ライブコマースとは?導入するメリット・デメリット
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近年、オンラインショッピングの新しい形として注目を集めているのが「ライブコマース」です。ライブ配信を通じてリアルタイムで商品を紹介し、視聴者と直接コミュニケーションを取れるライブコマースは、企業や消費者にとって多くのメリットがあります。
一方で、配信トラブルやインフルエンサーの不適切な発言など、注意点もあるため、導入する場合は慎重に検討することが大切です。今回は、ライブコマースとは何か、導入するメリット・デメリットについて解説します。
ライブコマースとは
ライブコマースとは、ライブ配信とEコマース(EC)を組み合わせた販売方法のことです。企業やブランド、インフルエンサーがSNSなどのプラットフォームを活用してライブ配信をして、商品を紹介します。視聴者はライブ配信を見ながらチャットで質問したり、気に入った商品をその場で購入したりできます。
従来のオンラインショッピングでは、商品画像や説明文だけでは伝わりにくい部分がありましたが、ライブコマースでは配信者が実際に商品を紹介しながら、視聴者がコメントで質問を投げかけることで、その場で使い方や組み立て方などの疑問を解消できるのが特徴です。
ライブ配信の告知は、企業が自社のWebサイトやSNSで発信するほか、配信に出演するインフルエンサーやタレントが自身のSNSを活用して事前に告知することもあります。
ライブコマースが注目されている背景
ライブコマースの先進国は中国です。中国では、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーがライブ配信を通じて商品を紹介し、視聴者の購買行動に大きな影響を与えています。KOLはSNS上で多くのフォロワーを持ち、消費者にとって信頼できる情報源になっています。
経済産業省の調査によると、2020年時点で、KOL経由でのEC市場規模は約3,000億元に達しているとのことです。仮に1元を日本円で20円程度とすると、約6兆円規模の市場であることが分かります。今後もライブコマース市場は拡大が見込まれており、他国でも注目されている分野です。
出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000715.pdf
下記では、ライブコマースが注目されている背景について解説します。
購買における親近感の重視
従来の広告やECサイトでは、ブランドや商品の魅力を前面に打ち出していましたが、近年ではショップ店員やインフルエンサーといった「個人」にファンが付き、信用や共感を得ることで購買につながるケースが増えています。
特にライブコマースでは、配信者がリアルタイムで視聴者と対話しながら商品を紹介するため、消費者はより身近に感じやすくなるのが特徴です。その結果、単にブランドの知名度や広告だけではなく、親近感を持てる「個人」が薦める商品を購入したいと考える人が増えている傾向にあります。
スマートフォンの普及とSNSの発展
近年、ECサイトとSNSの親和性が高まり、SNSを通じた商品の宣伝や販売が一般的になりました。さらに、スマートフォンの性能向上により、誰でも手軽に動画配信やライブストリーミングができる環境が整っています。
特にInstagramやYouTubeなどのプラットフォームを利用すれば、無料でライブ配信ができます。そのため、個人や企業がコストをかけずに商品を紹介し、視聴者とリアルタイムでコミュニケーションを取ることが可能です。
オンラインショッピングの需要増加
新型コロナウイルス感染症の影響により外出が制限され、多くの消費者がオンラインでのショッピングを利用するようになりました。この急激な需要の増加にともない、従来のECサイトだけでは補いきれない「対面接客のような購買体験」が求められるようになっています。
ライブコマースは、リアルタイムで商品説明を聞いたり、質問をして疑問を解決したりできるため、オンライン上でも実店舗のような接客が可能です。その結果、消費者は安心して商品を購入できるようになり、企業にとっても新たな販売手法として重要性が高まっています。
ライブコマースを導入するメリット
下記で、ライブコマースを導入するメリットを4つ紹介します。
写真や文章で表現しにくい商品の魅力を伝えられる
従来のECサイトでは、写真や文章で商品の魅力を伝える必要がありました。一方、ライブコマースなら、配信者の表情や声色、身振り手振りを通じて、商品を使用したときの驚きや感動をリアルに伝えられます。特に、質感や使い心地、サイズ感などは、動画やライブ配信のほうが視聴者にとって直感的に理解しやすくなります。
さらに、商品をよく知るスタッフが配信すれば、開発秘話やこだわりのポイントなど、カタログや商品ページでは伝えきれない情報を提供することも可能です。こうしたリアルな情報が加わることで、視聴者はより納得感を持って商品を購入できます。
顧客との双方向コミュニケーションを図れる
従来のECサイトでは、一方的に商品情報を掲載するだけで、顧客が抱える疑問にリアルタイムで対応するのが難しいという課題がありました。しかし、ライブコマースでは、配信中にコメントや質問を受け付けることで、視聴者と直接やり取りが可能になり、信頼関係を築きやすくなります。
例えば、「この商品のサイズ感を教えて」「使い方がわからない」といった疑問にその場で答えることで、購入を迷っている顧客の不安を解消できます。これにより、ECサイト特有の「実物を見られない」「質問がすぐにできない」といった不安を払拭し、購入の後押しにつなげることが可能です。
インフルエンサーを起用することで影響力を拡大できる
