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世界中で注目されている音声メディアの現状と今後の可能性 ~中国の音声メディア事例から考える~

谷村 真
株式会社gr.a.m
代表取締役

谷村 真

2021 / 05 / 14

#コミュニケーション,#SNS,#トレンド

世界中で注目されている音声メディアの現状と今後の可能性 ~中国の音声メディア事例から考える~

近年、各国で音声メディア市場が広がりを見せています。2021年1月アメリカの音声SNS「Clubhouse」が日本に登場したことで一気に注目を集めました。日本ではまだ広く活用されているとは言えない音声メディアですが、実は既に数多く存在し、それぞれの特徴をもって展開しています。代表的なものとしては、インターネットラジオ「radiko」、インターネット音声配信システム「Podcast」、Amazonのオーディオブック「Audible」、音声配信プラットフォーム「Voicy」などが挙げられます。
今回は、今後ますます拡大が予想される音声メディア市場について、ビジネス、私生活の両側面で日常的に音声を活用している中国の様子を紹介したいと思います。

世界の音声メディア浸透状況

中国のご紹介の前にまず、世界中で利用されているPodcastの利用実態から各国の音声メディアの浸透度合いを見てみましょう。米国の調査会社Global Web Indexによると、2018年、世界各国における「毎月Podcastを聞いているユーザーの割合」は、カナダが36%と最も高く、次に中国(29%)アメリカ(26%)と続きます。一方、日本はわずか8%にとどまり、人口から考えるとやはり中国の利用者が最も多いという結果になります。

【Podcastを月に一回以上聞く人口の割合】


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出典:
https://s3.amazonaws.com/media.mediapost.com/uploads/MagnaPodcastingReport2019.pdf

中国における音声メディア市場の現状

中国では、あらゆる場面で音声サービスが活用されています。2000年初頭の中国では、ビジネスにおいてチャットが活用され始めました。しかし当時は、仕事をチャットで行っている様子に各方面から賛否両論があったのも事実です。私も、中国人メンバーが仕事中ずっとチャットをしている様子を見ながら、仕事なのかプライベートなのかよくわからない時期を過ごしていたことを思い出します。

このように仕事でもプライベートでも活用されていたチャットが、2011年頃、スマートフォンの発展を見越して音声チャットに切り替わり、中国では音声でやり取りをすることが当たり前になりました。このような背景から、中国では他の国に先立って、既に音声を活用したサービスやアプリに慣れ親しんでいたことがわかります。


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中国の音声メディア市場のはじまりは20世紀末です。1997年に初めてオンラインラジオを運営する企業が現れ、2004年には中国初のPodcastが登場しました。そして、2011年頃のインターネットの普及を受けて、各企業が続々と音声サービスを開始し、現在の音声メディア市場を構成するプラットフォームが立ち上がりました。その後、2015年頃からさらにマーケットが急成長し、各プラットフォームの特徴や特色、それぞれのユーザー層が確立されていきました。

中国の音声配信プラットフォームは、個人ユーザーの投稿により構成されるUGC(User-generated Content)型と、専門の制作チームが作ったコンテンツで構成されるPGC(Professionally-generated Content)型の大きく二種類に分けられます。UGCプラットフォームは誰でも気軽に投稿でき、主な収入源はライブ配信中の投げ銭となります。一方、PGCプラットフォームは投稿の制限も多く、また独自の有料コンテンツで収益を得ているため、UGCプラットフォームと比較するとユーザーと配信者とのインタラクションが薄い傾向にあります。

中国の調査会社iiMedia Researchによると、2019年の中国における音声コンテンツユーザー数は全人口の約35%の4.89億人に達し、2020年には5.42億人、そのうち有償サービスを利用したことがあるユーザーは全体の7割を超えています。


参照元:
https://www.afpbb.com/articles/-/3315517
https://www.iimedia.cn/c400/75159.html


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中国の音声配信プラットフォーム

中国音声メディアの特徴としては、そのバリエーションが豊富であるということが挙げられます。例えば、大手音楽配信アプリであるQQ MusicやNetEase Cloud Musicは音楽配信以外に、Podcastや個人の音声コンテンツ配信サービス、音声ライブ配信サービスを提供し、最近ではオーディオブックまでも提供しています。ただ、近年音声メディア市場において大きなシェアを占めているのは、オンラインのみの音声コンテンツを配信するプラットフォームです。ここでは、中国音声市場の主力となっているプラットフォームを月間アクティブユーザー数(以下、「MAU」)の順に紹介したいと思います。

◆PGCプラットフォーム【himalaya FM(ヒマラヤ)】
ヒマラヤは、2013年にサービスを開始したプラットフォームです。MAUは年々増加し、2020年10月には1.1億MAUに達した中国最大の音声配信プラットフォームです。小説やコンテンツの版権を取得し音声化した作品を提供するPGC戦略をメインにおいており、サービス開始からわずか半年後には1000万ユーザーを達成し、今では5億人ほどのユーザー数を誇っています。

