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STP分析を活用したビジネス展開の利点と留意点

堀野 正樹
株式会社みらいマーケティング本舗 代表取締役
「経営者の右腕」として企業のECビジネス支援、ブランディングやWebマーケティング代行業務を行う。「マーケティング設計図」「ブランドストーリー」「発注力強化」から構成される独自メソッドを実践。上場企業から中小企業まで十数社に対するマーケティング支援実績あり。
マーケターとして約20年の経験があり、メーカー勤務時代にはマーケティング責任者として7年間で売上を3.5倍の70億円に成長させた実績を持つ。

堀野 正樹

2022 / 12 / 16

#リサーチ初心者,#市場調査

STP分析を活用したビジネス展開の利点と留意点

企業が新商品やサービスを展開するうえで、自社の特長やその製品の市場における立ち位置を明確にしておくことは、マーケティング戦略において非常に重要となります。その際に活用できるのが「STP分析」です。この記事ではSTP分析をビジネスで活用する際のメリットや注意点について解説していきます。

STP分析とは

「STP分析」とは、市場におけるマーケティング活動を効率的に行うための分析フレームワークです。

STP分析はマーケティング論で有名なフィリップ・コトラーが提唱したもので、「S」はSegmentation(セグメンテーション)=「市場の細分化」、「T」はTargeting(ターゲティング)=「狙うべき市場の決定」、「P」はPositioning(ポジショニング)=「自社の立ち位置の明確化」をそれぞれ指します。この3つの観点から、自社の新商品やサービスの市場価値を把握し、マーケティング戦略につなげていくのです。

「セグメンテーション」では、膨大な市場顧客をいくつかの切り口でグループに細分化します。それにより各セグメントのニーズを明確にできるのと同時に、市場の全体像を把握することができます。主要な指標として、年齢、性別、世代構成、家族人数など、人が持つ基本情報を基本にした「人口統計的変数」、居住地域など地理的な要因に絡む情報が基礎になる「地理的変数」、人の志向やライフスタイル、性格的特性など個々の心理状態に根差した情報を使う「心理的変数」、買い物をする動機や頻度、購買パターンなど個人的意識や行動に関する情報を分析する「行動変数」の4つがあります。

「ターゲティング」では、自社が狙うべき顧客層を絞り込んでいきます。このとき、「市場規模は十分か」「自社の強みが発揮できるか」「将来性はありそうか」など多角的に分析することが重要です。また、セグメンテーションの結果と組み合わせることで、「無差別型」(セグメントされた市場の違いにかかわらずすべての市場に供給する手法でユーザー数が多い消費財や食品などに適している)、「差別型」(セグメントされたそれぞれの市場に対し、料金設定や機能性を変えて商品販売を行う手法)、「集中型」(1つもしくは限定的な市場に集中してマーケティングを行う手法で、特に規模やリソースが小さな企業やニッチな商品を持っている企業が得意分野に集中して展開する際に使われる)という3つのマーケティング手法のうち、どれに適しているか把握することができます。

「ポジショニング」では、競合他社との位置関係のなかで独自性のある立ち位置を見つけます。自社の商品やサービスが競合他社と比べてどう違うのかをわかりやすく差別化し、顧客にとって魅力的な商品だと認知してもらうために欠かせないプロセスです。
具体的には、「ポジショニングマップ」と呼ばれる2軸のマトリクス図を使い、自社の立ち位置を分析します。マトリクス図の縦軸と横軸に値段・品質・店舗数・販売チャネルなどの軸を設定し、自社と競合他社を当てはめることで、自社が優位になるポジションを見つけ出すことができます。このとき、大切なのが感覚で判断せずにデータにもとづいて分析することと、軸となるデータを増やしすぎずシンプルに分析することです。

STP分析を行う目的

STP分析を行う目的は「市場と競合を理解して自社の差別化ポイントを明確にする」ことです。
ビジネスにおいて、自社が勝てるポジションや強みを発見することは非常に大切です。自社目線だけでサービスや商品を作り出した場合、市場ニーズとはかけ離れたひとりよがりな訴求になってしまいがちです。

そこでSTP分析を行い、市場を正しく理解して競合他社と比較したうえで自社の独自性を明確にします。そうすることで、市場の中で有利なポジションに立ち、事業の拡大につながる可能性が高まるのです。

STP分析がマーケティングで重要な理由

マーケティングにおいて、STP分析が重要な理由は大きく分けて3つあります。

第1に「ターゲットが明確になる」という点です。市場を細分化して「狙う市場にどのような顧客がどれほど存在するのか」を整理することで、自社の商品やサービスの顧客像(ペルソナ)を具体的にイメージしやすくなります。

