日本の“当たり前”が通用しないグローバル調査 | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2015/12/17

日本の“当たり前”が通用しないグローバル調査

日本の“当たり前”が通用しないグローバル調査

日本のアンケート回答者は緻密で辛抱強い

日本人の緻密な国民性は、アンケート調査においても同様の傾向があります。日本のアンケート回答は、世界でも稀にみる正確性があるという定評があります。国や地域によって差はありますが、他国で日本と同じような質の回答はまず期待できません。質問内容が難しい調査や質問時間が長い調査は、対象者自身が回答する方法(ネットや自記入)では困難な場合も多く、インタビュアーが対面式で質問する面接調査手法を使ったり、質問方法を変えたりするなど、様々な工夫が必要になります。

また、一般に海外でのオンライン調査の推奨最長回答時間は15分程度といわれています。15分を超えると脱落率が増えるといわれています。日本では30分以上の調査も珍しくありませんし、実際に海外調査をおこなう際も20~30分程度の調査をおこなう場合もありますが、回答精度や回収が長引くなど、問題が多くなるのは避けられません。

いきなり消費者調査に入る前に、デスクリサーチで市場理解を

歴史・文化的背景や市場構造を理解せずに単体で消費者にオンライン調査をおこなっても、解釈に苦慮する場合も少なくありません。そうならないためには、特定カテゴリーの市場規模や主要プレイヤーなどを事前に把握する必要があるのですが、ネット検索や文献等で比較的安価に入手できる環境が整っている日本と違い、他国ではそう簡単ではありません。

新興国の多くは市場概況や公的機関による統計的データの整備自体が不十分ですし、欧米諸国では、市場概況もカスタム調査でおこなう、もしくはレポートがあっても1部購入するのに数十万円以上かかる場合も珍しくありません。

カンボジア市場レポートの事例

カンボジア市場レポートの事例

定性調査で意識や態度を知ることが重要

各国で統一した質問項目を使って一律に量的調査をおこなうことで容易に答えを出すことができるのであれば効率的ですが、ネットで定量調査をおこなって横並びで多国間比較をしようとしても、実際は簡単にはいきません。国によって考え方も感じ方も大きく異なるので、それぞれの数字の背景を知らずに比較することはできないからです。

そこで、グループインタビュー訪問インタビューなどの定性調査を事前に行って、各国の調査対象者の意識や態度を知ることが役に立ちます。その国の人々が生きている場所をみて、特徴を肌で感じることが、数字を解釈する際の助けになるからです。

<カンボジアの事例>
クライアントの依頼でカンボジアを含む数カ国で家庭用品に関するFGIを実施。
他国と異なり、カンボジアの対象者はあまり発言も積極的でなく、また壮年の大人でも自分さえ良ければいいというような自己中心的な考え方をする人が多かった。
過去の歴史を調べると、虐殺などの歴史的経緯からそうした自己中心的考えにならざるを得ない背景が浮かんできた。
定性調査で意識や態度を知ることが重要(イメージ)

意図を明確に伝えるため、翻訳や原文作成にも最大の注意を

言葉の違いも大きな壁となります。日本語にある表現も、外国語でそれを表す単語があるとは限りません。味覚、感触など感覚に関する日本語の表現は他国に比べて豊富であるといわれています。

日本語:味にキレがある
英訳:Smoothness? Clearness? Freshness?

逆に日本語では一言だけなのに、外国語ではニュアンス毎に細かく分かれている表現もあります。

日本語:安価な
英訳:Affordable? Reasonable? Cheap? Inexpensive? Costeffective?

また、日本語の原文の品質は翻訳のクオリティにも影響します。回答者は外国人であり、外国語に翻訳されるのだということを意識する必要があります。日本語の原文が不明瞭だと、翻訳ではどうにもなりません。

日本文化の背景を知らなければニュアンスを伝えられない場合もあります。

<実際にあった翻訳が困難な文例>
①初期のピンボールや祭りでよく見かけた射的などの日本の縁日の遊びを体験できる
【問題点】
「日本の祭り・縁日」を知らない人はピンとこない。
【改善例】
日本の伝統的な祭りではピンボールや射的等の移動アトラクションが期間中店を出します。それを伝統的な祭り以外の時でも、体験することができます。

②良質な水田地帯として有名だから良質な日本酒も楽しめる
【問題点】
日本酒の原料が「米」と知らないと、「水田」と「日本酒造り」の因果関係が分からない。
【改善例】
日本酒の原料となる良質な米が収穫できる水田があり…

困難を乗り越えて得る果実は大きい

このようにグローバル調査においては「当然(背景を)知っているだろう」「文脈を汲み取ってもらえるだろう」という回答者への期待はできません。それらを念頭に調査設計を行い、設問文を考え、意図通りに翻訳されているかをチェックするなど、様々なプロセスが欠かせないのです。場合によっては調査手法そのものを見直す必要もあります。また、調査結果を読み解くにあたっては、対象とする国の国民の意識や態度を正しく理解しておかねば、誤った結論を導いてしまう危険があります。

しかし、これらの困難を経ることによって、当座のマーケティング課題を解決するだけでなく、その国や国民性の理解を深めることができます。海外展開を検討している企業の方には、ターゲットの国に進出していく際の大きなヒントを得るための過程と理解していただければ幸いです。

株式会社クロス・マーケティング リサーチプランニング部 ゼネラル・マネージャー 中澤 優

英国系調査会社で海外調査を含む外資系グローバル企業の定性・定量調査の経験を経て、
2013年クロス・マーケティングに入社。
日本からのアウトバウンド案件の企画・実施・分析業務を中心に活動中。 

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