“気づき”マーケティング(20) シニア層の“食べたい力”に火をつける! | リサーチ・市場調査・マーケティング

マーケティングコラム
2015/12/3

“気づき”マーケティング(20) シニア層の“食べたい力”に火をつける!

“気づき”マーケティング(20) シニア層の“食べたい力”に火をつける!

なぜ“食べたい”と思うのか

 前回のコラムでシニア層の“食べたい力”というキーワードを使った。すでに紹介したことだが、シニア層の朝食にパン食が多いことについて、それは<微変化>をつけていくという欲求の実現だという説明をしたのである。
 たとえば、クロワッサンを食べた次の日は、スコーンを食べたり、ホットケーキに変えたりというようなことである。あるいは、季節感があふれるフルーツや野菜を楽しみたいということから、いつものサラダを一工夫したりするのだ。フルーツの入ったヨーグルトを食べるのも、その季節ならではのフルーツを楽しみたいからこそなのだ。ヨーグルトが身体によいからという、健康を意識した結果というよりも、むしろプレーンなヨーグルトの白い色と、フルーツの色あいの組み合わせを楽しみたいからこそと言うべきだ。
 こんなところにも誤解、曲解があるといえる。最も重要なのは“彩り”を楽しむ心映えにこそある。
 このことが“食べたい力”の根本をなしているのだ。健康という合理的な理性だけで食のことを考えると、結局それは寿命を維持するためだけの単なる“えさ”という価値しか成り立たなくなってしまう。ここからは“食べたい力”は生まれでてこない。“食べなくては…”という義務と強迫しかなくなってしまう。

なぜ“食べたい”と思うのか(イメージ)なぜ“食べたい”と思うのか(イメージ)

“彩り”がつくる“食べたい力”

 とりわけシニア層にとってこの“食べたい力”は大切であり、それこそが食文化というものの持続なのである。毎日毎日繰り返されていく日常的な食というものにおいて「これを食べたい」という欲求を継続させていくことはそんなに簡単なことではないのだ。
 シニア層にとっての日常食は、ほとんどが自分一人のためか、夫婦という二人の食にある。これは子育て中の「飼育員さん」が考える食とは全く異なったステージである。「飼育員さん」にとっては、とにかく子どもの食の満足ということが最大の課題であった。

 しかしシニア層にとっては、自分自身の“食べたい力”の源泉がどこにあるのか、そしてそれがどのように持続していくのかこそが、食の価値観の基本だ。
 この“食べたい力”を生みだし、持続させていくための知恵が、つまりは「微変化」というところに現れているのだ。たとえば、先ほどの例にあるように、“彩り”を感じる食卓をつくることで“食べたい力”を生みだしている。毎日繰り返しているグリーンサラダであっても、黄色や赤のパプリカを少しトッピングすることで“彩り”が生まれる。
 野菜やフルーツが持つ“彩り”をうまく活用することが、この“食べたい力”を生みだすことにつながっている。このコラムの読者の大半の方には心の底からの理解ができないかもしれないが、“食べたい力”の源泉ということの本当のことがわからなければ、シニア層の食の価値観はまずとらえることはできない。

“彩り”がつくる“食べたい力”(イメージ)

買い物という<きっかけ>スイッチ

 ここでは野菜やフルーツのもつ“彩り”ということに焦点を当てているが、もう少し拡張すればこれが季節感や旬ということになっていく。食において季節感や旬を強く意識するということの本当の意味は、シニア層にとっていえば”食べたい力“を持続的に生みだす源泉なのだ。
 「食べたいものを食べる」ということは、極めて自由度が高いことであり、実は言葉でいう程簡単なことではない。ましてや、繰り返される日常食の中では、この自由度というものはかえって困り事になってしまう。
 季節感や旬を意識した食ということは、当たり前のように言われていることである。だが、なぜ生活者がこのことを強く意識して、生活の中で持続して実現しようとしているのか、その本質的な意味はあまりよくわかってはいないのである。

買い物という<きっかけ>スイッチ(イメージ)

 シニア層というセグメントの特徴としていえば、この意味こそが“食べたい力”の源泉の一つの重要な要素なのである。食というものから、季節や旬という要素を消し去ってしまえば、“食べたい力”が減衰していき、食は単なる生命維持のための“えさ”になる。
 さて、この“食べたい力”を支える重要な要素が季節、旬だとすれば、この季節、旬を感じる接点が次に大切だということになる。シニア層は、この季節、旬ということに対する経験、知恵の蓄積が圧倒にある人々だといえる。よく知っているし、体験も積んでいる。
 この知恵の蓄積を“食べたい力”につなげていくには、やはり店頭などでの接点がクローズアップされることになる。買い物にでかけ、そこでその日その日の旬の彩りに出会い、“食べたい力”に点火される。“食べたい力”の前提には、買い物に行くという<きっかけ>スイッチが入ることが重要だと言っておく必要がありそうだ。

東京辻中経営研究所 同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問 辻中 俊樹

日本能率協会などで雑誌編集者を経て、1982年ネクスト・ネットワークを設立。生活を24時間スケールで補足する「生活カレンダー」方式によるリサーチワークを確立。団塊ジュニアに関する基礎研究をまとめ、「15(イチゴ)世代」というキーワードを世に送り出すなど、その「生活シーン分析」は評価が高い。団塊世代のみならず、出産期世代からシニアについても造詣が深い。2010年には食のマーケティングに絞った活動を行うために、東京辻中経営研究所を設立。同社代表取締役マーケティングプロデューサー。

また、2012年よりユーティルの研究顧問として「気づき」プロジェクトを開始し、定性、定量にかかわらず、生活の中から「気づき」を発見するための調査、分析、コンサルティング活動を行う。その活動の中で「生活動線」などの視点を生みだしている。
近著に「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー出版)など編著書は多数。 

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