高齢者ビジネスに必須のシニアマーケティングの要諦 | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2019/1/31

高齢者ビジネスに必須のシニアマーケティングの要諦

高齢者ビジネスに必須のシニアマーケティングの要諦

 先進国の中でも一二を争うほどの高齢化社会である日本において、シニア層をターゲットにしたビジネスは大きく伸びるとの判断から多くの企業が参入を図っています。そして激しい競争の中で浮かび上がってきたのは、正確なシニアマーケティングの重要性と、ITの活用です。2025年には100兆円を突破するとの観測もあるシニア向けの市場規模で成功を収めるには、この両輪を的確に活用することが必須となります。
 

シニアマーケティングとは

 シニアマーケティングとは、シニア層をターゲットとした市場分析を指します。内閣府が公表した平成30年版高齢社会白書によると、平成29年10月1日現在、国内全人口のうち65歳以上の割合は27.7%です。子育てなど教育費もかからず家のローンもない余裕のある高齢世帯はビジネスの視点からは見逃せない重要なターゲットです。利益が見込める高齢層向けの商品やサービスを提供するビジネスを展開するのは当然の経済原理ですが、シニアマーケティングはいくつかの理由で難しい面があり、それだけに精度の高い市場分析が勝敗を分けます。

 市場分析が難しい第1の理由は、データ不足です。シニア向け市場は急激に形成されたため、シニアの消費性向に関する長期データが蓄積されていない面があります。したがって市場調査に当たってはできるだけ新たに多くのサンプルを採取し、精度を高めることが重要になります。第2に完全に確立された市場分析法が定着していないことがあります。多種多様な分析法の中で、事業に最適の手法を決定するコンサルティングが大切です。そのためにはマーケターに現役世代以外もスタッフに加えることで、世代間ギャップの溝を埋めて分析の精度を高めるという手段も有効です。

 第3に市場分析にあたって高齢世代を十把一絡げにしてきた点です。世の中はアクティブな人ばかりではありません。ひとくくりにした市場分析では、精度の高い結論を得るのは困難です。特にこれからの高齢世代は複雑です。60から65歳でリタイアする組と70歳になっても働いている現役組が混在します。比較的裕福な層と、厳しい経済状況の層が混在します。健康度や介護の有無も人生に大きな影響を与えます。この複雑な構造を認識した上で科学的な市場調査法を確立し、正しい高齢消費者像をとらえることが極めて重要になります。言い換えれば、最適のシニア向け市場分析法の活用こそがビジネスで成功するためのポイントと言えます。

 

ターゲティングのポイント

 シニアビジネスを成功に導くにはシニアマーケティングが重要であり、多様な層の中で最適なターゲティングを突き止める事が重要です。ターゲティングとは、狙うべき市場のことです。国内に約3,500万人以上もいるシニアをターゲットにしたビジネスを考える際に、漠然とすべてを対象とするのではなく、もっと絞り込んで狙い撃ちするべき属性を持つシニアに絞った市場はどこなのか、その市場にはどのようなビジネスが適しているかという判断が重要になります。

 シニアを対象としたターゲティングを把握する手法の一つは、対象を4分割して考えることです。まず経済力というキーワードで2分割します。アッパーレベルには資産を保有している、もしくは現役就労で安定収入がある人たちがいます。この層は株式などの資産形成、超高級列車の旅、先進予防医療の活用といった志向が高い傾向があります。逆に年金で生活を賄うなど対極にある層は、趣味のカメラや音楽といった生活を圧迫しない領域にお金を落とします。

 次に健康度というキーワードで二つの層を再分割し、4グループに区分けします。経済力があってかつ健康な層は豪華な海外旅行や高級スポーツジムなどに関心があり、こうした分野の事業者にとって重要なターゲットです。しかし経済力があっても健康に不安がある層は治療投資、介護投資、健康食品志向が強いので、こうしたビジネス企業が狙うべき市場ゾーンです。経済力がなくても健康な層は地域交流事業や生涯学習事業ビジネス企業にとって絶好のターゲットです。経済力がなく健康にも問題を抱えている層は資金フローが厳しいわけですから、ターゲティングとしてのメリットは少ないと判断するのが一般的です。

 このように、市場分析によって狙うべきターゲティングを見定め、その市場に徹底したドリリング戦略を展開して、高齢消費者のニーズに合った商品やサービスを提供することで、ライバルとの差別化を図る戦略が重要です。

 

活用事例・成功事例

 最近ではシニアマーケティングによってカテゴリー分類の精度も上がってきました。人生観、価値観、金銭感覚などは人によって異なります。しかし科学的分析に基づくカテゴリー分類によって、志向する商品やサービスがある程度集約されてきました。従来からのメイン分野である健康、医療、介護などだけではなく、娯楽やIT、衣食住のグレードアップにつながる商品やサービスといったターゲティングが有力になっています。ただライバルの参入がありますから、企業間競争の中でニーズを満足させる商品、サービスの開発、提供が重要になります。そのために意識すべきことの一つは、最近のシニアは決してIT弱者ではないということです。ITを活用したシニアビジネスは大きな成功の可能性を持っているということを認識することが重要です。
 

 最近評価が高い成功例としては、趣味に特化したSNSサービスを展開しているサイト事業があります。従来は新聞社やテレビ局などが主催する歴史や日本舞踊といった文化教室ビジネスに人気がありましたが、参加者が全国的なレベルでつながることができないという点がネックでした。これを一気に解決したのがSNSによるシニア向け趣味サービス事業です。ネットですから国内だけでなく海外で暮らすシニアも参加できますから同好の士の交流はグローバル規模です。最近のシニアは結構ITに強いという着眼点が秀逸です。

 家族を対象に、安全や安心をセールスポイントにしたビジネスも有望な分野です。核家族化が進行して親子が別々に暮らすライフスタイルが常態化し、同時に超高齢化社会が加速している日本という特殊な環境に着目したビジネスが、IoTを使った安否情報サービスです。年老いた親が実家でIoT仕様の電気ポットを使うと、離れて住んでいる家族のスマホに「ちゃんと電気ポットを使用しているから祖母や祖父に問題はない」という情報が届く仕組みで、直接顔を合わせなくても親の安否が確認できるわけです。IoTとは家庭などにあるさまざまな物に通信機能を持たせることで利便性を持たせるテクノロジーです。他にもテレビとネットの連動など、ITを活用した事業の成功例は多く、今後飛躍的に伸びることが期待できる領域です。

 

まとめ

 総務省の調査では60歳から64歳の年齢層のインターネット利用率は2015年末ですでに81.6%もありました。利用率は今後さらに増えることが予想されます。昔のイメージを捨てて、現在はIT活用者であるという認識が確立できれば、ビジネスシーンは一気に広がります。もちろんIT分野以外でもシニアを対象にした市場分析を正確に実施してターゲティングを絞り込めば、倍率が数十倍という九州の超豪華列車の旅や予約が取れない温泉旅館など高齢リッチ層をターゲティングにした事業、アッパーではない層に絞った地域コミュニティ事業などの多様なビジネスチャンスが生まれます。シニアビジネスは魅力度が高い領域ですが、成功の確率を高めるためには適切な市場調査とその解析から導かれるターゲティングに最適の商品やサービス開発が必要となります。
 

このコラムを見た方へのオススメ