第2に「マーケティング戦略を練る土台ができる」という点です。STP分析を行うことで「誰に、何を、どのように伝えるのか」が言語化されるため、マーケティング戦略を立てる上で関係者内の共通認識を生み出しやすくなります。

第3に「自社商品やサービスの強みが整理できる」という点です。対象となる顧客を明確にしてニーズを理解することで、自社商品やサービスの強みが浮き彫りになり、効率的なマーケティング活動を行うことが可能になります。

STP分析を実施する前に必要な準備

STP分析を行うには事前準備が必要です。まずは「顧客」「競争環境」「自社の強み・弱み」を把握してから取り組みましょう。

1. 顧客の把握

最初に行うべきことが「顧客や市場」の把握です。顧客がどのような人で、どんなニーズを持っているのかを理解せずして、適切な戦略を描くことはできません。

具体的な方法としては、顧客に対するヒアリングやアンケートがあります。その結果から顧客のニーズ、市場の成長性や変化などを把握することができ、さらに自社製品やサービスで評価されている点など、マーケティングを行う上で有益な情報も得られます。

顧客分析はSTP分析の「ターゲット」と密接に結びつくので、ヒアリング項目などを工夫しつつできるだけ正確に把握するようにしましょう。

2. 競争環境の把握

競合他社と比較することは、自社の優位性や強みが明確にする上で欠かせません。競合環境の把握では以下の項目を中心に調査しましょう。

・競合の市場シェア率
・競合の特長・戦略
・競合の市場内におけるポジション
・今後の新規参入の有無
・競合が選ばれる理由、ブランドイメージ

これらを分析することで、競合他社が狙っているポジションやターゲットへのアプローチについて理解することができます。

3. 強み・弱みの把握

最後に自社が持つ「強み・弱み」を把握するために、2つのポイントを分析します。
第1に、自社がもつ現状の「リソース」です。具体的には、自社サービスの特長、現状の売上・市場シェア、資本力や投資能力、人・モノ・カネなどの保有リソースなどを洗い出していきます。
第2に、自社の「企業理念」や「ビジョン」です。企業理念やビジョンが時代とマッチしているか、行動指針として社内に浸透しているかを明らかにし、必要に応じて変更・改善していきましょう。

STP分析を行うメリット

STP分析を実施するには予算や時間がかかりますが、それ以上に大きなメリットをもたらします。

第1に「本当に新商品を購入してくれるユーザーが存在するのか」という根本的な疑問を解消できる点です。STP分析を行えば、どの年齢層のニーズが高いのか、どの地域の反応が良好なのかといった属性ごとのデータを出すことができ、マーケティング戦略の方向性を決める重要な指針となります。

第2に、実際に新商品やサービスを展開する際に、限られたリソースで効率よくプロモーション施策につなげることができる点です。自社の製品やサービスが必要だと感じてくれるターゲットに対して自社の強みをアピールすれば、価格競争に陥ることなく、効率的なマーケティング活動が実現できます。

第3に、マクロ視点からビジネス参入の可否を判断できる点です。どんなにすばらしい商品・サービスであっても、すでに市場が大手に席巻されていれば失敗につながる懸念があるため、新規参入前に客観的なデータにもとづいた合理的な判断が必要になります。STP分析は、自社が有利にビジネス展開できるポジションの発見に役立つため、失敗するリスクを抑えることにつながります。


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STP分析を成功させるポイント

STP分析を成功させるためには、各種データやリサーチ結果などの「事実」にもとづくことが大切です。業界の常識と顧客の常識にズレがあるのは珍しくないため、自社の考えだけで答えを導き出してもあまり意味がありません。

また、STP分析を行うための目標を明確にし、「売り上げを増やす」というゴールを意識することも重要です。分析結果が、売り上げにどうつながるのか考えながら進めていきましょう。

なお、STP分析は一度で終わりというものではありません。消費者のライフスタイルや業界の変化に合わせて継続的に行うことが、競争環境が変化するなかでも自社の優位性を保つことにつながります。

STP分析と併用したいフレームワーク

STP分析は、市場やターゲットを明確にして自社が勝てるポジションを発見するのに有効ですが、より精度を高めるために以下に挙げる他のフレームワークと組み合わせることもおすすめです。

6R分析

「6R」とは「Realistic scale(有効な規模)」「Rank(優先順位)」「Rate of growth(成長率)」「Rival(競合)」「Reach(到達可能性)」「Response(測定可能性)」6つの指標の頭文字をとったもので、ターゲットを考える際に必須となるフレームワークです。

