ホームユーステスト(HUT)とは?メリット・デメリットや実施の流れを解説
公開日:
ホームユーステスト(HUT)とは?自宅で商品を試してもらう調査手法
ホームユーステスト(HUT)とは、調査対象者の自宅に商品を送り、日常的な環境で実際に使用してもらう調査手法を意味します。一定期間試してもらった後、アンケートやインタビューを通じて使用感や評価を収集し、その結果を定量データとして分析します。
会場調査のような特別な環境ではなく、普段の生活の中で評価を得られるため、よりリアルな消費者の意見やインサイトを発見できるのが特徴です。新商品の開発や既存商品のリニューアルにおいて、発売後の使われ方をシミュレーションする目的で広く活用されています。
会場調査(CLT)との主な違い
ホームユーステスト(HUT)とよく比較される手法に会場調査(CLT)があります。
HUTとCLTは、調査環境と取得できるデータの性質が異なります。
HUTとCLTの主な違い
| 項目 | ホームユーステスト(HUT) | CLT(会場調査) |
|---|---|---|
| 実施場所 | 自宅 | 指定会場 |
| 使用期間 | 数日〜数週間 | その場で短時間 |
| 主な評価 | 継続使用評価・実使用実態 | 第一印象・即時評価 |
| 統制性 |
低い | 高い |
| 向いている商材 | 継続使用型商品 | 味覚・視覚評価中心商品 |
実施場所
使用期間
主な評価
統制性
向いている商材
実施場所
使用期間
主な評価
統制性
向いている商材
CLTは、指定会場に対象者を集め、統制された条件下で商品を評価してもらう調査です。短時間で複数商品を比較できるため、第一印象や味覚評価、パッケージ評価などに適しています。
一方、HUTは、一定期間の使用を前提とする点が大きな違いです。初回使用時の印象だけでなく、使用を重ねる中での評価の変化や満足度の推移を把握できます。
整理すると、両者の主な違いは次の通りです。
・CLT:統制環境での即時評価・比較評価に強み
・HUT:生活環境での継続使用評価に強み
たとえば、洗剤やスキンケア商品のように「使い続けた結果どう感じるか」が重要な商材では、CLTだけでは十分な示唆が得られない場合があります。第一印象と、実際に生活に組み込まれた後の印象にはギャップが生じることもあるためです。重要なのは、どちらが優れているかではなく、「何を明らかにしたいのか」に応じて手法を選択することです。
なお、近年ではHUTとオンラインインタビューを組み合わせた調査も行われます。Web会議システムを活用し、使用中の様子をリアルタイムで観察したり、その場でインタビューをして深掘りしたりします。HUTの弱点である「利用状況を直接確認できない」という課題を補完できる点が特徴です。
ホームユーステスト(HUT)のメリット
ホームユーステスト(HUT)には、他の調査手法では得られないメリットが存在します。消費者のリアルな生活環境下で評価を得られるため、より本音に近い意見や、開発段階では想定していなかった商品の使われ方を発見できる可能性があります。これにより、信憑性の高い口コミに近い情報を収集できる点が大きな利点です。ここでは、HUTが持つ主な3つのメリットについて、それぞれ具体的に解説していきます。
1.実生活に即したリアルな評価が得られる
最大のメリットは、対象者の普段の生活環境の中で商品を評価してもらえる点です。
例えば化粧品であれば、自宅の洗面台でいつものスキンケアの一環として使ってもらえますし、食品であれば、普段使っている調理器具や食器で家族と一緒に試してもらえます。
このように、調査会場のような非日常的な空間ではなく、リラックスした状態で商品を試用することで、より自然で本音に近い評価や感想を引き出しやすくなります。発売後の実際の使われ方に近い状況を再現できるため、実用性の高いデータを収集できるのが強みです。
2.長期間使用による変化を把握できる
一定の期間を設けて商品を試用してもらうため、短期的な第一印象だけでなく、長期間使用したからこそ分かる評価を収集できます。スキンケア用品や健康食品のように、継続使用によって効果が実感できる商品の評価には特に有効です。
また、数週間にわたって使用してもらう中で、当初の評価がどのように変化したか、あるいは使用感に飽きがこないかといった時間的な推移を追うことも可能です。商品の耐久性や、日常生活にどの程度定着するかといった観点での評価も得られるため、より深いインサイトの獲得が期待できます。
3.全国の幅広い対象者へアプローチ可能
調査会場へ来場してもらう必要がないため、地理的な制約を受けずに調査対象者を募集できます。都市部だけでなく地方在住者も含め、全国から条件に合致する人をリクルーティング可能です。これにより、特定の地域に偏らない、バランスの取れたデータを収集できます。
