マーケティングコラム

定量調査と定性調査の違いとは?メリット・デメリット、使い分けの判断基準も解説

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市場調査の手法には、定量調査と定性調査の2つがあり、それぞれ調査で得られる情報は異なります。正確な調査を行うには、目的や段階に応じた調査手法を選ぶことが重要です。今回は、定量と定性の意味の違いから、それぞれの調査方法の特徴、メリット・デメリットを解説します。使い分けの判断基準もあげているので、ぜひ参考にしてください。

 

定量と定性の違い

定量調査と定性調査を使い分けるには、まず定量と定性が何を示し、どう違うのかを理解する必要があります。

定量的とは

定量的とは、500個や70%のように、具体的な数値や量で表せる要素のことです。
数値を用いるため、誰が見ても同じように解釈できる客観的・絶対的な評価となり、全員の捉え方や認識が一致しやすいことが特徴です。ただし、数値化できない要素を取りこぼす場合があります。

定性的とは

定性的とは、「おしゃれ」「使いやすい」といった感情や状態、サービスの使用感など、数値では表せない主観的な要素や感覚的な情報のことです。
具体的な情報の収集が可能で、数値化できないような過程やポテンシャルといった要素も考慮できます。とはいえ言葉や文章で表す抽象的な情報のため、結果の捉え方に個人差が出やすく、齟齬や認識のずれが起こりやすい側面もあります。

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定量調査と定性調査の違い

次に、定量調査と定性調査の特徴を解説します。

定量調査とは

定量調査とは、数値データを収集し、現象や問題について統計的に分析をする調査方法です。
データをもとにした分析のため、科学的根拠のある結果が得られ、客観的な結論を導けることが特徴です。

定性調査とは

定性調査は、個人の意見や感情、背景情報といった質的データを収集する調査方法です。
調査対象者の主観的な要素を集め、本音や意思決定プロセスなどを探ることを目的としています。

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定量調査のメリット・デメリットと手法

次に定量調査について、メリット・デメリットや手法を詳しく解説します。

定量調査のメリット

定量調査は、数値データに基づいて統計的に分析を行うため、客観的な結果が得られます。結果の解釈において主観が入りにくいため、共通認識を得やすいことがメリットです。また、定量調査は大規模なサンプルを対象とし、データ収集方法も統一されているため、結果の一般化を行いやすくなります。

仮説検証や効果測定の確実性を高められることも、定量調査のメリットです。客観的な数値データを基にするため、妥当性の検証ができます。

定量調査のデメリット

定量調査のデメリットは、数値では表せない感情や価値観といった主観的な要素を取りこぼしやすいことです。調査設計の段階で想定した以上の意見を得ることは難しく、ニーズの深堀ができない場合があります。

また、定量調査で統計的な判断をするには、一定以上のサンプル数が必要です。調査目的によっては、十分なサンプル数を集められないケースがあります。なお、定量調査から得られたデータを有効に活用するには、結果を読み解き、戦略や施策に転換するスキルやノウハウも必要です。

定量調査の手法

定量調査の手法には、以下の4つがあげられます。

・インターネットリサーチ

インターネット上で調査対象者から意見や回答を収集する手法です。短時間でコストを抑えたデータ収集や、対象者の属性を絞り込んだ調査も可能です。

インターネットリサーチのメリット・デメリットは以下の記事で詳しく解説しています。
あらためて知っておきたい ネットリサーチのメリットとデメリット

・会場調査(CLT)

対象者を指定の会場に集め、実際に製品や広告を試用・体験した上で意見や回答を収集する手法です。回答内容をその場で深堀できる、同条件下での評価で偏りを排除しやすいなどのメリットがあります。CLT(Central Location Testの略)とも呼ばれます。

・ホームユーステスト

対象者に、健康食品やスキンケア用品などを送付し、指定の期間利用した後に使用感や評価を調査する手法です。商品の改良や新しいニーズを発見するためのヒントが得られます。

・郵送調査

対象者に質問票を郵送し、回答用紙を返送してもらう手法です。インターネットでの回答が難しい高齢者層を含め、幅広い属性の回答を集計できます。

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定性調査のメリット・デメリットと手法

続いて、定性調査のメリット・デメリットや手法を詳しく解説します。

定性調査のメリット

定性調査のメリットは、人々の意見や感情、行動の背景にある理由を深く理解できるため、新たな発見やインサイトを得やすいことにあります。

対象者から直接対面でヒアリングを行うため、言葉だけでは伝わらない表情や声のトーンといった非言語情報も捉えつつ、具体的な事例や個別の意見を把握でき、より本質的で深い洞察や理解が得られます。仮説を立てる際のアイデアやキーワードを探したり、顧客のニーズを深掘りしたりするのに役立てられることもメリットです。

