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- グローバルコラム
シリーズ 成長市場で勝つ (5)インドにチャンス!「GST」導入によって変わるインドビジネス
株式会社gr.a.m
代表取締役
谷村 真
2017 / 07 / 11
2017年7月1日インドに「GST」が導入されました。GSTとは、Goods and Services Taxの略で物品やサービスに掛かる税金です。インドには国税と州税が存在し、その間には複雑なルールが存在しています。現在導入されたGSTは物品税、付加価値税、サービス税などの間接税をそれぞれ税率5%、12%、18%、28%の4段階に定め、国税や州税間で統一するものです。インド市場には複雑な税制度やそれに伴う煩雑な物流手続き、それに加え賄賂など、多くの問題を抱えており、インドに参入している企業にとってはインド市場の大きな壁に、またこれからインド参入を考える企業にとってもなかなか踏み出せない原因になっていました。
以前のコラムにも書きましたが、インドは「メーク・イン・インディア(インドでモノ作りを)」や「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」、そして「デジタル・インディア」と3つの政策を掲げてモディ政権が誕生し、さまざまな改革に取り組んできました。特に経済改革はモディ政権の真骨頂であり、2015年の直接投資の規制緩和、2016年の高額紙幣の廃止、新紙幣の導入などは記憶に新しいと思います。
今回のGSTの導入は、州ごとにバラバラだった間接税の税率やルールを統一することで、州や都市によって全く違った国のように感じられたインド市場を単一の巨大マーケットとして捉えられるきっかけとなり、インド経済改革の目玉であるといっても過言ではありません。
現在インドの連邦議会は二院制で非常に複雑な構成ですが、簡単に説明すると、国民から直接選ばれた下院議員と各州議会の選挙を通じて間接的に選出された上院議員で構成されています。現在の連邦議会はインド人民党(BJP)などが下院議席の6割以上を占めていますが、上院での議席は2割にすぎません。つまり、いわゆるねじれ国会の状態です。
ねじれた構成の中、さまざまな問題を抱えるインドが憲法を改正し、新制度を導入するには、ある一定の合意を得なければ実現しないものであり、タフなネゴシエーションや調整があった大変な改革であることは容易に想像できます。
それでもなお、合意形成に則って物事が進められたはずなのに、制度が合意される目前の、最終的な決議のタイミングで、案の定賛成しない者が現れるようなのです。今回も3人程度反対がでてきたようです。これは、物事がある程度進められた中で反対をすれば結果的に有利な条件を引き出すことができるという、まさにインド人の利己主義的な側面や交渉好きな性格が現れているように思われます。
今、インドは大きな改革の最中にあります。今までは、インド市場は税制度も物流も、それに加え文化も複雑そうで難易度が高い印象があったと思いますが、我々のビジネスに照らし合わせ好影響を及ぼす機微をいち早く捉え、誰もが苦戦していたインド市場でチャレンジするタイミングが来たのではないでしょうか。
<会社概要>
株式会社gr.a.m
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー24F
03-6859-2252
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