、マーケティング・リサーチにおけるモデレーションは、元の語源からみても、前述の通り「環境づくり・雰囲気づくり・ルールづくり・ペースメーカー」という意味合いで間違いはなさそうです。


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また、モデレーターは最初の数分~数十分で初対面の集団を1つにまとめる作業を行っています。それが「ラポールの形成」と呼ばれるものです。

初対面同士が顔を突き合わせ、いきなり本音で話すように促したところで、すぐに心理の壁が下がるわけもありません。そこでモデレーターは、会の目的やどんなことをどれくらいの時間行うか等の概要をざっくりと説明することで、まずは緊張や不安を取り除きます。

次は、座談会のルールの呈示。自由に発言してよい、どんな話をしてもよいということをわかってもらうために、話し方のルールを説明し、実際に自己紹介やイントロダクションテーマを話させます。ここでの自由な発言を体感させることで「何を話してもいいんだ。」という安心を実感させます。また前述の「私たちは同じ1つの集団だ」ということもこの段階で認識させていきます。

本題に時間を割いてほしいから前段の自己紹介やイントロダクションは必要ないと思われる方もいるかもしれませんが、この最初の時間でラポールをうまく形成できるかどうかがその後の本題で良い情報が取得できるかどうかに大きく影響してきます。集団が1つになり、何でも話してもいいという安心安全な心理状態に到達したときに、やっとグループインタビューをはじめるスタートラインに立ったといえるのです。

そして、最も重要なことは、モデレーターは「話を聞く」のが仕事だということです。対象者間(場)の自由で活発な発言の中にこそ、発見がありマーケティングへの重要なヒントが隠されているのです。決して「質問をする」ことが仕事ではありませんし、場の主人公でもありません。

理想形は、モデレーターが介在しなくても、集団で自発的に相互に作用しながら話が進んでいくことです。そういう状態に持っていくためには専門的なスキルと経験が必要です。

インタビュー実施のコツ、モデレーターとして大切なこと

クロス・マーケティングには、社内のリサーチャーに向けた「リサーチャーズマニュアル」というマニュアルがあり、その中に「インタビュー実施のポイント」という章があります。「話を聞く」モデレーションを行なうためのいくつもの禁忌事項が記載されています。本来は社外秘のマニュアルですが、今回はその中から内容を一部抜粋してご紹介します。

インタビュー実施のポイント

1.沈黙を恐れてはいけない。

グループインタビューの中で「沈黙」が発生することはよくあります。そのようなとき「私からの問いかけがわかりにくかったのではないか?」と不安になり、質問を重ねてしまう場合があります。しかし、その「沈黙」も定性情報の1つです。その間(ま)にどんな意味があったのか、続く対象者からの発言できっと明らかになっていくことでしょう。「沈黙」を恐れず、「沈黙」も1つの調査結果と捉えることが大事です。

2.発言を途中で遮ってはいけない。

対象者の言葉は最後まで聞きましょう。例え、途中で言葉がつまったとしても対象者自身の言葉で話していただくことが重要です。対象者が言いかけた言葉に助け船を出すことは、対象者自身の意欲を失わせ、不必要な情報バイアスを与えることにもなります。
また、対象者(場)はモデレーターのしぐさや表情に支配されがちです。対象者の発言リズムに合わないあいづちや合いの手もまた、発言を遮ることになりかねないのです。対象者間の活発な話し合いを邪魔しないような存在でいることも大事です。

3.誘導してはいけない。

仮説とは違う話の流れになった際に介在したり、わかりやすい話をしてくれる対象者にばかり話を振ったり、想定したストーリー通りに話が進むように誘導してはいませんか?グループインタビューは、モデレーターが必要な刺激を必要な順序で与えつつ、場でどのように話が進行していくかを観察することが大切です。不必要な情報バイアスを与えないためにも、不用意な質問や介在をしないよう注意が必要です。

4.自分の意見や感情を話してはいけない。

モデレーターの意見や感情は不要です。対象者(場)は思った以上に、モデレーターのしぐさや表情、言動に影響されます。「私もそう思った。」「私はこれ好き。」「○○さんならそう言うと思った。」等というモデレーター自身の感情や意見を乗せた発言は不適切な情報バイアスを与え、モデレーションの基本「適度/中庸」をはずれるものです。モデレーターは常に中立の立場であることを心がけましょう。

5.「要約」をしてはいけない。

対象者の発言を「それはこういう意味ですね。」と言い換えてはいませんか?心理カウンセラーの技術に「要約」というものがありますが、モデレーションではその場で対象者の発言を整理して、要約する必要はありません。むしろ、自由な発言を観察者・分析者が調理するための素材として、そのままにしておくことが大切です。


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ここまでお伝えしたように、モデレーターはあくまで場のムードやリズム、進行のコントローラーであることにとどまり、場に不必要な情報提供や流れのさまたげとなるアクションをしないように注意しています。

そして、これらは、ふだんのコミュニケーションにおいても役立つことではないかと思います。

「あの人は私の話を聞いてくれない。」と思うときは、自分のペースで話せてない、相手から質問攻めにされている、「要はこういう意味ね。」とすぐ解釈されてしまう、「そうそう、私も…」と話をすり替えられてしまう、など思い当たる節はありませんか?

仕事においても、会議の進行だけでなく、営業や人事面談といったビジネスシーン、同僚や友人、家族とのプライベートなコミュニケーションの場にも役立つスキルだと思います。

まとめ

今回お話させていただいたモデレーション・スキルはほんのごく一部です。マーケティング・リサーチに関わるスタッフたちは、多くの専門的な知識や技術を日々学んで、みなさまのマーケティングに役立てていただこうと努力しています。そして、日々の案件を通じて、マーケティング・リサーチの本質と魅力を知っていただき、マーケティング・リサーチが効果的だと実感してもらえるよう、情報発信していきたいと思います。


【参考URL】
https://jmrx-newmr.jp/archives/215
https://krbcg.co.jp/blog/2016/1599
https://ja.wikipedia.org/wiki/非言語コミュニケーション

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