- マーケティングコラム
ターゲティングとは?メリットや設定方法・役立つフレームワークを紹介
2024 / 07 / 30
「ターゲティング」とは、コンセプト決定などの際に用いられるマーケティング手法です。商品やサービスを使用するであろう消費者(ユーザー)を年齢層や性別、職業や年収、家族構成(未婚・既婚など)で分類し、ターゲット(標的)とするグループを絞り込んで行くことを言います。この「ターゲティング」を正しく行うことで、「どのような消費者に対しての商品なのか」を明らかにします。今回は、ターゲティングについて実施するメリットやターゲットの設定方法を解説します。あわせてターゲティングに役立つフレームワークについても紹介します。
ターゲティングとは
ここでは、ターゲティングとはどのようなものか詳しく解説します。マーケティングにおけるターゲティング
「ターゲティング」とは、コンセプト決定などの際に用いられるマーケティング手法です。商品やサービスを使用するであろう消費者(ユーザー)を年齢層や性別、職業や年収、家族構成(未婚・既婚など)で分類し、ターゲット(標的)とするグループを絞り込んで行くことを言います。この「ターゲティング」を正しく行うことで、「どのような消費者に対しての商品なのか」を明らかにします。例えば、自社で洗顔フォームを開発・製造することになったとします。その製品は「男性向け」でしょうか、それとも「女性向け」でしょうか。「若い世代向け」でしょうか、それとも「年齢を重ねた人向け」でしょうか。これらをきちんと整理し、設定することで、商品のコンセプトがはっきりしてきます。
逆に、このターゲティングが曖昧なまま商品を開発してしまうと、消費者は商品を手にした際、「この商品は一体、どこの誰に向けたものなのか」が分かりません。自分の求める商品であるかどうかを判別しにくくなってしまいます。このため、購買につながりにくく、結果として「誰にも求められない」状態に陥ってしまう可能性もあります。
ペルソナ設定との違い
ターゲティングと混同しやすい語句として「ペルソナマーケティング」というものがあります。市場における消費者のニーズや趣向が多様化した90年代以降に、マーケティングにおける「ターゲティング」の派生手法として、生まれたものです。「ペルソナマーケティング」は、実際の消費者層を分析して大まかにグループ分けしてターゲット(標的)を絞る「ターゲティング」とは異なります。
この手法は、「ペルソナ」と呼ばれる架空の(実際に存在しそうな)消費者を細かくキャラクター設定するところから始まります。架空の消費者に、商品がどのように求められるか、どのように使用されるべきかなどをシミュレーションしていくための手法です。
「ペルソナ」を設定することで、開発・製造を行うプロジェクトメンバーたちの「消費者認識」を一致させることができ、商品の方向性をより正確に定めることが可能となります。
関連ページ:「ペルソナマーケティングとは?メリットや設定方法を解説」
STP分析との関係性
マーケティングを考える上で代表的なフレームワークのひとつであるSTP分析にはターゲティングの項目が存在します。S(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)がそれぞれの項目です。セグメンテーションでは、ターゲットとなる顧客の年齢や居住地、勤務地、趣味趣向など細かな評価軸から細分化していきます。セグメンテーション次第で、マーケティング戦略が大きく変わるため、慎重に行わなければなりません。
ターゲティングでは、自社の強みが活かせる市場を決定します。競合他社と比較して、自社が優位に立てる部分に絞っていくのが狙いです。
ポジショニングでは、ターゲティングで決定した市場で競合他社を調査し、自社の立ち位置を分析し、差別化する方法を考えます。
このようにターゲティングのためには、STP分析をすることが重要なのです。
関連ページ:「STP分析を活用したビジネス展開の利点と留意点」
ターゲティングを行うメリット
ターゲティングを実施することは、企業にとって大きなメリットがあります。ここからは、代表的なメリットを3つ紹介します。商品・サービスの強化ができる
ターゲティングでは、顧客の趣味趣向を分析し、顧客ニーズをより深く理解できます。この情報を基に商品やサービスを設計できるため、自社が販売する対象を強化することにつながるのです。一方、ターゲティングを実施していない状態では、顧客像が明確にならず、商品やサービスを設計するときに、どのようなことが求められているのか、どのようなブランディングが求められているのかがわかりません。
ターゲティングを行い、顧客像を浮き彫りにし、顧客が望んでいる商品、サービスを的確に作り出せば売れるようになります。また、何より顧客満足度も高まり、アップセルやクロスセルの提案も行える状態になるのです。