多くのフォロワーを持つインフルエンサーを起用すれば、既存のファン層に直接リーチでき、販売効果が高まります。特に、ファンはインフルエンサーの発信を信頼しているため、広告よりも自然な形で商品を認知し、購入につながりやすくなります。
さらに、インフルエンサーのライブ配信を通じて、これまでブランドと接点のなかった層や、リスティング広告ではアプローチが難しかった潜在層にも商品を知ってもらう機会が生まれる点もメリットです。
新規顧客にとって、信頼できるインフルエンサーが紹介することで安心感が増し、購買意欲が高まるという効果も期待できます。
インフルエンサーを起用したマーケティングについては、下記の記事で詳しく解説しています。
「インフルエンサーマーケティングって何?基礎と事例から見る活用方法を解説」
低コストで実施できる
従来の通販番組やCM広告などの広告手法に比べて、ライブ配信は比較的低コストで実施できます。ライブコマースなら大掛かりな店舗や設備は不要で、必要なのは、ライブ配信をするためのカメラや照明、そして商品を展示するスペースです。
スマートフォンやタブレットでも十分に配信できる場合もあり、初期費用を大幅に抑えられます。
ライブコマース導入前に確認したいデメリット・注意点
ライブコマースは企業にとってコストパフォーマンスの良い販促手段ですが、気をつけたい点もあります。下記では、ライブコマース導入前に確認したいデメリット・注意点を紹介します。
配信トラブルが起こる可能性がある
ライブ配信はリアルタイムで実施するため、技術的な問題や予期しないトラブルが発生するリスクがあります。例えば、配信中に音声や映像が途切れる、配信者が操作ミスをする、通信環境が不安定で映像が遅延するなどの問題が起こり得ます。
こうしたトラブルは視聴者にとって不快に感じやすく、信頼感を損なう原因にもなりかねません。また、配信内容に不備があった場合、顧客からのクレームや誤解が生じることも考えられます。そのため、配信前に十分な準備やテストを実施して、予期しない問題に迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。
事前に告知する必要がある
ライブ配信はリアルタイムで実施するため、視聴者にタイミングを合わせてもらうためには事前に告知することが必須です。告知が不十分だと、配信が始まっても視聴者が集まらず、配信の効果が薄れてしまいます。
配信の告知はSNSやメール、Webサイトなど複数のチャネルを活用するのが一般的です。視聴者を集めるために、配信の曜日や時間帯を工夫するのも有効です。例えば、「毎週決まった曜日にライブコマースを実施する」「商品の特性やターゲットに合わせて配信時間を変える」などがあげられます。
配信者のスキルや影響力に依存する
ライブコマースの成功は、配信者のスキル(話し方や表現力など)や影響力(フォロワー数)に大きく影響されます。配信者のパフォーマンスが不足していると、いくら優れた商品を取り扱っていても、視聴者の反応が低くなる可能性があります。
また、インフルエンサーを起用する場合には、発言や振る舞いによってブランドイメージが傷つくリスクが存在する点に注意が必要です。インフルエンサーが商品の仕様や魅力を理解していなかったり、不適切な発言をしたりすると、企業や商品への信頼が損なわれ、ネガティブな印象が広がる可能性があります。
ライブコマースと相性が良い業種
ライブコマースと相性が良い業種を知っておくことで、ターゲット層や視聴者のニーズに合った内容の配信ができ、より深い信頼関係を築くことが可能です。下記では、ライブコマースと相性が良い業種を3つピックアップして紹介します。
食品業界
食品業界は鮮度が重要なため、これまではECサイトでの販売がなかなか普及していませんでした。しかし、今後は技術の進化や物流の改善により、食品もECサイトで購入されることが増えていくと予想されています。
ライブコマースを導入すれば、リアルタイムで食レポやレシピの紹介、食べ合わせの提案ができ、文字や画像だけでは伝えきれなかった情報をスムーズに発信できます。
アパレル業界
アパレル業界では、ECサイトで服のサイズや色などの情報が記載されているものの、実際に試着してみないと着心地やサイズ感を正確に把握しにくい点が課題としてあげられています。しかし、ライブコマースを導入すれば、事業者側がさまざまな身長や体型のモデルを用意し、それぞれが実際に商品を試着して、着心地やサイズ感を伝えることが可能です。
視聴者は配信者に対し、商品の特徴や素材感、着用時の動きやすさなどに関する質問ができ、オンラインで購入する際に感じやすい「実物を見て触れられない」「試着できない」といった不安を解消できます。
化粧品業界
化粧品は実際に手に取って試してみることが重要なため、オンラインショッピングで購入する際に不安を感じる消費者は多い傾向にあります。ライブコマースを導入し、配信者が実際に顔に化粧品を塗ったり、肌に合った色味や使用方法を紹介したりすることで、視聴者は商品の使い心地をより具体的にイメージでき、購入の決断をしやすくなります。
また、商品の使用感や効果についての質問にリアルタイムで答えられるため、店頭で接客するように顧客とコミュニケーションを取ることが可能です。とはいえ、実際に顔を合わせるわけではないため、「店頭での接客に抵抗がある」「直接コミュニケーションを取るのが苦手」といった顧客に対してもアプローチできます。
まとめ
ライブコマースとは、ライブ配信とEコマースを組み合わせた販売方法のことです。SNSなどのプラットフォームを利用してライブ配信をしながら、視聴者と配信者がリアルタイムでコミュニケーションを取りつつ商品を販売します。
ライブコマースには多くのメリットがある一方で、配信トラブルが起こるリスクや事前にライブ配信の告知が必要な点など、注意したいことがあります。メリット・デメリットを把握した上で、導入するか慎重に検討してみてください。