ヒマラヤで配信する音声化した小説は、オーディオブックのみならずキャラクターによる音声ドラマなど数多く存在します。オンライン小説から、『三体』のように出版されたヒット小説まで、多様な音声小説を提供しています。今では小説以外にも、語学、教育、お笑い、Podcast、ラジオ、ニュースなど、幅広いジャンルでユーザーの好みに対応しています。

更に、有料コンテンツも多種多様で、有料会員限定の小説解説や教育レッスンなど「知識の有料化」に力を入れています。有料サービスは2018年に開始以来、400万人以上が登録しています。PGC以外に個人ユーザーが配信するコンテンツやライブもあり、配信者は600万人以上になります。音声ライブ配信では、好きな配信者に投げ銭を贈ることが可能です。

PGCプラットフォームであるヒマラヤは、優れた配信者やコンテンツを確保することを最も重要視しており様々な手を打っています。2018年1月には1年間で音声コンテンツの提供者に30億元(約450億円)の支援をすると発表し話題となりました。現在、トップ配信者は月に260万元(約4,100万円)のレベニューシェアを受け取っていると言われています。

◆PGCプラットフォーム【Qingting FM(チンティン)】
チンティンは、2011年にサービスを開始、2020年5月時点のMAUは2215万人とヒマラヤに続く市場シェア第2位のPGCプラットフォームです。チンティンはヒマラヤと同様PGC+UGCの戦略をとっていますが、ハードウェアで差別化しています。配信者、ユーザー、ハードウェアの3者で市場をつくることを「オーディオフルエコシステム(音頻全場景生態)」と呼び、そのMAUは1億人以上となります。

また、コンテンツ面でもヒマラヤと差別化しており、音声小説がメインのヒマラヤに比べ、有名な知識人やコメンテーターとコラボし、人文・歴史・経済コンテンツに力を入れています。また、2021年2月より、月額会員に加入すれば、全プラットフォームのコンテンツを聞けるといった内容のサブスクリプションサービスを開始しました。これは月額料金+コンテンツ料金という課金方式を取っている音声市場において大きな話題となりました。業界2番手ということもあり様々な差別化戦略をとってサービスを展開しています。

◆UGCプラットフォーム【Lizhi FM(ライチ)】
ライチは、2013年にサービスを開始、2020年5月時点のMAUは1797万人と市場シェア第3位の音声配信プラットフォームです。上述した2つのプラットフォームとは異なり、業界唯一の上場企業であり、個人配信コンテンツをメインとするUGC戦略をとっています。

競合他社と比較すると、コンテンツは多種多様で、ユーザーコミュニティの雰囲気を強調しており、ユーザーとクリエイターの間に音声による感情的な結びつきを作れるのがライチ独自の魅力です。ユーザー年齢も若く、2019年9月時点では60%のユーザーが1990~2000年生まれの若者でした。一言でいえばライチは音声コンテンツのみのYouTubeのようなイメージに近いかもしれません。

また、上記3社とは別に独特なカテゴリーで成長を遂げ注目されている音声プラットフォームを紹介したいと思います。

◆PGC+UGCプラットフォーム【猫耳FM(猫耳)】
猫耳は、2014年サービスを開始したACG(Anime・Comic・Gameコンテンツの中国での通称)関連コンテンツを提供する音声配信プラットフォームです。2018年にbilibili(中国のniconico動画)によって買収されました。市場シェアはまだまだ小さいですが、音声配信プラットフォームの中ではかなり独特な存在です。

ネット小説原作の音声ドラマや音声付漫画、音声ライブ配信などに力を入れ、BL(Boy’s Love)小説の音声ドラマ、男性向け・女性向けの音声ライブ配信のようなサブカルチャー・コンテンツがメインとなります。音声コンテンツは静止画付で再生し、niconico動画のようにユーザーのコメントが画面に流れる機能も付いています。

2018年に大ヒットしたネット小説『殺破狼』の著作権を取得し、声優によって音声化し、有料コンテンツにしました。これが中国の商用音声ドラマの先駆けとなります。猫耳は上記メジャー3社ほどのMAUに到達するのは難しいと言われていますが、サブカルチャーに特化することでニッチでコアなロイヤルティの高いユーザーを獲得できる市場に参入していると思われます。


参照元:
https://www.qianzhan.com/analyst/detail/220/200703-3f3f3762.html
https://www.sohu.com/a/448215892_114819

まとめ

中国では「知識の有料化」という概念が近年浸透しつつある中で、音声配信サービスもその流れに乗ってより身近なものとなり、マネタイズを実現しています。一方、日本においては、ラジオや音楽配信以外の音声配信サービスは認知・定着度はまだまだ低く、音声配信プラットフォーム業界は多くの参入を伴う戦国時代に突入しているのではないでしょうか。

日本では“柳の下の2匹目のドジョウを狙う”と言うことわざがあるように、今後、多種多様なニーズに対応した多くの企業が音声メディア市場に生まれ、業界の形が確立されていくと考えられます。1匹目、2匹目のどじょうになるべくしのぎを削りながら業界を大きく作り上げていくことでしょう。今後も新たな市場ができあがる過程を辿る音声メディア業界から目が離せません。



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