- マーケティングコラム
“気づき”マーケティング(19) 「朝食はパン」にみる<気になる>スイッチとは?!
東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問
辻中 俊樹
2015 / 11 / 05
「朝食はパン」ということをめぐって、前回はシニア層と『飼育員さん』たちというセグメントの違いについて述べてみた。『飼育員さん』というのは、子育て真っ最中の30~40代のママのことを主としてさしている。末子が幼稚園以下の子どもを抱えているママたちは『飼育員さん』前期、中・高生くらいになると中期、それ以上の年齢の子どもたちを抱えているママたちは後期になる。それぞれ異なったところが当然ある。
「朝食はパン」にも大きな幅が
『飼育員さん』の経験をはるか昔に行って、それを卒業していった人たちがシニア層ということになる。「朝食はパン」という事実だけをみても、シニア層と『飼育員さん』との間には天と地ほどの差があるのは当然のことではある。シニア層の『朝食はパン』という事実の中にも、実はある幅で変化が存在している。シンプルなトーストである場合も、それがサンドイッチになることもある。サンドイッチもハムときゅうりなどのパターンもあれば、フルーツサンドであることも。また、単にパンといっても、バターロールであったり、バゲットであったり、クロワッサン、スコーンなどが登場してくることもある。
その折々の気分で、いろいろな種類のバリエ―ションの中から選択されている。前日に“ブーランジェリー”(少々格好のいいパン屋さんのこと)の前を通った時に、おいしそうな焼き立てバゲットがあったので買ってみたというようなシーンがある。つまり「パン」と一言で言ってはみたものの、その中には様々な変化があるといえる。
むしろ「パン」だからこそ、その折々の気分の変化でアイテムの選択を変えることができるというのが、その特徴でありメリットだといえる。
シニア層だけではない<微変化>
私たちはこれを日々の朝食に微妙な変化をつけて楽しんでいるという、<微変化>の欲求の実現だと考えている。この<微変化>というものがシニア層の“食べたい力”の形成をサポートしているのだ。何度も繰り返しているが、これは簡便、時短ではない。また、このバリエーションの中にフレンチトーストやホットケーキ、パンケーキなども含まれている。パンケーキといわれるとちょっと現代的なブーム、流行という気がするが、フレンチトースト、ホットケーキなどは、シニア層が『飼育員さん』だった頃によく作っていたメニューであった。時々こんなアイテムも<微変化>を彩ることになる。
実はこれらの特徴的なメニューは、土・日曜、つまり休日の朝食に選択されている傾向がハッキリしている。これは日記調査でみると明確な事実である。
<気になるスイッチ>は週末に押される?
また、30~40代ママ、つまり『飼育員さん』前・中期の女性たちがよく利用しているメニュー検索サイトの検索キーワードの傾向をみていてもハッキリとうなずける。食のことを意識した時、ちょっと困った時に「cookpad」という検索サイトを彼女たちはよく利用する。その時にどんなキーワードで検索をしているかを蓄積、分析した「食のトレンド」というデータをみていると、フレンチトースト、ホットケーキ、パンケーキなどのキーワードは、土・日曜日、とりわけ朝と推測される時間帯に圧倒的に使われることがわかっている。これに対してトーストなどのキーワードは平日型という傾向がある。同じように朝食シーンという中にも、土・日曜という休日には『飼育員さん』にとっても全く別の刺激が渦巻いていることがわかる。ただ、これらのキーワードで検索することが多いからといって、それがただちに作られているかどうかはわからない。明確なのはフレンチトースト、ホットケーキなどといった、平日とは異なった気分を表象するキーワードが、彼女たちの<気になる>スイッチを押していることは確かなようである。
もちろん、この<気になる>スイッチの後に、実際に作られるという行動までには溝があることも確かである。どこかで、やはり時短、簡便の壁にはばまれていることもあるだろう。ただ、この<気になる>スイッチが押されていることは、やはり<微変化>の欲求がシニア層と同様に『飼育員さん』たちにも分厚く存在していることは重要だ。時短、簡便という表層よりも、その先にある食における<気になる>スイッチの押され方をみることが大切だといえる。
<気になる>スイッチの詳細は、また別のコラム(※1)でも述べているのであわせてご覧いただければと思う。
(※1)…
http://food.diinc.co.jp/%E9%A3%9F%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89/report/2375/
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