また、特定のライフスタイルを持つ人やニッチな趣味を持つ人など、出現率が低く会場調査では集めにくいターゲット層にもアプローチしやすいという利点があります。幅広い層から意見を集めることで、より市場全体の傾向を反映した調査結果を得られます。

ホームユーステスト(HUT)のデメリット
ホームユーステスト(HUT)は多くのメリットを持つ一方で、実施にあたって注意すべきデメリットも存在します。計画段階でこれらの課題を認識し、対策を講じておかなければ、調査の精度が低下したり、予期せぬトラブルが発生したりする可能性があります。
ここでは、HUTを検討する際に事前に把握しておくべきいくつかのデメリットについて、具体的なリスクとともに解説します。これらの点を理解し、調査設計に活かすことが成功の鍵となります。
1.利用状況を直接確認できない
対象者が自宅で商品を使用するため、調査員がその様子を直接観察することができません。そのため、指示された通りの頻度や方法で正しく商品が使われているかを正確に把握するのは困難です。
対象者の自己申告に頼らざるを得ないため、記憶違いや意図しない誤った使い方によって、評価データにバイアスがかかる可能性があります。例えば、毎日使用してほしい商品を週に数回しか使っていなかったり、推奨される使用量を守っていなかったりするケースが考えられます。この不透明性は、HUTが抱える構造的な課題の一つです。
2.対象者の途中離脱のリスクがある
調査期間が長期にわたる場合、対象者のモチベーションが低下し、途中でアンケートに回答しなくなったり、調査協力を辞退したりする「途中離脱」のリスクが高まります。リスクを軽減するためには、定期的にリマインドの連絡を入れたりするなど、対象者を適切に管理し、コミュニケーションを取る工夫が求められます。
3.商品の発送・回収にコストと手間がかかる
対象者一人ひとりの自宅へテスト品を発送し、場合によっては使用済みの容器などを回収する必要があるため、物流に関わるコストと作業工数がかかります。特に、数百人規模の大規模な調査になる場合、梱包や発送作業は大きな負担となります。
また、商品が常温で管理できない冷凍・冷蔵品や、壊れやすいものである場合は、特殊な配送方法が必要となり、さらにコストが増大します。これらの物流コストや管理の手間は、会場調査(CLT)にはないHUT特有のデメリットであり、予算やスケジュールを組む際に十分な考慮が必要です。
4.テスト環境を統一できない
対象者それぞれの自宅環境が異なるため、テスト条件を厳密に統一することが難しいという側面があります。例えば、水質や室温、湿度といった環境要因は各家庭で異なりますし、商品と一緒に使う他の製品(例:化粧水と合わせて使う乳液)も人それぞれです。
こうした環境の違いが、商品の使用感や効果の評価に影響を与える可能性があります。
これは、リアルな環境での評価が得られるというメリットの裏返しでもあります。分析の際には、こうした環境差が結果に影響を与えている可能性を念頭に置き、慎重にデータを解釈する必要があります。
ホームユーステスト(HUT)の実施手順
ホームユーステストは計画的に手順を踏んで進めることが重要です。ここでは、実際にHUTを実施する際の基本的なやり方を、調査の企画段階から最終的な分析・レポーティングまで、7つのステップに分けて具体的に解説します。
各ステップで何をすべきかを明確に理解することで、スムーズで精度の高い調査運用が可能になります。
ステップ1:調査目的の明確化
最初に、この調査を通じて何を明らかにしたいのかという「調査目的」を具体的に設定します。例えば、「新商品の受容性を測りたい」「既存商品の改善点を探りたい」「競合品と比較して優位性を確認したい」など、目的を明確に定義することが重要です。
ステップ2:調査設計・設問設計
目的が明確になったら、次にその目的を達成するために誰に聞くべきか、「対象者像」を定義します。年齢、性別、居住地といったデモグラフィック情報だけでなく、ライフスタイルや価値観、商品カテゴリーの使用実態といったサイコグラフィック情報も含めて、できるだけ具体的に設定することが後のステップの精度を高めます。
次に、テストする商品を対象者にどのように提示するかを決めます。
ブランド名やパッケージデザインを隠して純粋な中身だけで評価してもらう「ブラインドテスト」と、ブランド名を明かした上で評価してもらう「ブランド明示テスト」があります。
また、評価方法も重要です。
1つの商品だけを試してもらい絶対評価を得る「モナディックテスト」、2つ以上の商品を試してもらい相対評価を得る「比較テスト」など、調査目的に応じて最適な手法を選択します。どの方法を選ぶかによって、得られるデータの性質や分析の切り口が変わってきます。
ステップ3:対象者条件の定義とスクリーニング調査
ステップ1で設定した対象者像を、より具体的な条件に落とし込みます。
