フォーカスグループ(定性調査)の意義と価値 | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2014/7/17

フォーカスグループ(定性調査)の意義と価値

フォーカスグループ(定性調査)の意義と価値

Face-to-Faceインタビューの価値

先ずは懐かしい話からです。今はデプスインタビュー(In-depth Interview/In-detailed Interview)を使うことが増えているようですが、昔はフォーカスグループ(FG)の方がはるかに多かった気がします。なぜかなと理由を考えてみたらすぐに結論が出たんですが、その昔は訪問面接が定量調査の主流であり、訓練されたインタビュアーが肝心な質問(特にOA)では結構細かいところまでプルーブをしてこちらの知りたい所を聞き取ってくれていたのであえてOne-to-Oneのインタビューセッションをする必要がなかったからなのでしょう。それと、当時のインタビュアーの質は相当高かったように記憶していまして、ベテランと云われる百戦錬磨のオバちゃんがたくさんいましたね。

それゆえに、インタビュアーに対する調査前のインストラクション(ブリーフィング)では神経を使いました。特に、大阪で行うセッションでは相当なエネルギーを使いましたね。「あんたな~、こんな聞き方で対象者が答えてくれるわけないやろ、選択肢も良くないしな~、私やったらこう聞くわ。あんたが欲しいのはこういったことやろ!」、万事がこんな調子で進んでいましたからね!このように、彼らが忌憚なくホンネの意見をどんどん繰り出してくるので大変でしたが凄く良い勉強になりました。質問票全体の流れや質問のトーン&マナーもインタビュアーのオバちゃん達にもまれて上手く作れるようになったことは事実だと思います。それに、OA質問でもたくさんの意見を引き出してきてくれるので分析のし甲斐がありましたね。今はCLTなどが良き過去の遺産に触れることのできる機会なんですかね?!でも、ベテランインタビュアーさん達は若者向けやIT系の商品調査には向いてないらしく、なかなか難しいですね、今の世の中は?!

定性調査の定番: フォーカスグループ

少しばかり話がそれたところからスタートしましたが今日は定性調査の話です。定性調査にも様々な手法がありますが、今日はフォーカスグループに絞って話をしましょう。ところで、皆さんはフォーカスグループのことをどの様に呼んでいますか?“フォーカス・グループ・ディスカッション”、“フォーカス・グループ・インタビュー”、“グループ・ダイナミック・インタビュー”、或いは、“グルイン”でしょうか。私自身は“フォーカスグループ”が一番しっくりとくる呼び方だと思っています。私の体験(英語表記)では、たまにFocus Group Interviewという言葉使いも見ましたが、多くは“Focus Group”か“Focus Group Discussion”でした。なぜ、インタビューと云う言葉を使用していなかったのかは後に分かってくるのですが、この話は別の機会にしましょう。
(※フォーカスの意味は二元的:1)特定のテーマに焦点を当てる、2)特定の対象者グループを集めて行う)

ところで、フォーカスグループの本来の形や意味は何処にあるのでしょう?私が考えるに、それは“井戸端会議”であり、或いは、“座談会”、そして“お茶会”ではないかと思います。実際、フォーカスグループの会場で「座談会はこちらです」といった案内板を今でもよく見かけますね。自由な会話の場で他の参加者の刺激を受けながら自分の意見を述べる。特に、形式ばらないリラックスした雰囲気で行われることが重要で、私も実際に何度か参加したことがありますが、欧米(アメリカやイギリス)ではスーパーバイザーの自宅の居間でお茶やお菓子を食べながら行うことが多かったですね。

“井戸端会議”の言葉に代表されるように、フォーカスグループは生活者が日常生活に持っているコミュニケーションの場を人工的に作り出すことで、彼らの普段の考え方や意見(ホンネ)を聞きだすことのできる機会だと思います。ゆえに、如何に自然な形で参加者たちが普段通りの会話を繰り広げてくれるか、そして、その中で参加者同士が他人の情報や意見に反応して変化する態度を観察できるかが大切となるわけです。(グループダイナミズムの結果が見える!)何故かと云えば、人の行動は他人の考え方や意見を聞いて変化した結果として起きる事が多いからですね。自分では関心が無いなと思っていたものでも、同じものを別角度から見ていた友人が別の理解をしていたことを聞き、自分の考え方が変わるような事は日常で良く起きます。現在では、ネット上の“口コミ(レビューサイトなど)”の影響力が大きくなってきていると思われます。この辺りのメカニズムを探るための定量調査(Web系アンケート)は行われているようですが、定性的な調査手法や解析方法が生まれるのも間もなくでしょうね。

