Insight Scope インサイトスコープ
- グローバルコラム
ソーシャルリスニングが重要視される理由とは?海外マーケティングでの分析事例もご紹介
株式会社gr.a.m
代表取締役
谷村 真
2021 / 08 / 20
ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディア上で消費者が発信する膨大な情報を収集・分析する手法のことです。この分析結果は戦略立案やマーケティング活動など企業の意思決定に役立つ有効な手段となります。つまり、ソーシャルリスニングは、SNS時代の企業マーケターにとって不可欠な施策といえるでしょう。また、デジタルの世界に国境はないため日本にいても海外を知るために使える有効な手段となります。
ソーシャルリスニングで得られる基本的な項目は、投稿数推移、媒体別投稿、キーワード分析、ポジティブ・ネガティブ情報、共起ネットワーク、ユーザー特性、エリア情報となります。これらを分析することによって、注目のトピックや消費者の反応、イメージ、属性、エリア、最適な媒体、またはそれぞれの関連性を明らかにすることができ、最適な施策を展開することが可能となります。
ソーシャルリスニングはなぜ重要?
マーケティングにおいてソーシャルリスニングが重要視される理由はいくつかあります。まずは、ソーシャルメディアの利用人口が多いことです。現在ソーシャルメディアの利用人口は世界で約36億人と言われております。ソーシャルメディアのイメージは好意的に受け止められており、利用者はますます増加傾向にあります。次にソーシャルメディアの利用時間は平均で2時間半以上/日と非常に長いといった点が挙げられます。また、世界主要ブランドの多くがソーシャルリスニングを導入しているだけでなく、中小企業においてもそのほとんどでソーシャルメディアを活用していることから、企業活動においてソーシャルメディアを使う、ソーシャルリスニングを行うことは必須となりつつあります。
ソーシャルリスニングの活用方法
ソーシャルメディアを活用する消費者の行動は日々、変動しており、その動きをいち早くつかむことは企業が持続的に存続するためにも重要になります。その消費行動は大きく分けると3段階に分かれます。一つが認知段階、次に感情段階、そして行動段階です。その接点ごとに分析を行うことで消費行動やその変遷を捉え、最適な施策を打つことができるのです。例えば、広報部門ではブランドイメージのチェック、マーケティング部門では消費者の市場動向や反応、商品開発部門では業界動向や市場の流行り・好みなど、カスタマーサポートではお問合せやクレームなどを拾うことが可能となります。また、このような情報を組み合わせることで、自社だけでなく業界全体と比較した業界分析をすることもできます。
海外マーケティングでのソーシャルリスニングの分析事例
ここまでソーシャルリスニングの活用方法についてお伝えしましたが、前述したとおりデジタルの世界に国境はありません。この活用方法は日本にいながら海外マーケットでも同様に実施することが可能です。その事例として、あるグローバルブランドで独自に実施した企業分析をご紹介します。ソーシャルリスニングを活用して分析した結果、日本と海外では以下の点で違いがあることが明らかになりました。
ひとつは、「マーケティングチャネル」についてです。日本では他社の媒体を活用して消費者にリーチする方が効果的に消費者の反応がみられたのに対し、海外では自社アカウントに多くの反応が寄せられていました。この日本と海外での地域特性を踏まえてプロモーションを実施していることが読み取れます。
次に、「キーワード」にも違いがありました。日本では話題の商品やコラボレーションに関するキーワードと関連してコメントされる傾向があるのに対し、海外ではファッション全体やスタイルとともにコメントされる傾向があります。ここにも地域性がでており、日本と海外では狙うキーワードは大きく違うことがわかります。
コメントされる媒体も顕著に異なります。日本では9割以上がTwitterで語られるなど圧倒的にTwitterが主流となっていますが、海外ではTwitterだけでなくフォーラムやニュース、ブログなど多くの媒体で語られる傾向があります。
まとめ
このようにソーシャルリスニングは企業にとって欠かせないマーケティング施策となりますが、実施するにあたってはいくつかのハードルがあります。例えば、ソーシャルメディアに落ちている情報のヒット件数が多すぎる、ごみデータが混ざり過ぎて処理するのに時間が掛かりすぎる、投稿内容から文脈を切り出せない、消費者クラスターが発見できない、ソーシャルリスニングだけでは知りたい情報が網羅できない、このようなお話をよく聞くことがあります。ソーシャルリスニングはマーケティングには不可欠なものになってきていますが、活用するためには多くの手間やコツをつかむことが必要になるということです。
その場合、解決策はいくつもあると思いますが、まずは自社で行わなければいけないことと外部へ依頼してもいいことを整理したうえで、デジタル領域でマーケティングを成功させるという目的のための効率的な判断を行うことが大切です。
ぜひ皆様にはソーシャルリスニングをマーケティング施策に組み入れてグローバルレベルで活用し、世界で戦って欲しいと思います。
<会社概要>
株式会社gr.a.m
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー24F
03-6859-2252
※「海外情報ナビ」https://global-biz.net 運営会社
Related Column/ 関連コラム
-
シリーズ 成長市場で勝つ (1)はじめまして株式会社gr.a.mです
-
シリーズ 成長市場で勝つ (2)インド消費財市場へ販売 ~現地事情を把握して手法とタイミングを見極める~〔1/2〕
-
シリーズ 成長市場で勝つ (3)インド消費財市場へ販売 ~現地事情を把握して手法とタイミングを見極める~〔2/2〕
-
シリーズ 成長市場で勝つ (8)ジャカルタの最新事情
-
シリーズ 成長市場で勝つ (4)新興国パートナー探しで陥る典型的な落とし穴
-
シリーズ 成長市場で勝つ (5)インドにチャンス!「GST」導入によって変わるインドビジネス
-
シリーズ 成長市場で勝つ (6)日本食材をASEANへ
-
シリーズ 成長市場で勝つ (9)タイ高齢化の現状
-
シリーズ 成長市場で勝つ (7)インドネシア教育マーケット参入のポイント
-
ビジネスにおける海外展開成功の秘訣
-
新興国×日本「企業がSDGsに関わるひとつの形」
-
地方創生再出発!デジタルで挑む海外マーケット
-
越境ECで海外を攻める!withコロナのマーケティング戦略
-
2020年を日本と中国の流行語で振り返る
-
今後のデジタル通貨の可能性 キャッシュレス大国、中国の「デジタル人民元」から考える
-
グローバルマーケティング施策立案のカギ 「ソーシャルリスニング」の活用法!
-
世界中で注目されている音声メディアの現状と今後の可能性 ~中国の音声メディア事例から考える~
-
コロナで変わるグローバル環境。今後の海外展開で重要なこととは
-
ソーシャルリスニングが重要視される理由とは?海外マーケティングでの分析事例もご紹介