自社商品やサービスを気に入ってリピートしてくれる顧客は、企業や販売する商品に対してファン化している可能性も高く、顧客単価アップも狙えるようになるでしょう。商品やサービスの強化は、継続して購入してもらえる基盤となり、売上向上はもちろん、継続した売上の安定性も得られます。
的確なマーケティング戦略を実施できる
ターゲティングをしない状態では、的を絞れずさまざまな層に向けて発信することになります。マーケティングで発信するメッセージも大雑把なものとなり、誰に対しても刺さらない、意味のない内容になってしまいかねません。この状態では、十分なマーケティング効果が得られず、費用ばかりがかさんでしまうでしょう。
ターゲティングを的確に行えば、ターゲットに合わせたプロモーションが可能になり、自社の商品やサービスに興味を持ってくれる層に対して、効果的なメッセージを確実に届けることが可能です。
費用対効果が高まるのはもちろん、自社の商品、サービスを購入する新規顧客が増えるきっかけになるため、売上に直結するでしょう。
見込み客を獲得できる
ターゲティングを行うことは、自社の商品やサービスに関心があるターゲットを浮き彫りにしていくことです。どのような会社でも、マーケティングにかけられる費用には限りがあります。ターゲティングをすれば確度の高い潜在的な顧客に対して効率良くアプローチできるため、経営資源の無駄を省けるのも大きなメリットといえます。
潜在的な顧客に向けて、ニーズに沿った商品やサービスの訴求ができれば、見込み客を獲得できる可能性が格段に向上するでしょう。
ターゲティングを行い、マーケティングを実施することで、より多くの見込み客が商品、サービスを知り、新規顧客となれば売上の向上につながります。新規顧客の獲得を課題にしている企業も多いですが、正しいターゲティングを行うことで、解消されることも多いのです。
ターゲットを絞り込む3つのステップ
では、ターゲットをどのように絞り込んで行けば、消費者を正確に把握し、購買につなげることができるのでしょうか。ターゲティングの理想とは、突き詰めていけば「実際に商品を購入してくれる実在の人物」を見出すことにあります。次に実際に、消費者を絞り込むための3つのステップを紹介します。
「属性」で分ける
最初のステップとなるのが「属性」です。「属性」とは、ひとりの人間が多角的に関係しているジャンル、グループのことです。前章でも例に挙げた、年齢層や性別、職業、家族構成、所得などによって構成されており、すべての消費者はこの「属性」において細かく分類することができます。
居住地域で分ける
次のステップでは、消費者の居住地域などで分類していきます。消費者の住む地域によって生活環境や寒暖差、気候、利便性などはこと細かに変わってきます。これらの要因が商品の購買を決めることもあります。
消費者の心理的・行動的特徴で分ける
最後に、消費者の心理的・行動的な特徴において分類します。例えば、「商品を購入する際、店頭でじっくり選びたいか」「それともネットで必要なものを手軽に買いたいか」が分かりやすいでしょう。ほかにも「パッケージを重視するか」「価格を重視するか」「同じ商品を長く買うタイプか、それとも新製品を積極的に買うタイプか」などが当てはまります。
これらの特徴は多岐にわたり、また開発側が正確に把握することは難しいですが、3つのステップのうち、購買に関して特に重要性を持つ項目です。このカテゴリに対しての対策が、ターゲティングにおいて最も重要な意味を持ち、購買につなげることのできる有用な情報となります。
ターゲティングを考えるときは6Rが有効
ターゲティングの効果を最大限に引き出すためには、「6R」と呼ばれるフレームワークが欠かせません。「6R」は、「市場規模」「優先順位と波及効果」「成長性」「到達可能性」「競合状況」「測定可能性」の6項目の英語の頭文字から取られています。これら6つの項目を判断基準として、自社の商品やサービスは、どの市場で勝負するのが良いのか検討してみましょう。
市場規模【Realistic Scale】
自社が販売する商品、サービスの市場規模を確認するフレームワークです。市場規模を確認すれば、最低限の顧客を獲得できる市場であるかどうかがわかります。市場規模を把握することは、事業として成立するかしないかを決める重要な項目です。各省庁や業界の団体、民間調査会社が発表している信憑性のあるデータを基に、慎重にチェックしていきましょう。
このとき、本当に商品やサービスが売れる市場であるのかはもちろん、利益が出るのかを考える必要があります。
例えば、市場規模が大きいほど、顧客数は多くなると考えられますが、その分競合他社も多くなるのです。戦略として規模は小さくとも、競合の少ないニッチな市場を狙うのもひとつの方法として覚えておくと良いでしょう。
優先順位と波及効果【Rank/Ripple Effect】
