社会とつながりたい? ひとりでいたい? 揺れ動く若者の心 第5回 家族は素の自分に戻れるところ | リサーチ・市場調査・マーケティング

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2013/5/24

社会とつながりたい? ひとりでいたい? 揺れ動く若者の心
第5回 家族は素の自分に戻れるところ

社会とつながりたい? ひとりでいたい? 揺れ動く若者の心<br />第5回 家族は素の自分に戻れるところ

“社会(誰かと)”と“ひとり”との間で揺れ動く若者たち。今回は、“つながり欲求”と“ひとり欲求”に関する若者の生の声から、相反する気持ちの実態に迫ります。

家族との一体感、さらに強まる

前回、若者にとってつながりたい相手が「家族」と「同級生」であるという調査結果をご紹介しましたが、その背後にあるインサイトに迫るために、一定期間コミュニティ上で調査参加者が交流しあうMROC(マーケティング・リサーチ・オンライン・コミュニティ)という手法を用いて、若者の生の声を収集しました。

まず、家族についての想いを語ってもらったところ、“帰るべき場所”、“最後に頼りになる場所”と、家族との強いつながりや絶大な信頼感が読み取れました。“素のままでいられる”、“自分の全部を受け入れてくれる”など、若い男女にとっての家族と過ごす時間の、圧倒的な心地よさが感じられます。

博報堂生活総合研究所の「生活定点」調査によれば、「家族関係がわずらわしいと思うことがある」とするのは、1994年から2012年の間に、20代男性で8ポイント、20代女性で12ポイントと大幅に減少しています。若者と言えば家族に反発するイメージがありますが、以前と比べると、若い人たちの間でも家族との一体感が強まっていると言えそうです。

同級生に対するコメントからは、「話して元気をもらっているのは高校の時に知り合った友達」、「10年来の付き合いなので一緒にいて疲れない気安さがとっても楽」など、気が置けない様子がうかがえます。こうした友人とは「ストレス発散になりリフレッシュできる」、「楽しいし、いい刺激や元気をもらえる」と、積極的に交流を楽しんでいるようです。同級生に関するコメントの中で、特別に聞いたわけではないのに「毎日会社の人に会うのは疲れる」、「社会人になってからは友達ってできない」という発言が出て来ました。ここからも、家族と並んで、“なんでもさらけだせる”同級生が、若い人たちにとって大切な存在であることがわかります。

空気を読む息苦しさから、ひとり行動へ

さらに、日本の悪いところを聞いたところ、「空気を読まなければならないことが多い」、「強い同調圧力がある」、「違う意見を言うと仲間はずれにされる」といった言葉が並びました。学校や会社という体制が多様性を排除し、抑圧的であると感じているようです。実際に昔より体制が抑圧的になったのか、若者の思い込みなのか。いずれにしても“堅苦しい”、“息苦しい”、“生きててめんどくさい”という発言の裏側には、突出しないように常に気を配りつつも、本当はもっと自分らしさを発揮したい気持ちが隠れているように感じました。
一方、以下に示すひとり行動に関するコメントからは、他人への気遣いをしなくて済む気楽さがうかがえます。同調圧力を会社などのオフィシャルな関係だけでなく、プライベートな友人に対しても感じていること、そして人間関係の息苦しさからひとり行動を選択するところが、若い世代の特徴と言えそうです。

家族や気安い友人とは楽しく過ごす。それ以外の人とのつきあいは気疲れするので、ひとり行動を好む。大雑把に言えば、このようになるでしょうか。こうした感じ方は若者に限ったことではありませんが、20代前半の若者は、順位をつけないことを良しとした“ゆとり教育”の中で、陰湿ないじめから身を守るためにも、人から突出することを恐れてきたため、他の年代以上に“空気を読む”ことにセンシティブなのかもしれません。
最終回となる次回は、“社会(誰かと)”と“ひとり”についての私なりの仮説をお話したいと思います。

キリン株式会社 キリン食生活文化研究所 所長 太田 恵理子

東京大学文学部社会心理学科卒業、キリンビール、キリン・シーグラム(当時)にてマーケティングリサーチ・商品開発・コミュニケーション戦略などマーケティング全般に携わる。2007年9月、新設のキリン食生活文化研究所所長に就任。2013年1月よりキリン株式会社。 

キリン食生活文化研究所では、食生活を中心とした生活全般の調査研究をもとに、お客様や社会の変化をとらえた情報発信を行っている。また、元気と潤いのある未来に向けてキリングループの貢献のあり方を提案し、お客様や従業員と未来のライフスタイルを“共に創る”活動を行っている。

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