マレーシアの首都・クアラルンプールの市場事情 | リサーチ・市場調査・マーケティング

グローバルコラム
2014/2/12

マレーシアの首都・クアラルンプールの市場事情

マレーシアの首都・クアラルンプールの市場事情

地域住民主催の定期市

クアラルンプール市内の様々な地域で催される定期市。近隣の飲食店経営者や地域住民によって開催され、多種多様な買い物客を惹き付けます。ひとつ通りを渡れば、またひとつ違う国を訪れたような錯覚を与える程に、開催地域ごとの特色を色濃く映し出します。バライエティーに富んだ定期市は、多民族がチャンプルー(ごちゃまぜ)に暮らすクアラルンプールならではの情景を生んでいます。

私の住むエリアでは週に一度、定期市が開かれます。昼間から開催される市の名称は、なんとナイトマーケット。夕方16時から19時あたりが、一番活気に満ちた雰囲気になります。「ナイトマーケット」という言葉からは、ギラギラしたライトアップや客引きの声が飛び交う情景が想像されますが、ここは地域住民主催の日常生活のためのマーケットです。感覚的にはバザーに近いのではないでしょうか。

開催場所となるショッピングモールの中庭には、果物屋台、水着屋台、マ二キュア・鞄・靴・玩具などの雑貨屋台が並びますが、エリアの殆どを占めるのが、近所に住むママ友達が数人で出す食堂屋台。各々がホットプレートや鍋、ガスコンロを並べて、自慢のふるさと料理を振る舞っています。


日本料理のブースでは日本人が、焼きそば、枝豆、唐揚げ、出し巻き卵を販売していました。日本料理といえばお寿司!というありがちなお店ではなく、日本のお祭り屋台にあるような味付けの馴染みある品々は、一般市民が出す屋台ならではですね。

日本料理屋台

どの屋台も自国の家庭料理や馴染みの料理を振る舞っており、そのバリエーションの多さには驚かされます。先述の日本料理屋台をはじめ、韓国料理・インド料理・中華料理・マレー料理・洋菓子・・・と、多種多様な民族・国籍が密集して暮らすこの地域ならではのバリエーションです。この定期市では、食材を調達して帰る買い物客よりも、家族で屋台に食事をしに来る人や、数ある民族料理のお弁当を持ち帰る人々で賑わいます。

左からインドカレー屋、台韓国料理屋台、SATAYz(マレー料理)屋台

観光名所にもなりつつある、有名市場

どの地域の市場も多国籍な品揃えで賑わっているのかといえば、そうでもありません。インド人街の近辺では、当然ながらインド人や頭部をヒシャブ(女性の頭と体を覆う布)で覆ったイスラム教徒の人口がぐっと増えます。道路脇には極彩色の生地市場やヒシャブ売り場が軒を連ね、インド料理の店舗が多く立ち並んでいます。

この地域の定期市では、圧倒的にインドカレーやナンを売っている露店が多く、雑貨屋台も多くがヒシャブや布、布を飾るアクセサリーを売る店舗で占められます。さすがインド人街といったところでしょうか、インド色満載です。

インド人街から暫く歩くと頭上に提灯が飾られた通りが見えて来ます。観光地としても有名なアロー通りです。この周辺は中華系マレー人や中国人ばかり。看板や電飾が盛り沢山な通りの様子も行き交う人も、中華一色です。

連日連夜、数々の中華料理露店が競い合うように客を呼び込む情景は、クアラルンプール随一の賑わいで人気を集めています。観光客向けと思われる屋台の数々ですが、実はその地域に住む人々の毎晩の大事な食事の場なのです。「食材を購入して自炊するよりも、近所の中華料理店で大皿を頼んだ方が安い!」と大家族で住む中華系の人々は言います。マレーシアは一食あたりの外食費が大変安く、日本の約三分の一の値段で満腹になれるお店も少なくありません。

現在は観光地としても人気のあるインド人街やアロー通りですが、これらの地域や市場が観光地として注目されているのは、観光地用として用意したお客様用市場ではないからだと感じます。生活に根付いて発展した市場の歴史から、必然的に特異な地域性が生まれたことを感じさせる街全体の雰囲気があるからこそ、現地を知るための場として注目されているのではないでしょうか

駐在員妻御用達!ハイクオリティなショップカー

地域に根ざしたナイトマーケットや定期市が賑わう一方で、外国人が多く居住するエリアでは「ショップカー」と呼ばれる移動市場が大人気です。このショップカーには食堂はなく、食材販売だけをしています。陳列される商品は、生鮮食品、パン、お菓子類など品揃えが多く、しかも高品質と定評があります。

野菜や果物が豊富

しかし、人気の秘密は何よりもその利便性!ショップカーは数カ所のコンドミニアムを定期的に巡回し、駐車場にお店を展開します。コンドミニアムのエントランスを一歩出ると、安心・高品質なお店が目の前にあるという高待遇です。買い物客の中には、一気に多めの食材を買い込む者もいて、そんな買い物客の為に部屋へ宅配するサービスまであります。駐車場に出る必要すらなく、電話一本でいつもの食材を部屋へ運んでくれると常連客から聞いた時には感心しました。

日本人居住者が多いので、日本の調味料も販売している

また、絶妙なのはショップカーが巡回するコンドミニアムの選出と、その時間帯です。ショップカーは、子供のいる駐在員家族がより多く住むコンドミニアムを15時から17時をコアタイムに巡回します。この時間は子供のスクールバスの出迎えがある時間で、子供の迎えのついでに買い物が出来、手のかかる園児や赤ちゃんが居る家庭は、宅配を利用して部屋まで運んでもらえるからです。タイミング良く、手間無く購入できる食材が高品質とくれば、人気が出ない理由はありません。

言う事なしのショップカーですが、ローカルの市場と比べると値段は当然高めです。しかし、外国人居住者の多いクアラルンプールエリアの集客には、利便性の魅力のおかげで、価格の高さは大した障害にはならないようです。かく言う私もその利便性に魅了された買い物客の一人であるのは言うまでもありません。

トラックの荷台が店舗で

客層も風情も異なる市場は、近隣住民の快適な生活の為に開かれる生活市場です。また地域によっては、海外からの住人に向けた利便性の高いサービスも開発されています。このような多様性は、多国籍民族を懐深く包括するクアラルンプールの特質をそのまま表している様に感じます。土地土地に住む生活者のニーズに合わせて多種多様な市場や業態が展開されるクアラルンプール、これからどのようなマーケットが誕生するのか、ますます楽しみです。

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