多変量解析の活用 | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2015/9/17

多変量解析の活用

多変量解析の活用

「多変量解析って?」

 多変量解析と聞いて、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。
 ポジティブなイメージとしては“応用力の高い”“新しい発見がある”でしょうか、ネガティブなイメージとしては“難しい”“実務に使いにくい”ということなどを思い浮かべるのではないでしょうか。
 我々リサーチ会社が提供する“多変量解析”は、アンケートデータの分析において非常に便利なツールであり、様々なシーンで活用できる一方で、使い方をちゃんと理解していないと、誤ったマーケティングアクションを招いてしまう可能性があります。そのため、企画者・分析者は多変量解析についての正しい理解と説明力が必要です。

「多変量解析を行う目的って?」

 そもそも、多変量解析とは、分析者や企画者の仮説に基づいて、多くの情報(変数)の関連性を明らかにする統計的手法ですが、一言でいうと、「様々な要因が絡み合ったある事象を分かりやすく説明すること」になります。
 たとえば、クルマの評価は、『車両価格』・『エンジン性能』・『燃費の良さ』・『デザイン性』・『安全技術』・・・などいくつかの指標で決まってくることはみなさん想像できると思います。しかし“それぞれの指標がどの程度重要なのか”はすぐにはよく分かりません。そのような「複数の指標(事象)の関係性を分かりやすく明らかにすること」が多変量解析を用いる目的になります。

多変量解析(イメージ)

多変量解析を行う上で注意する3つのコト

 それでは、多変量解析を行えば、あらゆるマーケティング課題・リサーチ課題が明らかになるのかというと、実際はそうではありません。注意しなければならないことはたくさんありますが、今回は私が解析業務を行う上で、特に注意している3つのことについて、ご紹介したいと思います。
 ①分析作業が目的になっていないか?
 ②その結果は使えるものかどうか?
 ③データは丸めてしまっていいものなのか?

分析作業が目的になっていませんか?

 リサーチの仕事をしていると、ついついその先にあるマーケティングアクションではなく、目の前のリサーチ課題を解決することに気が向いてしまうことが多々あります。
 つい先日、あるファッションブランドのリサーチで「重回帰分析(※1)を用いて、認知度がどう影響して、ブランドイメージから構成されているかを見たい!」というオーダーを受けました。一見、「認知度」を“外的基準”、「ブランドイメージ」を“内的基準”として分析をすれば、課題に対しての答えが出そうですが、これは正しいでしょうか?
 答えは“No”です。
 なぜなら、ブランドのイメージは認知後に醸成されるものであり、ブランドのイメージが認知度に影響を与えることは理論上あり得ないからです。
 これは非常に単純な例ですが、このように分析作業を目的としてしまうと、よく考えればありえない構造の分析にも気がつかないことがあります。
 そうならないためにも、我々マーケティングリサーチに携わる人間は、必ずマーケティング課題に沿った分析を考えなければなりません。

(※1)重回帰分析・・・多変量解析のひとつ。一つの目的変数と複数の説明変数で説明・予測できると仮定して行う分析手法。売上予測などに使われる。

その結果って使えるものでしょうか?

 また、多変量解析を行う際に、しっかりとした仮説を持たずに調査・分析をすると、結局使えない結果を導きだしてしまうことが多々あります。
 たとえば、クラスタ分析(※2)を用いて、一般生活者を5つのクラスタに分類してターゲット検討をするとします。しかし、一体どのクラスタがターゲットなのか?また、そのクラスタはどこにいるのか?が分からないままに調査が終わってしまうことがよく見られます。
 リサーチ担当者・企画者に十分な仮説がなかった場合や、マーケティング担当者が自分たちの顧客像をイメージできていなかった場合は、このような結果になってしまいがちです。また、「クラスタ分析をすれば、何かターゲットが出てきそうだ!」と多変量解析に過度な期待をしてしまったときにも、同様のことは発生します。
 実際には、後者のような過度の期待が理由で多変量解析の結果がうまく使えないということが発生しているのが大半のようです。安易に多変量解析を行い、それでなんでも解決してくれるかのような認識は改めなければなりません。

(※2)クラスタ分析・・・多変量解析のひとつ。回答傾向の似たサンプルを集めて、いくつかのグループ(クラスタ)に分類する分析手法。

データを丸めてしまっていいですか?

 多変量解析は、文字通り多くの変数(変量)を使って、ある事象を説明・解明しようとする方法です。この時に、アンケートで聴取した大量のデータを集約したり、一部データを排除したりすることがあります。アンケートで聴取したローデータを原石とすると、多変量解析は、その表面の粗さを研磨する作業に似ています。
 つまり、ローデータ(聴取されたすべてのデータ)を100%反映した結果にはならないのです。時として非常に重要な質問も集約された情報の一部となってしまい、「この質問はピンポイントで分析したいのに」ということが起こり得ます。そういった細かな違いや特徴を分析するには、多変量解析でキレイに研磨されたデータを見るだけでは足りません。ローデータのクロス分析(集計表)を見ることで、表面のギザギザを丁寧に分析してあげる必要があります。

  以上のように、多変量解析は決して万能なものではなく、ケースバイケースで正しく使用する必要があります。マーケティングリサーチに携わる人間は、豊かなマーケティングセンスと正しい統計知識を磨くことが必要不可欠であり、そういったノウハウを持つことが我々マーケティングリサーチ会社の価値であると思っています。

株式会社クロス・マーケティング マーケティング&リサーチ本部 マーケティングストラテジー部 シニアリサーチャー 髙橋 謙一郎

2011年にクロス・マーケティング入社。
リサーチャーとして、IT、自動車などの分野でマーケティング戦略に向けた統計解析業務に携わる一方で、定性情報の数量化やデータモデリング手法の研究・開発を行っている。

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