例えば、「過去半年以内にA社の化粧水を購入し、週に5日以上使用している20代から30代の女性」といったように、調査から除外する条件(例:アレルギーの有無)も含めて細かく定義します。
この条件に合致する人を見つけ出すために、Webアンケートなどを用いた事前調査(スクリーニング調査)を実施します。本調査に協力してもらうのにふさわしい対象者を絞り込むための重要なプロセスです。
ステップ4:調査対象者のリクルーティング
スクリーニング調査を通過した対象者の中から、最終的な調査参加者(モニター)を決定し、参加を依頼するプロセスをリクルーティングと呼びます。多くのリサーチ会社は、大規模なモニターパネルを活用し、条件に合致する対象者を効率的に抽出します。
リクルーティングの際には、調査の目的や期間、調査内容、そして協力に対する謝礼の金額などを明確に提示します。目標サンプル数に対してやや多めにリクルーティングを行い、途中離脱に備えることもあります。
ステップ5:テスト品の発送と使用案内
調査対象者の自宅へ、テスト品を送付します。この際、単に商品を送るだけでなく、使用方法や使用頻度、テスト期間、アンケートへの回答方法などを記載した案内状を同封します。
誰が読んでも理解できるように、専門用語を避け、分かりやすい言葉で丁寧に説明することが求められます。誤った使い方をされると正確なデータが得られなくなるため、この使用案内は調査の品質を左右する重要なツールです。
ステップ6:アンケートの実施と回収
テスト期間が終了した後、または期間中に複数回にわたって、Webアンケートなどを通じて評価データを収集します。アンケートの設問は、「満足度」や「購入意向」などを5段階評価で尋ねる定量的な質問と、「良いと思った点」や「改善してほしい点」などを自由に記述してもらう定性的な質問をバランス良く組み合わせることが一般的です。
回答期限が近づいたらリマインドメールを送るなど、期限内にすべての対象者から回答を回収できるよう管理します。回収したデータは速やかにチェックし、不備があれば対象者に確認を依頼します。
ステップ7:データの集計と分析
回収したすべてのアンケートデータを集計し分析を行います。
まず設問ごとの単純集計(GT)を行い全体の傾向を把握します。次に年代別や性別グループ別など特定の属性で回答を比較するクロス集計を行いより深いインサイトを探ります。
自由回答については、テキストマイニングなどの手法を用いてキーワードを抽出したり、内容をカテゴリー分けしたりして、定量データだけでは分からない背景や理由を探求します。これらの分析結果を基に結論と提言をまとめた報告書を作成し、商品開発やマーケティング施策の意思決定に活用します。

ホームユーステスト(HUT)の調査期間
調査目的やテストする商品の特性によって大きく異なりますが、調査の企画開始から最終的なレポートの納品まで、全体で1.5ヶ月から3ヶ月程度を見込むのが一般的です。
- 企画設計・リクルーティング:約2週間~1ヶ月
- 試用期間:1週間〜1ヶ月
- 集計・分析:2週間〜1ヶ月
ホームユーステスト(HUT)にかかる費用の内訳
ホームユーステストの実施にかかる費用は、調査の規模、期間、対象者のリクルーティング難易度、テスト品の仕様など、多くの要因によって変動します。
主な費用の内訳としては、調査全体の企画・設計費、条件に合う対象者を集めるためのスクリーニング・リクルーティング費、テスト品の梱包・発送・回収にかかる実費、アンケート画面の作成やデータ集計・分析費用などが挙げられます。これらに加えて、調査に協力してくれた対象者へ支払う謝礼も必要です。
謝礼の相場は、テスト期間の長さや回答の負担度合いに応じて決まります。試用期間が長いなど対象者に負荷がかかる場合は、謝礼が高額になることもあります。
ホームユーステスト(HUT)に適した商材
ホームユーステスト(HUT)が向いているケースとしては、日常生活の中で継続的に使用される消費財全般に適しています。特に、数回から数週間の使用で効果や使用感の変化を評価したい化粧品、ヘアケア製品、健康食品などは代表的です。食品(冷凍食品・調味料・飲料)、日用品(洗剤・芳香剤)などもHUTと相性が良いカテゴリーです。
まとめ
ホームユーステストは、対象者のリアルな生活環境下で商品を評価してもらうことで、本音に近い意見や想定外の使われ方を発見できる、非常に有効なマーケティングリサーチ手法です。長期使用による評価や、地理的な制約がなく幅広い対象者にアプローチできるメリットがある一方で、利用状況を直接確認できない、利用環境を統一できないといったデメリットも存在します。これらの特性を十分に理解し、調査目的を明確にした上で、企画から分析まで適切な手順を踏むことが、商品開発やマーケティング戦略に資する価値あるデータを取得するために不可欠です。
関連ページ
