ネットリサーチの実践手順と留意すべき3点対策 | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2019/5/9

ネットリサーチの実践手順と留意すべき3点対策

ネットリサーチの実践手順と留意すべき3点対策

 ECサイトで買い物をすると「その商品を買った人は、こういう商品も買っています」という表示が出ることがあります。これは蓄積された商品購入履歴データをもとに強い関係性が示される組み合わせの割合などを抽出する手法で、アソシエーション分析といいます。ネットリサーチ調査においてよく使われますが、調査結果をより明確にするためには具体的な調査企画と設計が必要です。高い分析力がなければ、ネットリサーチを実施しても経営判断に的確に反映させることが難しい場合もあるため、専門家を活用するという選択も大切な戦略です。
 

調査企画・設計

 ネットリサーチで得る回答を元に分析を行う場合、調査の対象者はどのように設定するのか、どのような質問項目を設けるかといった調査の設計が重要になります。その際に不可欠なのが仮説の構築です。例えば酒店で商品Aと商品Bの同時購入率が高い場合、店舗内の配置が良いためという仮説、二つの商品の併売力がもともと高いという仮説、コマーシャルのクオリティが高いためといった仮説などを立てます。次に調査対象者の条件設定です。「酒をよく飲む人」よりも「焼酎をよく飲む人」といったように、定義を厳格にする方がよい場合もあります。ただし、逆に対象を広げることで潜在的なユーザー層を明らかにすることもできるため、対象者はどのような調査結果を得たいかによって左右されます。

 標本のサイズも重要です。標本とは回答をしてもらう人を表しますが、分析を行う際に必要となる回答数(回答人数)は一般的に30程度は必要とされています。しかし性別、年代別に詳しいデータを求めるならば必然的に標本サイズは肥大化します。さらに商品を知っている人や購入したことがある人といった条件を加味したうえで調査に必要十分な標本サイズを決定し、最終的な調査設計書を作成します。アソシエーション分析の場合は複数商品の関連性を統計的に導き出すのが目的ですから、複数商品の関連性の分析は必須ですが、さらに精度を上げるのであれば第3、第4の商品との関連性まで視野に入れた調査設計書を作成することで今は気が付いていない新たな可能性に気が付くことができる可能性もあります。もちろん厳密に現在の商品だけの分析を行うのであれば関連性までは求める必要がないため、調査でどのような結果を得たいのか、ということを鑑みた計画を考案していきましょう。

 

実際の調査資料の作成

 調査設計書は、実際に調査を行う際の指標となるものです。調査方法や標本について、調査のスケジュール、分析方法は設計書に一つにまとめておきましょう。そして実際にネットリサーチを行うには、実際に調査に使用する調査票を作成します。調査票作成で大事なのは回答者を惑わせない工夫です。比較的容易に答えられる項目を冒頭に置くといったように回答者が答えやすいよう調査票を工夫することは、ネットリサーチにおいて重要になります。特に複数商品間の関連性をデータとして導く形でを行う場合は、回答者が他の商品と混乱しないよう、順序立てて設問してくことが有効です。

 アソシエーション分析では、例えば商品Aを購入した時に商品Bを購入するか、という、商品Aの購入が条件となったときに、商品Bを購入するかという結論が出るよう明確にしたうえで、その両者の関連性を分析します。まず、全データを分母とし、商品Aと商品Bを含むデータを分子とした数値を求めます。これをサポート値といい、2商品の関連性を示す最も単純な分析値です。

 次に商品Aを分母とし、AとBを含むデータ数を分子として解析をすることで、コンフィデンス値という指標が算出されます。この指標が大きいほど商品Aを買うときは商品Bも一緒に買う割合が高いことが示され、2商品の関連性は強いことになります。しかしもし別の商品を買う人もほとんどがB商品も購入しているのであれば、商品Aとの併売を促進する有意な情報とはいえなくなります。このように、商品Aと商品Bの関連性を調べるにあたってはそれぞれの購入時の行動などを詳しく確認する必要があります。こうした回答者の行動を明確に回答に直結させるためにも、調査票での設問の置き方は非常に重要です。過去・現在・未来という流れで設問を置くことで記憶を呼び起こしやすくし、重要な質問はできるだけ初めに置いておくなど、調査票の作り方にも注意を払いましょう。

 

ネットリサーチ調査時の注意点と対策

 ネットリサーチ調査を実施する際には3点に留意する必要があり、分析評価の際に頭に入れておくことが肝要です。

 第1にインターネットを使えない人のデータは得られないということです。ただし高齢者は対象にできないという結論にはなりません。内閣府が公表している世帯主年齢階層別パソコン普及率をみると、2005年3月時点では全世帯平均56.9パーセントに対し60歳以上は42.3パーセントでしたが、2018年3月時点では全世帯平均69.2パーセントに対し60歳以上61.2パーセントと差は縮まっており、高齢者イコールIT弱者という見方は過去のものになりつつあります。もちろんパソコンが使えない高齢層もいますので、高齢世代のデータが必要な場合は紙を使ったアンケートの併用をすれば精度が高まります。

 第2に回答デバイスを複数化することです。日本の若者はパソコンに弱く、2015年に経済協力開発機構が発表したレポートによると30歳以下の日本人のコンピューター技能は先進国では最低です。しかしスマートフォンならば多くの若者が所有しているので回答デバイスの対象にすれば多くの回答を見込めます。

 第3に調査の分量を考慮することです。設問が多すぎると回答意欲が希薄になるからです。回答数が落ちたり、回答の精度が怪しくなる懸念もあります。特にアソシエーション分析など高度な設定が必要なネットリサーチを行う場合は、ボリュームを抑える工夫をすることで回答精度を上げる効果が期待できます。

 

まとめ

 インターネットを使ったリサーチは時間が短縮できますし経費も抑制できます。しかしネットリサーチには高度な解析手法があり、肝心のリサーチ結果の精度を落とさないような戦略が必要です。何より合理的な調査設計を構築し、回答者の思考を妨げない構成の調査票を作成し、統計学的な手法を正確に使った集計と分析を行うことが重要です。最終的には調査結果をレポートとして取りまとめ、ビジネスの経営戦略や行政の効果的運営に役立てることが求められます。とりわけアソシエーション分析のような複合的リサーチにおいては専門的なリサーチ能力が必要ですので、素人が見よう見まねでやるよりも、高い調査設計や分析能力、評価ノウハウを有するマーケティング専門企業に相談することが推奨されます。
 

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