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社会とつながりたい? ひとりでいたい? 揺れ動く若者の心
第5回 家族は素の自分に戻れるところ
キリン株式会社
キリン食生活文化研究所 所長
太田 恵理子
2013 / 05 / 24
“社会(誰かと)”と“ひとり”との間で揺れ動く若者たち。今回は、“つながり欲求”と“ひとり欲求”に関する若者の生の声から、相反する気持ちの実態に迫ります。家族との一体感、さらに強まる
前回、若者にとってつながりたい相手が「家族」と「同級生」であるという調査結果をご紹介しましたが、その背後にあるインサイトに迫るために、一定期間コミュニティ上で調査参加者が交流しあうMROC(マーケティング・リサーチ・オンライン・コミュニティ)という手法を用いて、若者の生の声を収集しました。まず、家族についての想いを語ってもらったところ、“帰るべき場所”、“最後に頼りになる場所”と、家族との強いつながりや絶大な信頼感が読み取れました。“素のままでいられる”、“自分の全部を受け入れてくれる”など、若い男女にとっての家族と過ごす時間の、圧倒的な心地よさが感じられます。
空気を読む息苦しさから、ひとり行動へ
さらに、日本の悪いところを聞いたところ、「空気を読まなければならないことが多い」、「強い同調圧力がある」、「違う意見を言うと仲間はずれにされる」といった言葉が並びました。学校や会社という体制が多様性を排除し、抑圧的であると感じているようです。実際に昔より体制が抑圧的になったのか、若者の思い込みなのか。いずれにしても“堅苦しい”、“息苦しい”、“生きててめんどくさい”という発言の裏側には、突出しないように常に気を配りつつも、本当はもっと自分らしさを発揮したい気持ちが隠れているように感じました。一方、以下に示すひとり行動に関するコメントからは、他人への気遣いをしなくて済む気楽さがうかがえます。同調圧力を会社などのオフィシャルな関係だけでなく、プライベートな友人に対しても感じていること、そして人間関係の息苦しさからひとり行動を選択するところが、若い世代の特徴と言えそうです。
最終回となる次回は、“社会(誰かと)”と“ひとり”についての私なりの仮説をお話したいと思います。