6Rの指標を用いることで、分析内容の不足や偏りを防ぎ、より効果的なターゲット選定ができるようになります。

ペルソナシート

「ペルソナ」とは自社の商品やサービスを購入してくれる典型的な顧客像のことです。ペルソナを設定することで、顧客ファーストな商品・サービスづくりができ、関係メンバー内でターゲットに対する共通認識を持つことにもつながります。

「ペルソナシート」とはペルソナの年齢や職業、思考、ライフスタイルなど人物像をまとめたものです。まず情報整理を行った上でシート作成を進めるようにしましょう。

ビジネスモデルキャンバス

「ビジネスモデルキャンバス」とは、自社と他社のビジネスモデルを、提供価値、顧客、チャネル、コスト、収益など9つの項目から多角的かつ俯瞰的に分析するためのフレームワークです。一見わかりづらい事業の仕組みも、ビジネスモデルキャンバスを使って可視化することで理解しやすくなります。
視覚的にわかりやすく伝えることができるので、社内や取引先などの関係者間でビジネスモデルを共有する際にも重宝します。

STP分析を行う上での注意点とデメリット

精度の高いマーケティング施策につながるSTP分析ですが、実施の際には注意点やデメリットについても把握しておく必要があります。

STP分析を行う上での注意点

STP分析を行う上では、以下の点に注意しましょう。

マーケティング活動との連携

商品やサービスの認知度を高めたり顧客の購買を促したりするためのマーケティング活動は、STP分析の結果にもとづいて行う必要があります。例えば、限定的な市場をターゲットにしている場合にテレビCMなどのマス広告を打つのは戦略的にミスマッチです。分析データに合ったマーケティング活動を展開しましょう。

市場規模や将来性の判断

市場細分化で市場をユーザー層やニーズごとに分けていくことは大切ですが、あまりにも小さな市場をターゲットにしてしまうとビジネス的なメリットも小さくなります。 また、現時点では大きな市場であっても将来先細りしていく可能性がある場合は短期集中的にリソースを投資して、利益を確保できたら即座に撤退するといった柔軟な戦略を取ることも大切です。

STPの順番

かつてはセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順番に分析して考察するのが基本でしたが、顧客行動の多様化・複雑化の一途をたどる現代のマーケティング環境下ではターゲティングから入るべきという考え方もあります。自社の進めやすい順番で分析をはじめましょう。

STP分析のデメリット

STP分析には大きなメリットがある一方、下記のようなデメリットもあります。

企業目線になりがち

STP分析は顧客ニーズやターゲットを導き出すことができますが、場合によっては企業に都合の良い答えを導いてしまうこともあります。そうならないために、各種データや客観的な視点から分析を進めることが重要です。

表面的な設定しかできない

STP分析だけでは、市場のセグメント分けや細かいペルソナの設定まではできません。他のフレームワークを併用することで、より具体的な設定ができるようになります。

現実的ではない分析結果になることも

STP分析から自社に合った市場やポジションが見つかっても、実際には参入困難な場合があります。あくまで仮説のため、小さなテストマーケティングを行いつつ、ターゲットやニーズは適切か、自社の商品・サービスが展開できそうか確認しながら進めましょう。

STP分析を活用した企業成功事例

STP分析をうまく活用すると、競合他社との差別化ポイントを見極めることができ、自社の優位性を打ち出すことができます。ここではSTP分析を活用した成功事例を紹介します。

マクドナルド

ハンバーガーチェーン「マクドナルド」の強みは、特定の年齢や層ではなく老若男女をターゲットにできる規模感と知名度、オペレーションの圧倒的な効率化、利便性のよい立地条件です。それにより価格をリーズナブルに設定することができ、気軽に何度も来店してもらうことができています。「あらゆる顧客層に対し、低価格かつ早く提供できる」という独自のポジションを実現できている好事例だといえるでしょう。

トヨタ「レクサス」

トヨタ自動車が販売する高級ブランドの「レクサス」が米国市場に進出した際、選んだセグメンテーションは「所得」「エリア」「世代」でした。かつて高所得者が選ぶ車の代表格といえば伝統的な価値観を持つドイツの高級車でしたが、レクサスは自由なライフスタイルを好む西海岸の30〜40代の高所得者をターゲットに「クールで高い機能性」「カジュアルに乗れる高級車」というイメージを強く打ち出すことで一気に大成功を収めました。

まとめ

STP分析は、自社製品のセールスを行う際に市場の全体像や狙うべき市場、競合他社との差別化を明確にするフレームワークです。顧客のニーズや自社製品の強みを把握することもでき、プロモーション施策を考える土台づくりにも役立ちます。実施する際にはユーザー目線を持つこと、データ収集やリサーチなどの事前準備をしっかりと行うこと、STP分析だけで完結させず他のフレームワークも併用することを忘れないようにしましょう。

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