ターゲティングした対象が市場の中で、どの程度の優先順位があるのか、またどれほど関心があるのかを分析するフレームワークです。市場ごとに優先順位を付け、重要性を検討しましょう。例えば、インフルエンサーが活動している市場や各種メディアが取り上げている市場であれば、波及効果を得やすいため優先順位が高いといえます。市場規模自体が小さくても、人が影響を受けやすい環境が整っているのであれば、優先的なアプローチが効果的です。
市場に対して優先順位を付ける場合は、男女比率や年齢、興味分野や分布エリアなども把握した上で分析する必要があります。
また、優先度が高い市場でも、狙う顧客層に対して自社が販売する商品やサービスが合致していなければ、興味関心を持ってもらえず売上につながりません。
成長性【Rate of Growth】
ターゲティングした市場に、どの程度の成長性が見込めるのかを分析するフレームワークです。市場全体での売上高をはじめ、販売された商品の種類やシェア、トレンドの傾向を確認して、これからの成長性を分析します。現状の市場規模が小さくても、これから成長が見込まれるのであれば、早期参入しておくことで先行者利益の獲得も見込めるでしょう。判断材料が少なく、成長性が十分に判断できない場合でも、できたばかりの市場であれば将来の期待値は高いといえます。
一方、市場が成熟しきってしまっている場合は、今後の成長率の伸びに期待できないばかりか、衰退する可能性もあることを覚えておきましょう。
到達可能性【Reach】
ターゲティングした市場に、自社が販売する商品やサービスが到達できるかを確認するフレームワークです。魅力的な商品、サービスであっても顧客へ届けられなくては意味がありません。対象のターゲットの顧客リストを持っていない、地理的に届けにくいなど不利な状況に陥っているのであれば、自社の戦略をもう一度考え直す必要があります。
競合状況【Rival】
ターゲティングした市場に存在する、競合他社を確認するフレームワークです。競合が多ければ多いほど(レッドオーシャン)、成功する確率は低くなるので、できるだけ競合数が少ない市場(ブルーオーシャン)を選ぶのが良いとされています。競合状況を確認する際には、競合数だけでなく、他社の売上や利益率、販売ルートや営業方法、顧客に提供しているサポートの状況なども調査します。これらの情報を自社と比較して、差別化が図れるか、優位性を持てるかを判断しましょう。
測定可能性【Response】
ターゲティングした市場の、測定可能性を確認するフレームワークです。顧客からのフィードバックや傾向、購買力のほかにも、PDCAを回して運用できる市場かどうかもチェックします。測定可能性がないと、マーケティング戦略を立てて実施しても、顧客への効果や反応が測定できず、改善もできません。どのような方法で測定するかもあわせて検討しておきましょう。
ペルソナ設定の方法
しかし、上記に挙げた方法で消費者を絞り込んでも、絞り込んだ条件に該当する消費者像がぼんやりとしてしまうことがあります。例えば、都内に住む20代の未婚女性が、どのような嗜好を持ち、どのような商品を好むのかまでははっきりとはわからない場合。この情報のみで商品を作ってしまうと、どの層に向けた商品であるかが消費者に伝わらず、結果購買されない商品が販売されてしまうことになります。
そこで、先ほども触れた「ペルソナ」を設定することが有効になってきます。「ペルソナ設定」では、実際にサービスを使うであろう消費者を架空に設定し、製造側が把握する重要なユーザーモデルとして活用します。
では実際に「ペルソナ」を設定するにあたり、どのような手順を踏めば良いのかを見ていきましょう。「ペルソナ設定」のためには、以下の項目を埋める必要があります。
「ペルソナ設定」のための項目には諸説あり、「これを必ず守らなくてはならない」ということはありません。しかし、基本的には商品(サービス)を利用するために有用な情報はすべて設定しておく必要があります。この「ペルソナ」という、実際に存在しそうな消費者像を設定することで、消費者目線での商品づくりやアプローチが可能になります。
「ブランドターゲット」の獲得
このように、消費者情報の分類や「ペルソナ設定」で詳細な消費者像を設定することにより、「ブランドターゲット」を獲得することができます。「ブランドターゲット」とは、“ブランドが意思を持って提供する価値”と自身の価値観が合致している消費者(ロイヤルユーザー)」のことです。企業にとっては商品に対して好意的な目線を持ってくれたり、口コミなどで他者に薦めてくれたりすることで消費者層を広げてくれる大切な存在です。
この「ブランドターゲット」を生み出すためには、初動である「ターゲティング」が重要になります。「ターゲティング」により、どの層のどんな人に向けて商品を作るかを大まかに決定し、次の「ペルソナ設定」で対象を詳細に絞ります。その結果、生み出された消費者層に対して的確なアプローチが行えれば、ロイヤルユーザーの獲得が容易となり、購買層の拡大につながるのです。