社会とつながりたい? ひとりでいたい? 揺れ動く若者の心 第2回 生活基盤の不安の中で、男性は内ごもり、女性は外へ | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2013/4/5

社会とつながりたい? ひとりでいたい? 揺れ動く若者の心
第2回 生活基盤の不安の中で、男性は内ごもり、女性は外へ

社会とつながりたい? ひとりでいたい? 揺れ動く若者の心<br />第2回 生活基盤の不安の中で、男性は内ごもり、女性は外へ

“社会(誰かと)”と“ひとり”との間で揺れ動く若者たち。今回は若者の関心事から社会との関係を探ってみます。

若者から漏れる将来への不安の声

日本の経済成長期をほとんど知らない20代の若者。物心ついてからずっと経済停滞の中で生きてきた彼らが、今よりも明日がよくなるという手放しの期待をもつことができないとしても何ら不思議はありません。キリン食生活文化研究所が昨年末、将来への不安を自由回答で聞いたところ、20代からは結婚や就職、特に正規雇用されるかどうかなど、生活基盤に対する不安の声が多数挙がりました。

20代男性はファンタジーの世界に逃避している!?

まず、女性のデータから見てみましょう。20代女性はほとんどの項目で女性の全体平均を上回り、いろんなことに関心をもつ、若者らしい積極性が見られます。「家族との時間」「友人との時間」共に全体を上回り、4割内外が関心を持っているのは、20代男性と異なるところです。比率は低いものの「SNS」への関心も3割弱と、女性全体を大きく上回るとともに、男性20代よりも高くなっています。ここからは、直接、間接を問わず、他者とのつながりに前向きな若年女性の姿が浮かび上がってきます。上位に「ファッション」「スキンケア」「美容」など、必ずしも人に見せることを前提とはしなくとも、自己表現につながりうる項目が並んでいることも、若年女性が他者との関係を意識していることの表れと言えそうです。

一方、20代男性の関心は「ゲーム」「アニメ」が二強で、「国内旅行」や「車」への関心は全体を下回っています。現実と向き合うよりも、ファンタジーの世界に逃避する傾向があるとするのは言いすぎでしょうか。また「友人との時間」は全体より高いものの3割を切っており、社会とのつながりは、外に出て直接とるというよりは、PCやテレビなどのメディア機器を通じて間接的にとりたい様子がうかがえます。ところで「お酒」への関心は男性全体と変わらず、関心という観点からは“若者の”酒離れとは言えないようです。

実収入の低下と「男女の役割分担」の意識にギャップ

このような男女の違いはどこからきているのでしょうか。まずは経済面。総務省の「全国消費実態調査」を見ると、この10年で若年女性の収入が増加する一方で、若年男性の収入は減少しています。これに加えて、男性に経済力を求める構造が未だに強いという、意識面の影響もありそうです。実際に内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」によると、「夫は外で働き,妻は家庭を守るべき」という男女の役割分担への「賛成」は20代男性で55.7%と、20代女性の43.7%を大きく上回り、30~50代男性よりも高くなっています。

実収入の低下など経済面での影響が女性より男性で大きい上に、非正規雇用の増加で将来の生活設計が描きにくい状態にもかかわらず、意識面で女性に経済的に頼ることを潔しとしない若年男性の保守性が、内ごもりを引き起こしているのかもしれません。

次回は、関心のある事柄を「誰かといっしょにやっているかどうか」という視点から、“他者とのかかわり”と“ひとり”についての意識をさらに探っていきたいと思います。

キリン株式会社 キリン食生活文化研究所 所長 太田 恵理子

東京大学文学部社会心理学科卒業、キリンビール、キリン・シーグラム(当時)にてマーケティングリサーチ・商品開発・コミュニケーション戦略などマーケティング全般に携わる。2007年9月、新設のキリン食生活文化研究所所長に就任。2013年1月よりキリン株式会社。 

キリン食生活文化研究所では、食生活を中心とした生活全般の調査研究をもとに、お客様や社会の変化をとらえた情報発信を行っている。また、元気と潤いのある未来に向けてキリングループの貢献のあり方を提案し、お客様や従業員と未来のライフスタイルを“共に創る”活動を行っている。

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