定性調査のデメリット

定性調査は、収集されるデータが個々の対象者の主観に基づいているため、結果を統計的に一般化することは困難です。市場全体の傾向や規模感を把握したい場合には定量調査と組み合わせで調査することが不可欠となります。

また、調査対象者のリクルーティングやインタビューの実施、そして得られた発言の分析には、時間とコストがかかる傾向があります。特に調査対象者の本音や深い洞察を引き出すためには、経験豊富なモデレーター(インタビュアー)の高いスキルが不可欠です。

定性調査の手法

定性調査の手法には、以下の4つがあげられます。

・グループインタビュー(FGI)

特定のテーマについて共通の属性を持つ複数の対象者を集め、座談会形式で意見交換や議論を行う方法です。一度に複数人の意見を収集できるだけでなく、参加者同士の相互作用によって活発な議論が促され、一人ひとりの発言だけでは得られない、より深い洞察や多角的なアイデアを引き出せることが大きな特徴です。

グループインタビューについては、以下の記事で詳しく解説しています。
フォーカスグループインタビュー(定性調査)の意義と価値

・デプスインタビュー(IDI)

モデレーター(インタビュアー)と対象者が1対1で対話し、特定のテーマについて深く掘り下げていく手法です。他者の目を気にすることなく、個人の意見や感情を話せる環境を提供するため、表面的な回答にとどまらず、対象者自身も意識していなかった潜在的なニーズや、行動の背景にある深層心理まで明らかにすることができます。

・行動観察調査

特定のテーマについて対象者の発言だけでなく、実際の行動をそのまま観察し記録する手法です。普段の生活の中で商品やサービスを利用する様子を直接観察することで、言語化が難しい無意識の行動や潜在的なニーズを深く理解できます。

・訪問観察調査

対象者の自宅や職場などを訪問し、商品やサービスの実際の利用状況を直接観察しながらヒアリングを行う手法です。アンケートでは得られない無意識の工夫を観察でき、言葉では表現しきれない潜在的なニーズや、製品・サービスが抱える課題についてより本質的な洞察を得ることができます。

定量調査と定性調査の使い分けの判断基準

定量調査と定性調査は、それぞれ特性や収集できる情報の性質が異なります。どちらの調査手法を用いるかを判断するための基準を具体的に解説します。

調査の目的に応じて判断する

調査でどのような目的を達成したいか、目的達成のためにはどのようなデータを得るべきなのかを逆算して考えます。

定量調査は、仮説検証や数値の裏付けが必要な場合に適します。例えば、市場傾向や量の把握・推計、複数の物事の比較、数値の把握などを目的としている場合には、定量調査を選びます。

一方、定性調査は数値では分析ができないような具体的な情報を知りたい場合に適します。消費者の意見や行動の背景の理解、ターゲット像の把握、仮説の構築、具体的な改善案の抽出などを行いたい場合には、定性調査を選びます。

調査の段階に応じて使い分ける

定量調査と定性調査の特徴を考慮し、調査の段階によって使い分ける方法もあります。仮説を形成するための初期段階には、定性調査を用います。ニーズや不満など数値化ができていないインサイトを収集する必要があるためです。仮説に基づいた検証段階には、定量調査を用います。市場規模や特定のニーズの大きさや売上予測には、数値による裏付けが必要なためです。

定量調査と定性調査を組み合わせる

目的によって、定量調査と定性調査を組み合わせることもあります。

仮説を構築し、その検証を行いたい場合には、定性調査を事前に行い、その結果をもとに定量調査を行います。例えば、商品開発では、あらかじめ課題を抽出するために定性調査を行い、仮説を立てて定量調査で数値的に検証を行います。

一方、全体像を把握した上で状況を深堀りしたい場合には、先に定量調査を行い、定性調査で具体的な情報を収集します。例えば、消費者の不満を改善したい場合、定量調査で先に全体の傾向を把握し、定性調査でその内容を深く掘り下げます。

まとめ

定量調査は数値で把握できる情報を収集・分析する調査手法で、定性調査は、数値では表せない具体的な情報を収集・分析する調査手法です。調査でどのような情報を知り、活用したいかによって調査手法を選択・併用することで、精度の高い調査ができます。解決したい課題や目的に応じて適切な手法を選びましょう。

 

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