Future Marketing

【前編】マーケティングはサイエンス×芸術×ジャーナリズム データを分析するだけでは“刺さる”アイデアは生まれない

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クロス・マーケティングと学生が中心となったデータ分析コンサルティングチーム、一般社団法人 Datact Japanが2018年2月17日と24日の2日間に渡り、インターンシッププログラムを実施した。このインターンシッププログラムでは、インターンに参加する学生は企業が実際に所有しているデータを分析し、企画を立案、プレゼンテーションを行なった。使用するデータは、伝統産業を事業としながら、データに基づいたマーケティングに挑戦している有田焼の窯元、幸楽窯(徳永陶磁器)の協力を受けた。インターンシッププログラムを終えたクロス・マーケティングのデータマーケターである中村勝利氏、DatactのCEO樋口拓人氏とCOO湯川晟氏、幸楽窯の代表取締役・徳永隆信氏の4名が、プログラムを振り返りながら、データ解析の意義や、現在の企業に足りない視点は何かを語り合った。

クロス・マーケティングとDatactが目指すもの

中村:まずは、私たちが取り組みをはじめるきっかけを振り返りましょう。Datactさんはどのような経緯で活動をはじめたのですか。

樋口:私たちは2018年の8月に社団法人を立ち上げました。学生を中心にコンサルティングプロジェクトの実行や、学生のインターンシップをマッチングするような活動を行なっています。
 もともとは私と湯川がアメリカのシアトルではじめたものです。私たちは日本企業に対して課題意識に近い考え方を持っていました。データを解析し、データを起点に考えられる人材の育成ができていないのではないかと。そういった人材がいなければ、いくらデータを蓄積しても意味がないという問題です。
 そこで、まずは自分たちがスキルを身につけ、学生がデータに触れ、それを実際に使うことができる環境を作るプロジェクトをシアトルにある小売店と一緒にはじめたのがルーツです。

 
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湯川:学生だと仮にスキルを持っていても、触れることができるデータは血の通っていない、整ったデータしかありません。それでは面白くないし、実践的でもありません。
 シアトルにはデータをためていながら活用できていない企業がありました。そのデータを私たちが分析し活用できるようにコンサルティングできれば、私たちには現場の、生きたデータに触れることができますし、私たちの提案で企業が良くなれば彼らにとってもメリットがある。win-winになるのではないかという好奇心からはじまりました。

樋口:クロス・マーケティングさんはデータを扱う企業として、従来のマーケティング企業とは違う先進的な取り組みをしていることを、学生に知ってもらいたい、ブランディングしたいと考えていらっしゃった。私たちはデジタルマーケティングやデータ分析に強みを持っていますが、学生が中心ということもあり、なかなか企業のマーケティングの現場に入っていくことができないという課題がありました。

中村:Datactさんほどデータ分析に力を入れている学生の団体はありませんし、未来を見すえたビジョンも持っていると感じました。私たちもデータによるマーケティングやデジタルマーケティングにより力を入れていくうえで、何か一緒に取り組みたいと思いました。
 当初は、Datactさんに私たちからデータを渡して、実際の案件ベースでお仕事を手伝ってもらうことを想定していました。ただ、お互いに実績がないとお客さまにも理解してもらえませんし、データの扱いにもシビアなところがあったので、まずはインターシップという形でお互いの強みがどこにあって、プロジェクトを進められそうか見極めようと考えました。
 データに関しては、私が学生時代からご縁があった幸楽窯さんに協力してもらったという流れです。

 
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伝統産業・有田焼の窯元がデータを重視するワケ

中村:有田焼のような伝統産業は、職人気質で勘と経験でものづくりをするイメージが一般的だと思います。徳永さんがデータを残そうと思ったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

徳永:幸楽窯は私で5代目になるのですが、私は一度東京のガラスメーカーに就職し、働いていました。そこでは大手メーカーなどが使うボトルのデザインなどを担当していたので、マーケティングをしながらデザインをしていた。
 1998年に幸楽窯を運営する徳永陶磁器に戻ってきました。そこではご指摘の通り、アナログな手法でのものづくりや事業が行われていて、効率化とは縁遠い世界でした。私は理系出身だったこともあり、パソコンを使ってまずは受注や在庫を管理することをはじめ、自然にデータとして蓄積していった感じです。
 2011年に社長になり、この窯を、伝統産業を維持していくためには、販売先や事業そのものも変わって行かなければならないと考えました。そして、もともと持っていたものづくりの強みと、私たちがはじめた「トレジャーハンティング」のような「コト」を組み合わせて広げていこうとしています。

 
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中村:徳永さんが社長になってから、従来の製造業に加えて、サービス事業をはじめた。その柱となっているのがトレジャーハンティングのような観光事業、次に国内外の制作者が窯元に短期滞在して作品を作る滞在型作陶事業、みっつ目が空き部屋に滞在してもらう宿泊事業です。
 今回のインターンシッププログラムでは、サービス事業のデータを提供いただいて、売り上げを向上させる施策を考えてもらいました。学生のプレゼンテーションを聞いて、何か感じたことはありましたか。

徳永:最後のまとめで「マーケティングとは、サイエンス×芸術×ジャーナリズムだ」とおっしゃいました。これは非常に納得できる話で、私自身も日々やっていることだと感じました。そういう視点で見ると、参加された4チームのうち2チームには芸術が足りなかったですし、ジャーナリズムの要素も少なかった。短時間でできることには限りがあるので、そこを意識しながら私たちが見落としている部分に気づき、掘り下げたチームが優勝したなと感じました。

湯川:ここでいう「芸術」というのは、マーケティングをするときに、データを見て、課題を洗い出した後、施策を提案する段階では論理性だけではなくクリエイティブが求められますが、そういう文脈での「芸術」だと思います。今回、インターンシッププログラムでレクチャーしたのは、データ分析とロジカルシンキングとマーケティングについてです。参加してくれた学生たちは、データ分析やロジカルの飲み込みは早いのですが、そこから課題を発見して、施策を設計するところに難しさがあったようです。

 
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徳永:宿泊事業で、四人部屋よりも二人部屋の空室率が高いから、壁をぶち抜いて四人部屋にしようと提案したチームがありましが。そのアイデアは芸術性があったかもしれません。

樋口:私たちが今回学生に教えたのは、論理的に最適解を導くためのプロセスだけで、学生はそれに忠実に従って、精一杯データに基づく提案をしたと思います。本当のビジネスの現場において、コンサルティングをするとき、データをもとに提案をしてもクライアントさんが現場で何を感じているのか、何が起こっているのかをちゃんと汲んで提案しないと刺さる提案にならない。それは今回、学生も身にしみてわかってもらえたのではないか、そこに学びがあったと思います。

~後編に続く(3/29公開予定)~
樋口 拓人
一般社団法人 Datact Japan Founder/CEO
慶應義塾大学環境情報学部所属

樋口 拓人

湯川 晟
一般社団法人 Datact Japan Co-Founder/COO
京大学経済学部経営学科所属

湯川 晟

徳永 隆信
幸楽窯
代表取締役

徳永 隆信

中村 勝利
株式会社クロス・マーケティンググループ
マーケティング本部 データマーケター

中村 勝利

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