ここで少し横道にそれますが、フォーカスグループには“オピニオンリーダー”がいることが多く、彼らの意見に他の参加者が振り回されて真の意見が聞き出せない、或いは、グループダイナミズムが歪むからフォーカスグループは好きではないという意見があります。気持ちは分かりますがこの話には少しばかり異論があります。何故なら、現実の生活でも周りに“オピニオンリーダー”はいっぱいいます。そして、その影響を受ける人もいますし、受けないでしっかりと行動できる人もいます。普段の状況で話ができる事が大切なわけですからこれはこれで意味があるわけです。それでは、こういった“オピニオンリーダー”がいるフォーカスグループを管理する作法では何が大切なんでしょうか?月並みなこととしては「モデレーターが交通整理をして他の参加者にも十分に話させる」ことがありますが、私が注目するのは声に出さずとも自分の意思を表わしている人の表情や行為をつぶさに観察することです。目や首のふりかた、顔の表情でどの様に考えているかが分かります。オピニオンリーダーがどんなに強い事を言っていても“この人は違う意見を持っているな”と云うようなことが分かるのです。これらをモデレーターが見逃さずに上手く言葉として発言させてあげることや、アナリストがレポートで報告することがポイントですね。

この様に、ある新商品の評価に関するフォーカスグループであれば、メーカー(作り手側)が送り出したコミュニケーション(製品やサービスの説明)が個々の参加者にどの様に咀嚼されているかを知ることから始まり、それらが他の参加者の意見でどの様に変容するかのプロセスを一部始終にわたって観察することが出来るわけです。これによってコミュニケーションのキーポイントを確認、或いは、探り出すことが可能になります。これは、AIDMAの中で起きている、自分の持っている情報や理解と他者(世間)のそれを摺り合わせるプロセスであり、AISASではSearchとShareで明確に定義されていますね。このプロセスが生活者の最終判断(Action)に与える影響は大きく、この因子の重要性を紐解ける大きなチャンスなのです。

※AIDMA: Attention(注意が喚起される) ⇒ Interest(興味が生まれる) ⇒ Desire(欲求と摺り合わされる) ⇒ Memory(記憶に残る) ⇒ Action(行動をとる) 
※AISAS: Attention(注意が喚起される) ⇒ Interest(興味が生まれる) ⇒ Search(検索から理解を深める) ⇒ Action(行動をとる) ⇒ Share(経験を共有する)

生活者の見える化の推進者

フォーカスグループはクライアントさんの関係各部署の担当者や経営陣にとっても非常に意義ある調査手法だと思います。日本企業の場合は、特に規模が大きな会社の場合は難しいでしょうが、外資系企業の場合、フォーカスグループにはマーケティング部門のトップは勿論のこと、時には社長まで顔を出すことがあります。なぜって?彼らにとっては自分たちのカスタマー(生活者)を実際に見ることが出来、そして、彼らの考え方や製品に対する意見を生の声で聴ける素晴らしい機会だからです。フォーカスグループが行われている会場に足を運び数時間過ごすことで調査報告書からでは触れることのできない生々しい生活者の姿と接することが出来るからですね。経営陣が見に来ることで、調査担当者にとっては想定外の雑音などが入り煩わしいと感じることもありますが、上手く利用すれば一気に課題解決に向かうことも出来る機会でもありますね。

クライアントと調査会社の接点

調査手法としての素晴らしさと共に、フォーカスグループを実施することで価値が生まれるのが、クライアントさんの調査担当の方やマーケティング関係者とFace-to-Faceで長時間にわたるコミュニケーションをとる事の出来る機会を持てることだと思います。

企画書を作る段階に始まり、ディスカッションフローの確定、モデレーターとのブリーフィングセッション、そして、最も気を使うけど価値があるのが実際のフォーカスグループセッションの観察と終わった後で行われる各セッションごとのラップアップミーティングですね。また、その後で食事を一緒にしたりすることで距離はぐっと縮まります。この長時間にわたって行われるプロセスを共に過ごすことでクライアントさんと調査会社の間に多くのコミュニケーションが生まれ、ビジネス上の課題やネクストステップなどの理解が深まるのです。それと同時に、普段会う機会の少ない、リサーチ担当者以外のクライアントさんの関係者と接点を持つことが出来る非常に有意義なイベントなのです。

これはゴルフと似ていますね。長い時間一緒に過ごすことでお互いの気心が知れ、クライアントさんの抱えるBusiness Case(課題やチャレンジ)を聞いたり触れたりする機会が生まれますし、クライアントさんが何をやりたいのかが理解でき次の仕事がスムーズにいくことが多くなるのです。逆も正なりで、クライアントさん側からも調査会社の担当者のレベルや考え方を理解することができるわけですね。この様に、調査会社のリサーチャーにとってもクライアントさんにとってもお互いに大切で貴重な機会なんです。

それでは、フォーカスグループの良さを知ってビジネスチャンスをどんどん広げてください!今回はここまでにしますが次回の機会があれば「ディスカッションとインタビューの違い」、「モデレーターの技術とマナー」、そして、「実際に起きた成功例と悪例」などをお話ししたいと思います。

株式会社ユーティル取締役会長 “気づき”マーケティング研究所所長 宇田川 信雄

・VICKS(P&G)、AVON、フィリップモリス、クラフトジャパンを経て、05年よりユーティル参画
・食品会社におけるマーケティングコンサル
・NPO関連事業のコンサルティング
⇒ 企画 & 分析 & マーケティングコンサル 

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