インドネシアのコメ事情 | リサーチ・市場調査・マーケティング

グローバルコラム
2016/11/29

インドネシアのコメ事情

インドネシアのコメ事情

コメ、幸せの使者

 インドネシアの多くの地域では「幸せの使者」と呼ばれるコメはインドネシア人の主食です。インドネシア人はコメをパサール(市場)で、キロ単位ではなく、リットル単位で購入しています。パサール(市場)のコメ屋に並んだコメを見ていると白いコメが圧倒的に多いですが、赤いコメ、黒いコメも普通に見られます。1キロあたりのコメの平均価格は12000ルピアで、日本円換算では約100円となります。
 

コメ市場にある様々の種類のコメ

 インドネシアでは、みんなが集まって食べる「共食義礼」(スラマタン)がよく行われます。結婚式、子どもの誕生、割礼のお披露目式、断食明けの大祭(イドゥル・フィトリ)などの儀礼祭典に人々を呼んで食をふるまいます。鉢形の大きなアルマイトの器にごはんが盛られ、集まった人はそれぞれの皿に日本人が見たらびっくりするほどたくさんの量のごはんを盛ります。呼ばれた人がたくさん食べると招いた側も喜んでくれます。
 

左:スラマタンで集まった人のために準備した食べ物、右:インドネシアの伝統料理Tumpeng

インドネシアはコメの消費大国

 前述通り、インドネシアの人はコメのことが大好きで、たくさん食べています。インドネシアの一人当たりの年間コメ消費量は約148キログラムと多く、日本人1人あたりの年間消費量(60.5kg)の約2.5倍になります。
 

 「緑の革命」により、インドネシアのコメ収量は30年間で倍増し、9割以上のコメ収穫は小規模農家(1人あたり平均土地面積8000㎡)になります。80年代初め、一時コメの自給を達成しましたが、世界第3位のコメ生産国にもかかわらず、その後気象要因や農地の宅地化、消費拡大により、生産量が追いつかず、現在はコメを海外に頼る現状になってしまっています。
 

 上記のグラフの通り、年々約100万トン~200万トンのコメ輸入と依頼され、一見輸入現状が維持されると見えますが、1990年代の輸入とは背景が異なります。
 インドネシア政府は、農民の政治的な力の増大を考慮し、国内農業のための保護政策に転換しました。政府は国内産のコメを守るため、2004年から民間のコメ輸入を禁止し、コメの輸入を政府間取引のみに制限しました。また、肥料補助金は2003年の7900億ルピアから、2010年には18兆ルピアにまで急増しました。このような手厚い保護政策の結果としてコメ生産は2001年から2013年にかけて年率2.9%で増加し、単位面積当たりの農作物の収穫高も年率1.4%で上昇しました。
 近年のコメの大量輸入は、食糧調達公社(BULOG)の在庫水準(150万トン程度)を適切に維持するためのものになり、現在のコメ生産の成長率は人口増加率を上回って推移しているので、この傾向が続けば今後コメの輸入は減少傾向となっていくでしょう。
 ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のある調査結果によると、インドネシアでは現在、全人口の約30%に当たる7400万人の中間・富裕層(月間世帯支出200万ルピア以上)が存在し、今後10年でその割合が大きく拡大していくと予測されています。今後、各コメメーカーはこのような中間・富裕層向けに今より高価で・質の良いコメの生産と販売戦略を立てていくことでしょう。

 

【参考資料】
・農林水産政策研究所レビューNo.66 ~東南アジア諸国のコメ政策動向:タイ、ベトナム、インドネシア
・アーカンソー大学 農業経済とビジネス部門のコメについてのまとめ資料
 http://www.uark.edu/ua/ricersch/pdfs/per_capita_rice_consumption_of_selected_countries.pdf
・インドネシアを知るための50章 ~出版社: 明石書店 (2004/7/30)
 http://www.akashi.co.jp/book/b64917.html
 

株式会社クロス・マーケティング リサーチプランニング部 グローバルグループ リサーチャー 王 世易

2013年に来日、2年間事業会社のリサーチ部門で従事し、2016年クロス・マーケティングに入社。
グローバルグループにおいて調査設計を担当。英語、日本語、中国語、ドイツ語対応。

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