インサイトスコープ

マーケティングの根本、「顧客中心」を問い直す第1回 「顧客中心」で、なぜ上手くいかないのか?

Facebook X
橋本 英知
株式会社ベネッセコーポレーション
家庭学習カンパニー 英語事業推進 担当部長

橋本 英知

「ユーザーファースト」「顧客中心」「顧客志向」、改めて最近よく耳にする言葉です。ソーシャルの時代となり、個と個がつながり、その影響力がどんどん高まっていく中で、必要不可欠なキーワード。しかし、どこまで本当に「顧客中心」で、企業が、ビジネスパーソンが、日々行動することができているのか?
「ユーザーファースト」「顧客中心」「顧客志向」、改めて最近よく耳にする言葉です。ソーシャルの時代となり、個と個がつながり、その影響力がどんどん高まっていく中で、必要不可欠なキーワード。しかし、どこまで本当に「顧客中心」で、企業が、ビジネスパーソンが、日々行動することができているのか?

3回のコラムをいただいた機会で、自戒も含め、問い直してみたいと思います。

※B2C事業を中心とした話になります。B2B事業に関わられている方は、当てはまる部分も少しはあると思いますが、ご了承ください。

顧客中心で判断したはずなのに、顧客が不要なモノができてしまう!?

ネットリサーチが普及し、圧倒的に早く安く、マーケティングリサーチができるようになりました。リサーチをくり返し、ターゲットニーズの高い価値を実現できる機能を見極め、次々と搭載していく。これをくり返した結果、出来あがっていったものを、改めて振り返ってみると、機能が過剰になり、顧客にとってわかりづらく、使われないものになってしまっている。

最近は、「シンプル化」というキーワ-ドも注目され、見直しはされているのですが、こういうことって、まだまだよくありますよね? 顧客のことを考え、顧客の声を元に判断したのに、使われない、売れない。これって、そもそも、なぜなのでしょうか?
20140530_02

顧顧客中心を見直すキーワード、「アドボカシーマーケティング」

私自身も、そういう経験をしていく中で、改めて教訓としているのが、「アドボカシーマーケティング」です。アドボカシーは、支援、擁護、代弁といった意味ですが、以下のように定義されています。

「顧客との長期的な信頼関係を築くため、顧客を支援する。自社の利益追求や、短期的なメリットの提供は二の次にして、『顧客にとっての最善』を徹底的に追及する。顧客の利益や満足度を最大化するためなら、一時的に自社の利益に反することでも行う。自社製品より優れた他社製品があるなら、素直に他社製品の購入を勧める。」

※出典:「アドボカシーマーケティング」 グレン・アーバン著 山岡隆志 訳者

そう、「お客様のために」では弱いのです。「お客様は神様です」もちょっと……。そのスタンスだと、企業側として顧客と向かい合っているので、顔色を伺いながら(ニーズをリサーチしながら)企業都合を押しつけてしまう可能性があります。「お客様を支援・擁護する」、つまり顧客側に立つスタンスを徹底できるかどうかです。

アドボカシーマーケティングの考え方は、ソーシャルの時代にますます重要になることは、誰もが容易に想像がつくと思います。ただ、自社の商品・サービスを提供している場合、これを実践することは、現実的には非常に難しいですよね。「自社製品より優れた他社製品があるなら、素直に他社製品の購入を勧める」など、そこに限りのあるマーケティングや、プロモーションコストを投資できるか…。

訳者の山岡さんにお話を伺ったこともあるのですが、「トップが率先して号令をかけない限りは、『顧客を大切にする』(ホスピタリティー)に留まり、真の『アドボカシー・マーケティング』には到達できず中途半端な結果に終わってしまう」とのこと。確かにその通りなのですが、一人ひとりが少しずつでも、継続的に実践していくことで、実現できないだろうか……。
20140530_03

顧客中心ではなく、「顧客利益の最大化」を目指し、日々の業務に取り組む

私自身は、顧客と向き合うスタンスを、顧客中心から、「顧客利益を最大化」することに変えてみました。その実現のために、日々の判断で、以下を重視しています。

(1) 営業・販売促進費を極力削減し、商品・サービスへ積極投資
(2) 品質を顧客視点で比較するため、業界・競合他社の研究を再徹底
(3) 顧客に提供する情報の透明性を高め、信頼感を持っていただくことを重視

当社では、創業社長の時代から、「自分の家族や友人に薦められる商品を提供しているか」という言葉があり、改めて重く受け止めています。

このコラムが、読者のみなさんが、顧客へのスタンスを再点検するきっかけになれば幸いです。

おすすめのコラム

デジタルマーケティングコラム

世界スマホシェア率を日本と比較|人気のOSやメーカーは?

アプリ開発企業のマーケティング担当者の中には、世界のスマートフォンシェア率が気になっている方もいるでしょう。人気のOSやメーカーなどに関して、世界全体と日本との傾向の違いを把握しておくことで、マーケティングに活かせる面もあるかもしれません。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介

「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう

今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介

近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説

結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

就職氷河期世代の年齢とは?世代の特徴や背景、現状を解説

バブル崩壊後の不況に直面しながら社会に出た「就職氷河期世代」。厳しい雇用環境により正社員になれず、現在もキャリアや生活に課題を抱える方が少なくありません。今回は、マーケティングに役立つ視点から、就職氷河期世代の年齢や背景、特徴、そして現状についてわかりやすく解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!

ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

パン派・ごはん派の割合|身体に良い方はどっち?

日本の主食といえば、ごはんですが、パンを好んで食べる方が増えているのも事実です。実際は、パン派とごはん派のどちらが多いのでしょうか。また、体にとって良いのはどちらなのでしょうか。 今回は、パン派とごはん派の調査結果と身体に良い主食について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは

若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード